大阪公演も控えているので、昨夜のセットリストの詳細をここで書くのは控えておくことにする。しかし、言うまでも無く彼らは『FAMOUS FIRST WORDS』を1枚リリースしたきりのド新人バンドであり、つまり持ち曲と呼べるのも『FAMOUS FIRST WORDS』収録のナンバーがほぼ全てなわけで、サマソニでのステージ、サマソニ直前に恵比寿リキッドルームで敢行されたお披露目ギグ、そして今回のステージで彼らが演った曲はほぼ同一で、そこに特筆すべきバラエティの差は生まれていない。でもその代わりに、ほぼ同じ曲を3度に亙ってプレイする彼らを目撃したことで、ビバ・ブラザーがこの4ヶ月で遂げたライヴ・バンドとしての成長をよりビビッドに感じることができたとも言える。
ビバ・ブラザーは、英国伝統と王道のギター・ロックを今に継承する若手バンドである。UKギターの解体と再構築が進み、エクレクティックでクロスオーヴァーな「ギター+α」が求められるシーンの現状にあって、ヴァクシーンズと並び直球のUKギターで勝負している数少ないバンドのひとつである。プロデューサーにスミスやブラーとの仕事で知られるスティーヴン・ストリートを迎えて制作された『FAMOUS FIRST WORDS』は、60年代ブリティッシュ・ロック~80年代ギタポ~90年代UKロックを見事に博覧した作品で、各年代の最良のポイントを的確にかっさらっていく反射神経に今様の若者ならではの軽やかさを感じるものの、基本はむちゃくちゃクラシックな「間違いのない」アルバムである。
“Shoot Like Lightning”ではジョッシュがボーカルのリーの声を掻き消すくらいの音量でコーラスをぶちかまし、アルバム音源とは全く違うサウンド・バランスを新たに構築していく。“Otherside”や“False Alarm”ではインプロヴィゼーションが試され、アウトロに向かって大きく迂回する予想外の展開を彼ら自身が楽しんでいた。「完璧にして王道のUKロックのフォルム」と言ってもそれは古びて硬直した融通のきかないかたちではなく、今なお瑞々しい弾力性みたいなものを湛えたフォルムだということを証明するプレイになっていた。
ビバ・ブラザーと言えばオアシスやブラーと比較されるバンドでもあるが、彼らの面白さはオアシスみたいな曲やブラーみたいな曲を別個に書くのではなく、1曲の中にオアシスらしさとブラーらしさを奇跡的に両立させている点であることも、改めて確認できたショウだった。オアシスっぽいグルーヴはオアシスほど大仰ではなく、ブラー調のメロディはブラーほどスノッブじゃない。その絶妙な中和点を突くプレイに、筆者のようなオールドUKロック・ファンはどうしたってにやにやしないではいられない。クソ生意気だけど愛さずにはいられない可愛い奴、って感じなのだ。