『Dead〜』では、やはりナカコーのナイーブで無機質な声は「素材」として扱われていた。しかし本作では、音の粒が鮮やかに跳ね飛ぶなかで≪未だスカム 君のように 砕けて 散るだけ≫(“Scum”)と歌い、スーパーカーでも聴けなかったようなストレートなメロディで≪I see.I know Love I All≫(“Love Is All”)と歌う。デビューと同時に、瞬く間に「時代の寵児」となったスーパーカーという大きすぎる存在――そこから遠ざかろうとしたiLL=ナカコーが、スーパーカーという存在をようやく受け入れ、「その先」へと歩み始めたのだ。
エレクトロニカ→室内音楽的なオーケストレーション→ロックと、作品を重ねる毎に広がっていくビジョンは、1stアルバム『Sound by iLL』から描いていたという。となると、次作はもっと広がったものになるのかも。本作も名盤だが、次なるアクションが待ち遠しい!(岡崎咲子)