ツアーファイナルが開催されたHULIC HALL TOKYOは、元々が映画館ということもあり、パスピエの圧倒的なクオリティと奥行きのあるサウンドを体現するのにぴったりで、まさに音を「浴びる」感覚。そこでみせる大胡田なつきの変幻自在な歌声と多様なアプローチ、成田ハネダ、三澤勝洸、露崎義邦とサポートドラムを含むメンバーのセッションやソロプレイもバッチバチにかっこいい。
何より、会場のサウンドシステムすらも自分たちの楽曲のエネルギーを引き上げ、新しい景色を見せるための演出として機能させる彼らの凄みを実感する。その瞬間瞬間で生み出す音と、クラップや歓声で応える観客のグルーヴが合わさって、現実世界の嫌なことや悩みなんか考える隙間もないくらい、楽曲のエネルギーで満たすような圧倒的な没入感が会場全体を包み込んでいた。
彼らの力を持ってすれば観客を満足させること自体は難しくないはずだが、そこに留まらないのがパスピエだ。「またアルバムを出すから」と自然とMCで口をついて出てしまうほど、常に次を見据えている。
ニューアルバム『IMI』に収録された、ラテンの要素も取り入れた“U.N.O”での観客の熱狂が象徴的だが、どんなジャンルに踏み込んでも、その輪郭が揺らぐことはない。「どの世代にもキャッチしてもらえるような作品になったら」と以前インタビューで答えてくれたとおり、更新され続ける現在地と、観客とともに生み出すエネルギーの強靭さ。その両方を、これ以上なく鮮やかに示したライブだった。(江口祐里)