音楽が育む「ホーム」感

マイア・ヒラサワ『ホワット・アイ・ソウ』
2013年05月22日発売
ALBUM
マイア・ヒラサワ ホワット・アイ・ソウ
日本とスウェーデンのハーフで、震災直前の1年間に仙台に滞在していた経験などから、復興への積極的なサポート姿勢でも知られるマイア・ヒラサワの新作。クワイア出身の透き通るような歌声と、お行儀の良さには留まらないユーモラスな作曲、そして感情を自在に伝える表現力を兼ね備えたシンガー・ソングライターである。そのエレガンスと野性味が共存した強烈な個性は、所謂スウェディッシュ・ポップの枠組みからもはみ出してしまうものの、面白いポップ・ミュージックはいつだってこんな風に、アンビバレントな立ち位置から生まれ来るものだ。

マイア自身が日本語歌唱を披露する〝ザ・ワンズ〞はくるりの岸田繁とのヴォーカル共演がトピックとして挙げられるが、英語ヴァージョンは母国スウェーデンでもCM曲に起用されるというほっこりした懸け橋の一曲。〝ライツ・アー・アウト〞や〝ゴー・トゥ・スリープ〞は帰還の想いが歌い込まれ、命の瞬きに注視するよう強く促す〝スティル・シンク・オブ・イット〞、そして彼女のフォーク観が全開になったメロディの表題曲と、音楽に宿された「居場所」の磁力に引きつけられる。(小池宏和)
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