フル・アルバムとしては4年ぶり。昨年のミニ・アルバムを挟んで通算10作目のリリースになる。今年4月の来日公演も記憶に新しいところだが、本作は近作の流れを汲む軽快なロック・サウンドを堪能できる一枚といえるのではないか。ギターの歪みが心地よい“On and On”を筆頭に、ラフで疾走感あふれるバンド・アンサンブルは最近のUSインディにおける90年代回帰と同期したムードも漂わせる。そのあたりの生っぽい感触は近作のトータスとも共通したものを感じさせるが、ペイヴメント風の“Skyscraper”やフォーキィな“Harbor Bridges”など、USギター・ロック.ギタポ・ファンの琴線に触れる名曲揃い。一方、先行トラック“Harps”のシンセやダンス・ビート、10CCも連想させる“The Invitations”や“The Runner”といった、エレクトロニクスや音響処理を効かせたアプローチも散見できる。この匙加減こそ彼らの妙味であり、結成20年目を控えてなお、瑞々しい創作精神を披露する本作の醍醐味にほかならないだろう。録音とミックスを手がけるのは勿論ジョン・マッケンタイア自身。次の来日公演が早くも待ち遠しい。(天井潤之介)