初々しいヴェテラン

クワージ『モール・シティ』
2013年10月16日発売
ALBUM
クワージ モール・シティ
クワージが結成20年とは……。失礼ながら、あのロウ・ファイ・サウンドで20年もやっていけるとはとても考えもしなかったが、3年半ぶり、通算9枚目となるアルバムには原点の魅力を失うことない、簡素ながらもポップ感覚が深く刻み込まれた音が溢れかえっている。元夫婦でもあるサム・クームズとジャネット・ワイスを核にしたグループは、93年にオレゴン州ポートランドをベースに活動開始、タッチ&ゴーやキル・ロック・スターズといったアメリカの老舗インディから作品を出しつつ、サムはエリオット・スミスと共にヒートマイザーをやったり、ジャネットはスリーター・キニーに加入したりと、要するに派手さは欠けるものの米インディ界の根幹に近いところで活動してきているので、単に年月を重ねた連中とは経験値が大違いだ。

ということをしっかりと反映したアルバムで、サウンド的にはシンプルこの上ないし、余計なアレンジはまったくされていないが、だからこそ曲としてのスッピン力は明確に伝わってくる。“R.I.P.”や“ジェラルディーン”といった美しいナンバーにある初々しさを20年前と変わらず持っていることに拍手。(大鷹俊一)
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