ロックの定型からの逸脱

ブライアン・イーノ『アナザー・グリーン・ワールド』
2013年08月28日発売
ALBUM
ブライアン・イーノ アナザー・グリーン・ワールド
ロキシー・ミュージック脱退後のイーノのソロ・アルバム8種が再発。キッチュでマッドなグラマラス・ポップに始まり、次第にロックの定型を逸脱し、アンビエント・ミュージックの成立に至る過程は、ポップ・ミュージック史上もっともスリリングなものと言っていいだろう。

イーノは75年1月に交通事故で入院するが、その時にアンビエント・ミュージックのヒントを得た。退院してすぐに作ったのが歴史的なアンビエント第1作『ディスクリート・ミュージック』だが、本作はそのあとに作られた(発売は逆)ソロ3作目。前2作のような攻撃的だったり奇矯だったり毒を含んだロック曲は影を潜め、静謐で穏やかな歌ものが並び、インスト曲は『ディスクリート・ミュージック』と地続きのアンビエント・サウンドで、まさしくポップ時代とアンビエント時代の端境期にあった、この時期にしかないイーノの魅力を的確にとらえた名盤と言えるだろう。このあとパンク期を反映したサイバー・ポップ・アルバム『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』を出して、イーノはしばらくアンビエントとプロデュース業に専念することになる。 (小野島大)
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