来日公演が中止となってしまったのは残念だが、2年弱のインターバルでリリースされるこの新作を聴いて待ちたいところ。先行シングル群と連作風になっているアートワークは、どうやら「世界初の猫専用ヘッドフォン（10台限定生産で既に完売済み・売り上げは動物愛護のチャリティーに充てられるらしい）」という、どこまでが本気なんだか分からないようなタイアップ企画に通ずるもののようだ。人をくったアルバム・タイトルといい、掴みどころがない上に極めてポップなパブリック・イメージの構築ぶりは相変わらずだ。

ただ、イメージ戦略に見合うだけの独創性溢れる楽曲が次々に生み出されることこそデッドマウスの本領なのであって、前作から驚くべき距離の歩を進めていることはすぐに分かる。ジェラルド・ウェイやサイプレス・ヒルらのシングル曲における活躍に加え、イモージェン・ヒープも参加する独自のヴォーカル起用術。この男の頭の中は一体どうなっているんだろう。エレクトロ・ハウスもディスコ・ダブもヒップホップも自由に行き来して溢れ出るアイデアを、一括りのタイトルで縛り付けることは確かに不可能だ。（小池宏和）