預言者のささやき

ケイト・ブッシュ『ディレクターズ・カット』
2011年07月20日発売
ALBUM
ケイト・ブッシュ ディレクターズ・カット
単純にセルフ・カバーとは括れない、『センシュアル・ワールド』と『レッド・シューズ』を再構築した本作。客観的に考えれば残すべきとも思われるようなオリジナルのドラム・パートが取り払われていたり、ボーカルも新たにレコーディングされ、オートチューンを通したものになっていたりもする。が、どちらのアルバムでも強かったニューウェーヴ風味のアレンジが排され、全体を通してフォーキーであたたかいものになっている。「入門」として聴いても圧倒されること必至の(意図していないだろうが)出来。“フラワー・オブ・ザ・マウンテン”では、“センシュアル~”制作時、許諾の降りなかったジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』からの引用が実現している。また、“ディーパー・アンダースタンディング”では、コンピューターの世界に没入する人間が描かれていて、この歌詞を20年も前に書いていたことに驚愕する。これらのことは奇しくも本作の本質を伝えているといえるだろう。古い/新しいの尺度なんてお構いなしだし、作品に説明はいらない。でも、今、作品に語らせることの必要性をケイトは直感したのではないか。(羽鳥麻美)
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