歌う喜び、歌で喜ばせる喜び

中田裕二『ecole de romantisme』
2011年11月23日発売
ALBUM
中田裕二 ecole de romantisme
椿屋四重奏の解散から一年たたないうちに、中田裕二がソロアルバムを完成させたことは、ある事実を教えてくれたと思う。彼は、純粋に、歌い続けることが必要な人なのだ。理想に近づけるように鍛錬し、見る人を夢幻に連れていく、生真面目なほど確固たるスタンスを築いてきた椿屋時代には、うっかり見落としがちな事実だったかもしれないけれど。そのスタンスから解き放たれた今作は、等身大で魅了できる色艶も、彼の本来の優しさも明るさも感じることができるのだ。ただ、丁寧に歌い、音楽を紡ぐという、意識の高さは、以前から変わらないように聞こえてくる。歌にしっかり向き合わせてくれる希少なアーティストとして、今後の大いなる飛躍を期待している。
 
個人的に最も響いたのは“白日”。《帰りたいけど 帰る場所なんてない》――今、多くの人が考えていることを、こんなに温かく歌える人は、そうそういない。彼は宮城に縁が深い。これも、今の彼が素だからこそ、できたことではないのだろうか。何にも囚われず、やるべきことをやる。そんな彼のアーティストとしての新たなスタンスを感じる。(高橋美穂)
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