今ツアーの大きな発見は、yamaが優れたR&Bシンガーでもある、ということ。ボカロルーツの楽曲を正確無比に歌いこなす職人的なイメージもあるけれど、「Chill out」「Urban」「Tender」というキーワードのイニシャルから取られたEP『C.U.T』の楽曲を中心に、肉体的なグルーヴをまといながら揺れ踊る声の魅力が素晴らしかった。通常のバンド編成に加え、もうひとりのキーボーディストとコーラス隊を迎えた新たな布陣も、その熱をさらに豊かに立ち上がらせていた。
ライブの全編を貫いていたのは、デビューから5年を越えたyamaの、アーティストとしての「今」。自身の作詞による“蛹”とVaundyの提供曲“飛ぼうよ”が「羽化」というモチーフと深く響き合いながら、中間部のバラードゾーンを中心に、この5年の歩みの中にあった迷いと苦悩、その先で手にしたアーティストとしての自信とリスナーへの信頼が、セットリスト全体に鮮やかな意味を与えていた。
まさに《6畳半》でひとり歌っていた2020年の“春を告げる”を観客全員で歌い、2026年の“Hanamushiro”で不完全な自分を受け容れながら春の終わりを歌う──そんなラストの流れは、あたたかな余韻を残しながら、羽化したあとのyamaの未来を想起させる、素晴らしいフィナーレだった。(畑雄介)