愛される理由。

ART-SCHOOL『The Alchemist』
2013年03月13日発売
MINI ALBUM
ART-SCHOOL The Alchemist
5000枚限定のミニ・アルバム。前作はスティーヴ・アルビニのスタジオ(EAS)での録音だったが、今作はROVOの益子樹がエンジニアを務めている。益子の起用は『Flora』以来だが、徹底して情緒性を排したメタリックな音色、むき出しの鉄骨のような生々しく硬質な音が身上のEASから、それとは対照的な、奥行きのある立体的な音が持ち味の益子をあえて配したことが、本作の狙いをよくあらわしている。おそらくアートは、前作のソリッドで無骨で剛直な音とトレードオフだった、ポップで柔らかで空間的な広がりのある色彩感豊かなアート・スクールを、益子の手助けによって提示したかったのだろう。それは見事に成功している。それでいて現在のアートのバンドとしてのカッティング・エッジなエネルギーはまったく損なわれていない。ぼくは前作のライナーノーツで「これがアートの最高傑作」と書いたけれども、楽曲のクオリティという点では前作以上かもしれない。特に狂おしいサックスをフィーチュアしたサイケデリックな“Helpless”は、近年のアートとしては白眉といえる名曲だ。(小野島大)
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