エレクトロ、ヒップホップ、ヘヴィロックなどを自在に取り込んだダンサブルなサウンド、そして、「難しいことは忘れて、本能で踊りまくれ」というメッセージをびっしりと刻み込んだ歌。
Ochunismのニューアルバム『REWILD』は、このバンド本来の個性がさらに自由に発揮された作品となった。
今年3月にメンバー自身の意思でメジャーレーベルを離れ、インディーズに戻った5人。自分たちがやりたいことは何か? どんな音楽を共有したいのか?を見つめ直し、試行錯誤を繰り返して彼らがたどり着いたのは、すべてのオーディエンスを解放する極上のダンスミュージック。ここに至る過程を、どこまでも赤裸々に語り合ってもらった。
インタビュー=森朋之
今年になってようやく、音楽は「楽しい」を共有するツールなんだなと思えるようになって(凪渡)
──8月10日のLIQUIDROOMでのワンマンライブ、素晴らしかったです。今年3月にメジャーレーベルからインディーズに戻ることを選択し、新たなスタートとなるライブだったと思いますが、みなさんの手応えはどうでしたか?凪渡(Vo) 久々に心から音楽を楽しめたという気持ちがいちばん大きいですね。ここ数年、「自分にとって音楽ってなんやろ?」ってずっと考えていたんですよ。「自分の弱さを映し出すものなのかな」と思っていた時期もあるし、「うまくやらなきゃ」というプレッシャーも感じていたんですけど、今年になってようやく、音楽は「楽しい」を共有するツールなんだなと思えるようになって。LIQUIDROOMのワンマンでもそのことを確信したし、同時に「もっとやれるな」という感覚もありました。
okada(MPC) この1年くらい毎週のようにライブをしていて、修業期間みたいな感じだったんですよ。合間にダンスレッスンもやったりして。
凪渡 そこまで本格的なものではないんですけど、知り合いのダンサーにお願いして、基本的な動きを教えてもらったり。
──LIQUIDROOM公演でもダンスを取り入れた演出がありました。okada ライブでダンスパフォーマンスするバンドって、そんなにいないと思うんですよ。
凪渡 僕とイクミン(Dr)はもともと身体を動かして音楽を感じるのが好きなんですけど、ちゅーそん(G)、kakeru(B)はそうではなくて。それぞれギター、ベースの音で表現するタイプだし、ダンスを取り入れた演出は結構大変だったんですよ。最初は恥ずかしさやぎこちなさがあったし、辞めたくなる人もいたり(笑)。
ちゅーそん 頑張りました(笑)。LIQUIDROOMは憧れのハコで、すごい気合いが入ってたんです。修業期間で培ったものを活かしつつ、身体の内側から出てくるものを自然に表現できたのかなと。ちゃんと成果が出せたし、自分としても素晴らしいライブだったなと思います。
イクミン 今まではひとつの正解を求めてガムシャラに走ってきた感覚があったんですけど、LIQUIDROOMでの公演を経て、「何をやってもいいんだな」と思えるようになってきて。ダンスもそうだし、効果音を使った演出だったり、バンドの枠から出ても全然いいなと。ここからもっといろんなことに挑戦していきたいですね。
kakeru めちゃくちゃ楽しかったですね。インディーズに戻ったことで、自分的には昔のOchunismが帰ってきた感じがあるんですよ。新しいアルバム『REWILD』も自信を持って出せる作品になったし、ここからさらに進んでいけるはずだと思っています。
──自分たちの意思でのメジャーレーベルを離れるという決断はとんでもなく大きなことだと思うし、特にこの半年間はすごく重要な時期だったのでは?凪渡 そうですね。メジャーデビューしてからはアドバイスをくれる人たちが周りに増えて、僕らもそこに向き合ってきて。正直、その期間は大変でした。今は純粋に音楽を楽しめているし、ちゅーそんが言ったように、自分たちから湧き出てくるありのままを表現できるようになってるんですよね。以前のマインドが戻ってきてるのも感じるし、しかもこの5年間で培ってきた技術やセンスも活かせて。やりたいことを自然にやって、みなさんに「Ochunism、ちょっと気になるね」と思ってもらえる状況になっている感じがありますね。
──逆に言うと、いくらテクニックを使って形を整えていても、マインドが伴っていないと輝けないということですよね。凪渡 本当にそうなんです、不思議なもので。バンドにとって大事なのはマインドだと思うし、音楽ファンの人たちもたぶん、そのことを心のどこかで感じ取っているんじゃないかな。技術の高さで評価されるバンドもいるし、それもいいと思うけど、マインドがあるアーティストって理由なく愛されると思っていて。恋愛と一緒です(笑)。
──音楽に対するマインドを取り戻したことで、創作やライブが活性化した感覚もありますか?凪渡 あります。ただ勘違いされたくないのは、「メジャーを離れて自由になった」という意味ではないんです。自分たちに費やしてもらった時間、お金は本当にありがたかったし、ある意味、責任から逃げたという気持ちもどこかにあって。自分たちで今の状況を選んだ以上、今の僕たちがやるべきなのは、しっかり花を咲かせることだなと思ってます。
一度きりの人生なので、自分の好きなものを全力でやったほうがいいよって(凪渡)
──ニューアルバム『REWILD』にも、Ochunism本来の個性とセンスがダイレクトに刻まれていて。制作にあたっては、どんなビジョンがあったのでしょうか?凪渡 僕らはもともとテーマを立てて制作するタイプではなくて。5人とも素直なので(笑)、そのときの自分たちが勝手に出ちゃうんですよ。今回のアルバムで意識したのは、MPCのokadaにしっかり制作に加わってもらうこと。okadaとちゅーそんにトラックを作ってもらって、僕がラップやメロディを乗せるっていう。最初からそういう作り方をしようと決めていたので、デジタルサウンドが強めになるだろうなとは思っていました。
okada 自分はもともとヒップホップやテクノが好きで。Ochunismはドラマーがいるバンドなので、クラブミュージックの要素を混ぜるのは難しいなと思っていたんですけど、今回ようやくうまく融合できたのかなと思ってます。選曲も基本的に自分がやらせてもらったし、曲作りのアイデアもいろいろ出させてもらって。最近ハードロックやメタルを聴き始めて、それがすごく新鮮だったから、ちゅーそんに「そういうテイストで作ってほしい」とお願いしたり。
ちゅーそん アルバムの1曲目に入ってる“YEAH!!!!”ですね。
イクミン 僕も打ち込みの音楽はよく聴くし、好きなんですよ。以前は「俺にドラムを叩かせてくれ」みたいな気持ちが強かったけど、最近はビートをokadaに任せて、自分はパーカッションを担当することもあって。お互いの良さが活かせるようになっていると思います。
──MPCプレイヤーが存在しているのはOchunismの大きな特徴ですからね。そもそも制作でokadaさんをフィーチャーしたのはどうしてなんですか?凪渡 アーティストとしてすごく成長してるんですよ。okadaがMPCを始めたのはこのバンドに入ってからなんですけど、まさにOchunismとともに成長してきて。okadaは去年「KING OF FLIP」(MPCなどのサンプラーを使用し、生演奏のみでパフォーマンスや技術を競い合うイベント)に出たんですけど、それも大きかったよね?
okada うん。優勝者は香港のプレイヤーだったんですけど、彼とも繋がりができて。
凪渡 どんだけokadaのケツを叩いたことか(笑)。こうやって話していてもわかると思うんですけど、Ochunismのメンバーは優しいんですよ。僕は自己主張が激しいタイプで、放っておくとどんどん喋っちゃうんだけど(笑)、4人はすごく謙虚で。ちゅーそんにも「ギターすごいから、もっといろんなことに挑戦したら?」って言うんだけど、「俺なんかより上手いやついっぱいいるし」みたいな。
ちゅーそん (笑)。
凪渡 そんなこと言ってたら何も始まらへんし、大海を知るってめっちゃ大事じゃないですか。いろんなことに挑戦して、もっと失敗してほしいという気持ちもあるし、なのでokadaのケツもめちゃめちゃ叩いたんですけど、今は「すごく上手い」って評価されてて。大海に出てみたら、意外と波に乗れてしまったという(笑)。
okada (笑)ケツを叩かれたおかげで、まさにマインドが変わったというか。今は「とりあえず動く」みたいな感じになってます。
kakeru 僕もめっちゃ凪渡にケツを叩かれてて。最近、ゲーム配信を始めたんですよ。
──音楽とは違うジャンルだ(笑)。凪渡 一度きりの人生なので、自分の好きなものを全力でやったほうがいいよって。kakeruはとにかくゲームが好きなんですよ。
kakeru ゲーム実況も毎日観てるくらい好きなんですけど、凪渡に「自分でやっちゃえばいいじゃん」って言われて。最近片足を突っ込んだんですけど、これからも楽しいことをバンバンやっていきたいです。
凪渡 もちろんベーシストしてもすごくて。ステージでの立ち姿もいいし、それも才能じゃないですか。しかもあれだけ弾けるんだから、女性にキャーキャー言われるようなべースプリンスになってほしいなと(笑)。
kakeru 王子様マインドですね(笑)。