聴き終わる頃には、この人がUSロックの1ページを作ってきたフォール・アウト・ボーイというバンドのヴォーカリストだったことをうっかり忘れかねないくらいに、R&Bもヒップホップもエレポップも幅広く網羅した――しかもポップのど真ん中のさらに真芯を撃ち抜くような集中力を伴った――サウンドを咲き乱れさせている。というか、これまでもティンバランドからジム・クラス・ヒーローズ、ブルーノ・マーズ、コブラ・スターシップまでソングライティングやプロデュースで関わってきたパトリック・スタンプの不定形であふれっ放しの情熱と才気とアイデアが、いよいよバンドという枠に収まらなくなったんだなあ、そりゃFOB休止するわなあ、と妙に納得させられてしまう1枚でもある。シングル曲“ディス・シティ”の全能感ばりばりのハイパーなアンサンブルといい、バンド・アレンジを完全に「音像の一部」として配置してみせた“グリード”のシビアなサウンド・デザイナーぶりといい、バンド時代とは別人のようにダイエットしてキメまくったアーティスト写真といい、いよいよ本気で牙を剥いた匠の意気込みが窺える快作。(高橋智樹)