そんな中、届いたのが6曲入りEP『C.U.T』である。「yamaが生み出すポップス」というコンセプトのもと制作された本作には、おなじみのクリエイター陣に加え、GRe4N BOYZや秦基博といったポップスの最前線に立つアーティストも参加。個性的でありながら、確かにポップスと呼べる楽曲たちが揃った。
それと同時に重要なのは、この作品がyama自身のルーツを探っていくようなものになっていることだ。自分を形作ってきたものと向き合い、それを「yama」という表現として形にすることで何が見えてきたのか。たっぷり語ってもらった。
インタビュー=小川智宏 撮影=鳥居洋介
──新作の話に入るまでに少し昨年の話をしたいんですが、2025年は『; semicolon』というアルバムを出し、5周年の節目を迎えて、yamaとして次のフェーズが始まっていった1年だったと思います。とにかく自分との戦いがずっと続いてたんですけど、それとようやく折り合いがついたっていうのが『; semicolon』のタイミングだった
そうですね。『; semicolon』がようやく本当に「自分で歩いていくぞ」みたいな作品になって。表現したいことや音楽性がだんだん見えてきたなっていう感じがしたので、それをとにかくまっとうする1年で、一歩ずつ成長していく過程だったなと思っています。自己の統合だったり、まだ解放できなかった奥底に眠ってる本心とか、表現したいこととか、逆に何がそれをブロックしてるのかとか、とにかく自分との戦いがずっと続いてたんですけど、それとようやく折り合いがついたっていうのが『; semicolon』のタイミングだったんですよね。だからそれを世に出したところですごく浄化された感覚はあって。おかげで、より前向きに次のステップへ進めるような気持ちになりました。表現に関しても、明るくなったっていうとちょっと誤解があるんですけど、より内省的だったところから、世界観が広がって、ちゃんと景色を描けるようになって、とか、そういう変化はあったなと思ってますね。
──yamaの表現がどんどん開けてきているというか、yamaさんという人を感じるものになってきている感じはしますね。
確かに最初は本当に閉ざしてたというか、そもそも介入されない状態で表現をしたいっていう感じだったんです。自分のパーソナルの部分は知らなくていいって本気で思ってたし。でも、そうじゃないんだなって、とくにライブを通して感じたというか。実際に目の前にいて、その目に見えないエネルギーがあって、そこでこっちが閉ざしていたら伝わらないなっていう瞬間が何回もあったんです。技術とかパフォーマンス以上に、自分がちゃんとオープンでお客さんを見ているかとかっていうことがこんなにも影響を及ぼすんだと思って。それからは「この人たちに伝えたい」みたいなことを意識して書く曲もできたし、ライブを意識して書いた曲もできたし。だから、ライブからの「逆輸入」みたいなこともあったと思いますね。
──そういう心境の変化は、作る曲にも影響を及ぼしていると思いますか?
そうですね……なるべく自分にとって「質の高いもの」を、ちゃんと作ろうと思っていますね。今までがそうじゃなかったわけではなく、もちろんめちゃくちゃ一生懸命やってきたんですけど、でも手探りだったんで。「こうしたいんだけど、これで合ってるかな」みたいなのが、だんだん感触がわかってくるようになったので、それを諦めずにぬかりなくやろう、みたいな。細かいところまで含めてギリギリまで粘って作る、みたいなことを毎曲やろうとしています。あとは、なるべく自分が関わるというか。デモを作る時もあるし、詞だけを書くとか、メロディを書くとか、いろいろありますけど、何かしら作品にジョインするっていうことは自分からするようになりましたね。それは大きな変化かもしれないです。
──今、「質の高いもの」って言葉があったんですけど、yamaさんにとっての「質の高さ」というのはどういう意味なんですか?
これはすごいアバウトなんですけど、「心が動くか、動かないか」だと思っていて。っていうのも、今、技術的にはAIだったりとかですごいじゃないですか。どれだけ読み込んでアウトプットしてるんだっていう。そうやってできた曲でも、単純に聴いた時に「いい曲だな」って思うものもたくさんある中で残っていくのって、むしろ不完全さとか、人間にしか出せないちょっとしたバグとか、誤差とか、揺らぎとか、そういったものだと思うんです。そういうのは感情が乗ってないと感じ取れないものだと思うので、そこはすごく気にしてますね。それが自分にとっての「質」です。
──完成度の高さという意味ではなく、いかに人間らしい揺らぎの部分が残っているか。
魂が入ってるか、みたいな感じですかね。
──今回のEPはますますそういう作品になりましたよね。『C.U.T』、全部素晴らしいんですけど、こういう作品をこのタイミングで作ろうと思ったyamaさんなりの理由というのはどういうものなんですか?
今まで、たとえば作品があって、それに書き下ろすとか、テーマが決まってるとか、ちょっとした縛りがある状態で楽曲を作ることが多かったんですけど、それを一旦度外視して、とにかく今やりたいことをやってみたいなと思ったんです。だから自分の、結構初めてぐらいのわがままです(笑)。わりと何でも真面目に聞けちゃうんですけど、それもよくないなと思って、「全然採算取れないかもしれないし、お客さんに響かない可能性もあるけど、ちょっとやらせてもらえませんか」って言って作ることになりました。
──でもyamaさん、そう言いながら並行してガンガンタイアップ曲作ってるのが、本当に真面目だなと思うんですけど(笑)。
文句言われたくないんで(笑)。「おまえ、これのせいでやってねえじゃん」とか言われたくないんで、ぬかりなくやろうと思って。
──逆に言うと、そっちはそっちでちゃんとやりながら、それでもなお作りたいっていう思いがあったっていうことですよね。
そうですね。今までのyamaのジャンルは本当にジャンルが広くて、自分が普段も聴くぐらい好きなジャンルと、好きだけど普段聴きはしないなっていうものと、バラバラだったんです。でも、音楽を始めてからいろんな趣味を探したけど、音楽しか趣味にできなくて。っていうことは、yamaのワークスの中で自分の趣味を消化するしかないなって思って。音楽しながら音楽でちょっと息抜きするみたいなイメージで、「好きなことさせてください」っていう感じでした。
──いただいた資料には「『yamaが生み出すPops』をコンセプトに制作したEP」と書かれているんですけど、この「yamaが生み出すPops」って、ちょっとよくわからない言葉だなと思ったんです。というのは、「ずっとポップス作ってきたじゃん」って思うからなんですけど。今まではどうやってバレないように仕込もうかなって感覚だったんですけど、今は外側の部分も含めてルーツをちゃんと反映しても、お客さんがついてきてくれる気がしたんです
そうですよね(笑)。
──でもそれとは別に、yamaさんの中にここでいう「ポップス」に対して抱いているイメージがあるんだろうなと。
ポップスの範囲って広いじゃないですか。とくに自分が出始めた頃、コロナ禍のあたりからより細分化されていって。だからその中で……もちろん自分はポップスをやってきたけど、そのポップスの中でも、よりルーツというか。ずっと「ボカロ」って言ってたんですけど、そもそもボカロに触れた段階で、自分は「ボカロR&B」とか「ボカロシティポップ」とかのタグで探してたんですよ。だからそういう音楽は、ボカロを聴き始めた段階ですでに好きだったんですよね。っていうことに気づいて、じゃあ、その大元のルーツをたどって作ったら、それは自分なりのポップスになるんじゃないか、というところにたどり着いたっていう感じですね。
──でも、今までもyamaさんの音楽にyamaさんが影響を受けてきたものや好きなものは反映されてきたとも思うんです。それと今回はどう違いました?
今までは、少しよくない真面目さなんですけど、インターネットでよく知られたっていうのもあって、自分はボーカロイド的な音色を求められてるんじゃないかって思っていた時期があったんです。根底ではR&Bとかシティポップが好きだし、ポップス自体が大好きなんですけど、どこかでそういうサウンドを求められてるんじゃないかと思ってしまって、それでちょっと迷走してたなとは思っているんです。その中で自分の好きなものをどうやってバレないように仕込もうかなって感覚だったんですけど、今は外側の部分も含めてルーツをちゃんと反映しても、お客さんがついてきてくれる気がしたんです。意外とお客さんはちゃんと聴いてくれるんじゃないかな、という手応えがあったから、その外側も含めてちょっとアプローチを変えてみようっていう感覚でしたね。
──『C.U.T』っていうのは、「Chill out」「Urban」「Tender」という3つのキーワードのイニシャルなんですよね。このキーワードにはどういうふうにたどり着いたんですか?
これは、タイトルをどうしようかなって悩んでた時に、藤原慎太郎っていうA&Rが──その人とは自分がメジャーデビューする前からずっと一緒にやってるんですけど、結構自分の好きなものを見てきた人なので、「おまえにはこういう3軸が実はあるんじゃないか」って提案してくれたんです。
──その3つのキーワードにyamaさんとしても納得感があった?
めちゃくちゃありましたね。「それだ」と思った。都会的なサウンドも好きだし、少しゆったりとしたボーカルにちょっとメロウさがある曲も好きだし、ちゃんと温かみがあるみたいな曲も好きだし。その中で、「C」「U」「T」が全部揃ってる曲もあれば、「C」だけとか「U」だけとか、「C」と「T」だけとか、いろんな組み合わせがあっていいと思うんですけど、確かに自分の好きな曲とかこれまでの曲も、そういうもので形成されてるなと思いましたね。
──まさに僕もこれを見て「確かに」って思ったんです。まだ言語化できてなかったけど、「yamaの音楽って何?」って聞かれた時にこの3つの言葉をポンって出されたら、深く頷くみたいな感覚がある。でも同時に絶妙にズレてるというか、そこにプラスアルファで違うものが掛け合わさってyamaの音楽はできていたとも思うんです。
ああ、そうだと思います。だからアプローチ自体はいろいろあったけど、本当にたどっていったらこれだっていう。