21世紀モダン・ヘヴィ・ロックを更新する音像

ドリーム・シアター『ディスタンス・オーヴァー・タイム(リミテッド・エディション)<完全生産限定盤>』
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ALBUM
ドリーム・シアター ディスタンス・オーヴァー・タイム(リミテッド・エディション)<完全生産限定盤>

ドリーム・シアターという音楽をヘヴィ・メタルの枠組みで聴いている人もプログレッシブ・ロックの系譜に位置付けている人も、今作『ディスタンス・オーヴァー・タイム』が放つモダン・ヘヴィ・ロックとしてのエッジ感と輝度に驚き感激することと思う。先行シングル曲“アンテザード・エンジェル”をはじめアルバム全編を貫くハイエナジーなサウンドは、ドリーム・シアター自身の歴史のみならず、ロックという表現そのものの限界を更新するほどのダイナミズムに満ちている。

「フル・オーケストラ仕様のダブル・コンセプト・アルバム・2枚組全34曲」という超大作だった前作『ジ・アストニッシング』から大きく装いを変え、キャリア初期を思わせるソリッドなバンド感に裏打ちされた3年ぶり14枚目。ロードランナー→インサイドアウト移籍後第1弾という心機一転なリリース環境以上に今作の音像にアグレッシブな躍動感を与えているのは、ジョン・ペトルーシいわく「自分たちのルーツに戻って、もっと有機的なアルバムを作ること」への明確な意志だ。

人里離れたスタジオにこもり4ヶ月以上にわたって楽曲を生み出し研ぎ澄ませ続け、文字通りメンバー同士が寝食を共にしながらサマー・キャンプの如き一体感の中でレコーディングに取り組んで制作された今作。ペトルーシのギターとジョーダン・ルーデスのキーボードの絡みは格段にスリルと色彩感を増して響いてくるし、ジョン・マイアング&マイク・マンジーニの変則リズムはよりいっそう荘厳さと獰猛さを伴って交感神経をまさぐってくる。

そして、“アンテザード〜”にしても“フォール・イントゥ・ザ・ライト”にしても、“アット・ウィッツ・エンド”や“ペイル・ブルー・ドット”といった長尺の大曲にしても、アクロバティックなまでに交錯する超絶プレイアビリティをロックの王宮の如き強靭なドラマ性へと編み上げてみせるジェイムズ・ラブリエの歌が――バンド史上最も雄大なスケール感と悲壮なまでの切実さを湛えたメロディと歌声が、そこには確かに鳴り渡っている。

今作のプロデュースを務めたペトルーシが目標として掲げていたのは「今まで作ってきた中で最高のサウンドを持つドリーム・シアターのアルバム」。楽曲/アレンジ/演奏のみならずミックスに至るまで死角なく磨き上げられた今作は同時に、今年デビュー30周年を迎える彼ら自身を改めて21世紀モダン・ロックの最前線へと押し上げるであろう破格の存在感をも備えている。そんな名盤であることは間違いない。 (高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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ドリーム・シアター ディスタンス・オーヴァー・タイム(リミテッド・エディション)<完全生産限定盤> - 『rockin'on』2019年3月号『rockin'on』2019年3月号
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