オーストラリア出身で、現在はベルリンを拠点に活動している若きプロデューサー、カイソンのデビューアルバムが日本盤化。今作はLAインディのヒップホップ・レーベルフレンズ・オブ・フレンズからのリリースとなっている(サルヴァの『コンプレックス・ハウジング』はナイスなビート・アルバムだった)。カイソンは緻密に編み上げられたエレクトロニカを下地に、今日的なポスト・ダブステップ~チルウェイヴを鳴らしているのだが、これが素晴らしい。聴き進めるほどにどんどん引き込まれてゆく、極めて懐の深いアルバムだ。
ポスト・ダブステップがナイーヴな歌心を伝えるツールとなって随分な時を経たが、かつてロックやエレクトロニカがそうであったように、音楽的な言語の独自性をアピールするために、フォーク/トラッドの広い裾野に赴いてメロディを参照するアーティストが増えてきた。カイソンも然りで、インストゥルメンタルな楽曲が大半だが、多彩なメロディを分解/再構築して編み上げ、雄弁な文体を完成させている。熱心な研究を経て辿り着いた成果だろう。トレンドの中で抜きん出るためのアイデアが際立つ作品だ。(小池宏和)