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聴いてる音楽も最近なんか原点に返ってて。高校生のとき好きだったアークティック・モンキーズとかホワイト・ストライプスとかをいっぱい聴いてる(朝日)

――その反省っていうプロセスはわりと理性的なものだったの?

朝日 ほんとにやっぱり、『ポップソングと23歳』を作って、このアルバムここがダメだな、みたいなのとか、これもっとこうしたらおもしろくなったなとか、やっぱりほんとに理性的だったと思う。で、その間にいろんな音楽をまたあらためて聴いて……聴いてる音楽も最近なんか原点に返ってて、高校生のとき好きだったアークティック・モンキーズとかザ・ホワイト・ストライプスとかウィーザーとかをいっぱい聴いて、この人たちスゲーアルバムいっぱい作ってんなと思って……それに比べたら『ポップソング(と23歳)』のつまんないことっていう、つまんねーぞこのアルバムって思って。

――うん。

朝日 海外で活躍してるトップアーティストだからそれはもう勝負になんないよって思う部分もあるんですけど、結局音楽をやってるっていうところでべつに俺たちにできないことってこの人たち何ひとつやってないって考えたら、同じ土俵だわって思って。もっとおもしろいアルバム作らなきゃ! つまんねーもん作ってる場合じゃねえ!みたいな焦燥感にかられて。そういうテンションの中で今回取りかかったっていうのもデカかったんですよね。

――だからまさに今、朝日くんが言った言葉で言うと原点だよね。このアルバム聴いたときに、なんかゼロになったって感じがすごいしたんだよ。反省を踏まえてどうこうっていうその理性的なプロセスももちろんあっただろうけど、それとは別に、本能的にもう一回そこに立ち返ったみたいなところもあったのかなっていう気がするんだけれども。

朝日 だから、そうですね、フォーマットというか、なんかポーンってリセットしてなんかおもしろいものをひたすら吸収しようっていう。おもしろい音楽を積極的に探して聴いてたっていう。洋楽もそうだし、ゲームの音楽とかアニメのBGMとか。

藤田 アイリッシュ音楽とかも探してた。

藤田 “晩夏とペダル”っていう曲を作るときに……アイリッシュだけじゃなくて――。

朝日 ケルトも。

藤田 とかをひたすら聴いて……なんかそういう音楽やりたかったんですよ。

朝日 なんかああいうの作ろうみたいな感じでやって……アイリッシュ聴いたときすごいへこんだな。

藤田 へこんだな……たまたま聴いた音源が、向こうのおっちゃんたちがおそらくテキトーな酒場とかでテキトーにセッションし始めた感じのやつなんですけど、クオリティーが高いんですよ、ハンパじゃないなって、勝てねえって。

朝日 ダメだと思って。そっからどうにか……「いや、国が違う」と思って。

――ははは(笑)。

朝日 さっき同じ土俵って言ったばっかりやんっていう(笑)。

藤田 「楽器のうまさとかで勝負するところじゃないから」って言い聞かせて。それでどうにか、コードとかちょっと解析して作ったのが“晩夏とペダル”ですね。

――その、なんか新しくておもしろいものを求めてワールドミュージック方面に行くみたいなパターンって、すごくありがちなひねくれ高校生バンド小僧じゃない?

朝日 そうですね(笑)。

藤田 ね(笑)。

――それを今もう一回やってるわけだよね。

藤田 最高に楽しいです。

――そういうのを自分で求めてたんだよ、たぶん。

朝日 やっぱり……なんか自分の曲に若干飽きてきたっていうのもあったんですけど、だからやっぱりリセットなのかもしれないですね、いっぱい新しいもの吸収しようって作り始めたんで。

――今回、プロデューサーの中尾(憲太郎)さんとの作業はどうだったんですか?

朝日 スゲー楽しかったですね。

藤田 おもしろかったです。

朝日 中尾さんもやっぱり、攻めた曲が好きじゃないですか。

――それはそうだよね。

朝日 そう、だから今回のコンセプトと……『ポップソング~』のときはお互いのやり方をなんか計りながら、探ってた感があったんですけど、今回はお互いなんか攻めたもん作ろう!みたいな感じで、はじめからスピーンって方向が定まってたので……すごいだから、あらためて聴くとミックスとかが……これめっちゃヴォーカル小っちゃいよな、楽器スゲーデカい。

藤田 ヴォーカル小っちゃいです、ギターバカみたいにデカくて。

――たしかに、ガチャガチャしてるなって感じはある。

朝日 でも、だからギターの音とかめちゃくちゃかっこいいんですよね。

藤田 いい。結構、最近の音楽って1個1個の音がちゃんと聴こえて、で、かつヴォーカルの声もパンッと一番前に出てっていう、すごいきれいな音作りが多い気がするんですけど、今回はなんかほんとに空気感とかライヴ感をすごく大事にして作った感じがあるので。

――だから、『ポップソング(と23歳)』は曲のよさを味わう作品だったと思うんだけど、これ、そうじゃないもん。

藤田 違いますね。

―――曲のよさを味わう前になんかわけわかんない塊みたいなのがボーンって飛んでくるみたいなさ。

朝日 ドシャッてしたミックス……録ったスタジオ僕すごい好きなところなんです、石風呂のほうで何回かお世話になってたスタジオなんですけど、ここのスタジオなんかめちゃくちゃいいな、ここでコンポラ録りてえなってすごい思った。なんか哀愁のある渋い音が録れるスタジオで。だから、あそこで時代に隔離されながら制作してたから今回みたいな音になったんじゃないかという。中尾さんと作るのスゲーなんか今回楽しかったな。

藤田 ほんとに楽しかった。

朝日 “PIXEL MONSTER”の最初のイントロのギターリフだったりも、なんかいろいろ中尾さんと話し合いながら、こういうギターフレーズどうですか?みたいなアイデアを出し合って完成した曲なので。その “PIXEL MONSTER”が最後にできた曲で、本当に中尾さんとの制作はすごく俺は楽しかったですね。

――がっつりタッグを組んだって感じだよね。中尾憲太郎の匂いがするもん。

朝日 中尾さんにいっぱいバンドを教えてもらったりとかしたんで。

――そういう、いわゆるロック文化圏の先輩との絡みって今までそんなになかったんじゃない?

朝日 まあ中尾さんレベルまでいくと僕らからするとレジェンドですからね。

――まあそうだけど、そういう人と作業することで、今までのコンポラのバンド観とかロック観とかが変わるスイッチみたいなのを押すことができたんじゃないかっていう。

朝日 なんかハッとさせられたという感じですよね。この業界やっぱりいいもん作らないと相手にされないんだっていうのをやっぱりあらためて認識させられたというか、ほんとにまだぺーぺーの僕らはなんか名前を知ってる人はやっぱり少なくて、だからこそほんとにいいものを知っていいものを作らないと誰も相手にしてくれないんだって。この人はそういうのを生き抜いてきた人なんだって思うとすごいなんかハッとさせられます。うわ、がんばらないとって。

すげえ腹立つこととか言われてヘドが出そうになっても、そこで言い返すんじゃなくて、その思いを溜め込んで曲にできたら生産性のあるケンカになる。そういうケンカがしたいんです(朝日)

――『ヘドが出る前に』っていうこのアルバムタイトルは、同題の曲ができてからアルバムのタイトルにしようっていうことになったの?

朝日 いや、まだ曲ができる前にタイトルができて、『ヘドが出る前に』ってスゲーいい言葉だと思って。アルバムのタイトルにしよう、あまつさえ表題曲にしようっていうのを名前から先に決めて、それに合わせて作っていったみたいな感じですね。

――どういうイメージだったの? 『ヘドが出る前に』っていう言葉は。

朝日 言葉の意味合いは、まあ、なんかスゲー腹立つこととか言われて嫌なこととかがあってヘドが出そうになる瞬間ってあるじゃないですか、それに対して……だからその、おまえはつまんねーな、みたいなこと言われて、それに対して売り言葉に買い言葉で返しても、それで僕らが得することって全然ないじゃないですか。おまえの曲つまらん!みたいなん言われて言い返しても。だったらそこから黙って、絶対こんなやつらを黙らせるかっこいい曲作ろうって、思いを溜め込んで曲にできたら、それほんとに生産性のあるケンカじゃないですか。

――うん。

朝日 それはまあ曲じゃなくてもいいんです、仕事だったり勉強だったり……おまえ、あの学校絶対受かんないよ、みたいなの言われても、そこに対して、絶対こいつ、俺が合格したらスゲー吠え面かくだろうな、みたいな……なんか、そういうケンカをしたいなっていう。だからその怒りみたいなのを出そうと思ったら2ビートだと思って。

――だから、ヘドを出す前にちゃんとやるべきことやって、それにおいて結果的に勝つみたいなこと?

朝日 負かすというか……勝ったり負かすというか……負けないというか。

――だからまあ生産的とも言えるし、ねちっこいとも言えるわけですけど(笑)。

朝日 そうですね。

――僕は朝日廉がケンカっ早いかどうかとかは全然知りませんが、たぶんケンカっ早くはないと思うんですよ。

朝日 ケンカっ早くはないです。ケンカはむしろ全然しないんですけど。

――でしょ。だから何か嫌なことがあったとか虐げられたとか、そういうときにたぶんずっとこういう戦い方をしてきた人なんだと思うんだよね。いつか何かのかたちで負けないようになるぞっていう。基本的な生き様というか、朝日廉としての戦い方が今あらためてこうやって曲になってるって印象があって。それがなんで今出てきたんだろう?

朝日 今までやっぱりわかってなかったというか、純粋になんか、こういうパワーみたいなのを表現するのに、なんか自分の中でのエネルギーみたいなものが全然足りてなかったというか。バンドの自力だったりとか、あとすごくデカかったのは、フルアルバムを作るぞってタイミングだったりとか。

――コンポラを初めて取材したときに、朝日くんは、ここに書いてあることとまったく同じことを言ってたんだよ。負けっぱなしの人生だったけれども、それに対する逆襲のために、負けないために音楽をやってるんですって。でも、それをここまでちゃんとはっきりと歌にはしてこなかったと思うんだよね。

朝日 そうですね、一番これがわかりやすいというか。でもそれは、一番デカいのはタイミングだと思うんですよ。フルアルバムを出すなら、今までの総括じゃないですけど、やっぱり代表曲になるような曲が作りたいっていう。大きな節目に対して、今までやってきたことの、自分の中での気持ちだとかが全部キュッてひとつにまとまって、よし、作ろう!っていう、決めてかかった覚悟みたいなのがやっぱりあったから。節目にふさわしい要素をガッて小さくまとめたら、この“ヘドが出る前に”っていう曲に必然的になったんだと思います。

――藤田さんは“ヘドが出る前に”という曲を聴いて、どういうふうに感じますか?

藤田 もちろんメロディもいいし、コード進行もいいんですけど、何より歌詞がほんとにこう、心に来る人がきっといるんだろうなって。たとえば中学時代の私がこの曲を聴いたらすごく胸に刺さったと思うんです。この曲を聴いて悔しくなったと思うんです。その頃の私には、ヘドが出る前に何かをする力がなかったから。かといってヘドを出すこともできずに、そのときの私は目と耳をふさいでしゃがみ込んでたんだと思うんです。でもそのときの私に、こうやってこの楽曲を作ってぶつけて生きていってる大人がいるんだよっていうのは知ってほしいんです。そのときに死ぬほど苦しんで、小さいコミュニティの中で目つぶることしかできなかった人間でもちゃんと、意外と大人にちゃんとなれて、意外とこうやって人の前に立って歌歌ったりベース弾いたりできるんだよっていうのを見てほしいって思ってます。このアルバムに対しては、そういう思いが私の中にはあります。

――たしかに、中学時代だったら朝日くんだって絶対これは、思ってても言えなかったことなんじゃないかなっていう気はするよね。

朝日 中学時代の俺にアルバム作らせたら……それはそれでスゲー変態的ないいアルバムができそうですけど(笑)。

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