前作が高評価を得たザ・メン、早くも新譜が完成。去年はクラウド・ナッシングスとかメッツとか、このバンドみたいにささくれ立った音を鳴らすヤツらが台頭し始め、本当にワクワクした。ところが今作は、冒頭から軽快なピアノをバックにポップな曲が流れ始めたので混乱してしまった。前作にもカントリー風味のナンバーとか入っていて変化の予兆はあったが、たった1年しか経ってないのに驚くべき進化っぷりだ。新ベーシストが作曲段階から関わり、ラップ・スティールを弾く5人目のメンバーが本格的に参加していることも大きいのだろうが、バンド自身「どんどん先へ進んで行こう」という意識を強く持っているようだ。
　
サイケな感覚を持ったガレージ・パンク／ポスト・ハードコアに、クラウトロックまで取り込んだ前作までの音楽性に夢中な気持ちもまだあり、少し勿体ないような気がしつつも、失敗作とは感じず追いかけていきたいと思わせられるのは、ダイナソー・Jr.やバズコックスに通じるような作曲能力の高さによる部分が大きいのだろう。こういう存在にリアルタイムで向き合えることほどスリリングで幸せなことはない。（鈴木喜之）