「世界」を再定義するということ

People In The Box『Ave Materia』
2012年11月07日発売
ALBUM
People In The Box Ave Materia
People In The Box史上最高に毅然としたアルバムであり、同時にどこまでも開放的なアルバムだ。アクロバチックなほどに複雑かつ緻密にうねる3ピースのアンサンブルの中で「個人対世界」の構図をリリカルで哲学的な詞世界へと昇華するべく苦悶してきた波多野裕文だが、《きみの孤独が 世界を救うかもしれない》(“ダンス、ダンス、ダンス”)など、ここで歌われる「きみ」への言葉は、どこか黙示録の如き厳かな響きをもって胸を奮わせる。そして、決して融合することのない「きみ」の集合体として世界を再定義することによって「僕」と世界は等価となり、その歌とサウンドはより深く優しく僕らひとりひとりに寄り添ってくる。震災以降の混乱や矛盾と向き合いながら、彼らがその音楽的探求の必然として辿り着いた、やわらかで熾烈な音の風景。《誰かが死にかけているとき/きみは生きる喜びにある》《愛も正しさも一切君には関係ない/きみは息をしている》(“八月”)――やみくもな生の肯定とは真逆の、暗黒を見据える者だけが描き出せる生命力が、今のピープルの音楽には確かに宿っている。(高橋智樹)
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