「なんてファンタスティックな夜なんだ!」
2月25日、日本武道館。3時間にわたる濃密な宴の最後に聞こえてきたのは、ジェイムズ・ラブリエ(Vo)が発したあまりにも素直な歓喜の言葉だった。
ドリーム・シアターの物語が、ボストンのバークリー音楽大学を舞台としながら始まったのは1985年のこと。その歴史は幾度かの人事異動を含むものだったが、2010年に離脱していたマイク・ポートノイ(Dr)が2023年に復帰を果たし、バンド創設者3名がふたたび顔を揃えた形で制作された第16作は、2025年を代表する名盤のひとつになった。
今回の来日公演は、2024年10月、同作の発売前から開始されていた結成40周年ツアーの一環としてのもの。こうした機会においては、代表曲が網羅された固定的内容の公演が重ねられていくのが世の常ではあるが、やはり彼らはやることが違う。すべてを漏れなく網羅しようとするあまり排除されがちな長尺曲の数々についても惜しみなく披露され、曲が移り変わるたびに「それもやるのか!」「この曲までやってくれるのか!」という驚きを伴う感動が押し寄せてくる。しかも立体感に富んだ映像を背景に伴いながら繰り広げられるその演奏は、観る者を異次元世界に没入させずにおかない力に富み、文字どおり時間が経つのも忘れさせられた。さらに第二部では最新作の世界を存分に堪能させ、このバンドが今なお現在進行形であることを印象づけていた。
そこには、複雑に編まれたものが完璧に再現されること以上に人を夢中にさせるものがあった。そして、彼らの音楽は難解さや複雑さを目的としているわけではなく、あくまで「音楽的語彙が豊富すぎる人たちによる音の会話」なのだと改めて実感させられた。そして、その会話にポートノイのボキャブラリーが含まれているからこその味を感じた。この40周年ツアーはすでにトータル110公演を超え、本記事が読者の目に届く頃、彼らは中南米各地を巡演している。プログレメタルの代名詞ともいうべき選ばれし者たちは、その領域の先駆者としての地位に甘んじることなく、この先も真の意味での進化と深化を続けていくことだろう。(増田勇一)
ドリーム・シアターの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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