不穏のその先の、予感

WHITE ASH『WALTZ WITH VALKYRIE』
2011年07月06日発売
ALBUM
WHITE ASH WALTZ WITH VALKYRIE
音楽サイト「RO69」が昨年開催したアマチュア・アーティスト・コンテスト「RO69JACK 2010」で優勝を勝ち取った4人組・WHITE ASHの2ndミニアルバム。耳の中を不協和音が支配し、薄暗い、入り組んだ路地に追い詰められるような緊張感は、暗闇の中から沸き上がるようにうねるサウンドと、レフティのフロントマン・のび太(Vo・G)の、少年性を帯びた無垢な響きと、闇の底に突き落とすような不敵な危うさを湛えた歌声がそうさせている。だが、ラストの“I'm Fine Too Thank You”でアコギ1本で弾き語る彼は、日本語で極上のポップメロディを紡ぎ出してみせ、見事に聴く者を裏切る。それはまるで、恐ろしいモンスターの着ぐるみの中から可愛らしい少年が出てきた、みたいな感覚。でもその感覚は、この作品で確信には変えられない。なぜなら彼らはこの作品でまだ自分たちの音楽の核心に触れようとしていないからだ。《それでもここからは先/彩ってない道をもとに/誰も追えぬほうに》と綴り、収束しない和音で作品の幕を閉じているのは、次に何かが起こることの暗示のように聴こえる。(中村萌)
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