この4人が奏でるのは、最近のUKバンドが言えなかったロックの本音である。これまでのロックの歴史を振り返り、これからのロックの未来を見据えながら、「やっぱ俺これ好きだわ」という偽らざる告白、それだけを彼らは鳴らす。ブラーやオアシスの名を挙げるまでもない、王道であり、バカであり、リスキーな“UKギター・ロック”。でも、辺りを見回してみればそんなロックンロールを鳴らすバンドはどこにもいなくなっていたのだ。そして、それが正解だろうと間違いだろうと気にしない痛快さ。すべての答えはソングライティングにある、この若者たちはその一点のみを信じて疑わない。だから、リアムにも果敢に立ち向かっていける。やっぱ最高。(古川琢也)
救世主、再び来たり
あれから時代は何周もしたことを確認する半面、それでも大事なことは何ひとつ変わっていないということも痛感させられる一枚である。ビバ・ブラザーのデビュー・アルバム、ざっくり評するならば歌メロはブラーで、バンド・サウンドはオアシスである。こんなこと書こうものなら一昔前には袋叩きにあっていただろうが、そんなご都合主義の絵空事を現実にやってしまう底抜けの勇気と無謀こそがこのバンドの力なのだから、こちらとしても開き直るしかないのだ。それにみんな、結局これをやりたかったんじゃないのか。ずっと、これを待ってたんじゃないのか。
彼らの音楽は英国の伝統的マナーに則った……と言うか、ここには伝統しか存在しない。皮肉交じりに二重三重にツイストしていくボーカルも、サイケデリックを忘れない60年代への畏敬の念も、コーラス主導のパンチラインへの全幅の信頼も、郊外ラッドの古典的成り上がり物語も、その全てがザ・王道、ザ・ブリティッシュ。色んな時代のいつか何処かで、常に何処かで、少年達が恋焦がれて止まないロックンロールのひとつの究極形がこのアルバムである。本作を聴いていると、ロックンロールの未来に向けたちまちました足取りが心底どうでもよくなってくる。中途半端な刷新も、モダニズムを気取った単なるリバイバルも、赤と橙、青と水色といった微妙なニュアンスでしかない差別化も、そんなことでしか未来が描けないのなら、私はユニオン・ジャックを真新しい赤と青と白に塗り替えるようなこのバンドを選びたい。(粉川しの)