その才能に圧倒される

斉藤和義『「歌うたい15」SINGLES BEST 1993〜2007』
斉藤和義 「歌うたい15」SINGLES BEST 1993〜2007 - 「歌うたい15」SINGLES BEST 1993〜2007「歌うたい15」SINGLES BEST 1993〜2007
≪唄うことは難しいことじゃない ただ声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ≫と、“歌うたいのバラッド”の歌詞にあるが、斉藤和義の歌は、空気を吐くように言葉が流れ出ているようだ。それは単に日常を綴った凡庸なものではなく、繊細な情景描写と、豊かで奥行きのある感情を湛えた、高い文学性がある。ロマンティックで、しがなくて、自分勝手で、繊細で、大雑把で、希望があって、諦めている。酸いも甘いも噛み分けた人間の生き様が、美しい日本語で書かれている。それが、人間くさい歌声と、ロックの素養があるシンプルなサウンドと溶け合う。そして、そこにはシャープな視点がある。何せ、デビュー曲のタイトルは“僕の見たビートルズはTVの中”、歌い出しは≪欲しい物なら そろい過ぎてる時代さ≫だ。そもそも最初から、物があふれ、ぽっかりとした時代の空気を、的確に表現した人だ。歌も演奏も曲も歌詞も文句なく良い。しかし、色々とその良さについて考える前に、まずその才能に圧倒される、稀代の歌うたいの15年間が収録された3枚組オールタイムベスト。(小松香里)
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