ワンダーランドのつくりかた

ロス・キャンペシーノス!『ハロー・サッドネス~さよなら勇気、悲しみよこんにちは』
2011年11月09日発売
ALBUM
ロス・キャンペシーノス! ハロー・サッドネス~さよなら勇気、悲しみよこんにちは
「前作『ロマンス・イズ・ボーリング』以降の加入/脱退/パート・チェンジを経て生み出した作品」といったバイアスを取っ払って聴いても、4作目となる今作でロス・キャンペシーノス!の音楽がより深化したことは誰の耳にも明らかなはずだ。が、それは「ポップの森の奥で熱狂の理想郷を作り出してシーンに踊り出てみせた、10代の若者たちが、結成から5年経って大人の階段を上ったから」という単純な話ではない。いくぶんソリッドでタフにはなったものの、そこにあるのはやはりポップで祝祭的な音の理想郷だ。むしろ、「恋愛は退屈だ」と呼ぶことで大人になることを遠ざけようとした前作の季節を越え、永遠に色褪せない青春性のフォーマットの開発に成功したのだろう。ティーンエイジャーのワンダーランドで踊り回る躍動感にすべてを懸けていた彼らが、ワンダーランドを「作る」側に回って子供たちをエンターテインする側に回ることを決意した、と言い換えてもいい。だからこそ、今作の“ハロー・サッドネス~さよなら勇気、悲しみよこんにちは”で聴かせる高揚感は、どこまでも蒼くピュアなくせに、底抜けに逞しく、強い。(高橋智樹)
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