昨年、アルバム『In My Shoes』で旋風を巻き起こしたSALUによる、メジャー・デビュー・ミニ・アルバム。“ホームウェイ24号”、“鵠沼フィッシュ”といった小田急沿線の情景が歌い込まれたシングル曲群に加え、ライムスターのMummy-DやリップスライムのPESらをそれぞれゲストに迎えたトラックなど、全8曲。これまでSALUをバックアップしてきたBACHLOGIC、そしてOHLDも引き続きプロダクションの協力体制を敷いている。一度聴いたら内耳にへばりついて離れなくなるメロディアス・フロウを駆使しつつ、内面の思考を空間に塗りたくってゆくような『In My Shoes』が更に押し進められ、今回はポジティヴなメッセージをリスナーと広く分かち合おうとする姿勢が窺える。用いられる旋律も、よりオープンな響きとなった。

ただ、SALUの場合はポジティヴといってもひたすら己を鼓舞するのではなく、「でもどうかなあ」といった感じで常に心の逡巡を含ませるところが面白い。そのリアルな心の動きを伝えてこそラップの情報量が機能するし、極めて日本人らしい表現スタイルで見事だ。（小池宏和）