ジャンルレスを掲げるロックバンドが切り開く景色とは?

ラウド・ロックのエッジ感やエレクトロコアの鮮烈さも備えながら、ロック・リスナー以外も捉えて離さないポップ感とエモーショナルな訴求力。多彩なロックのジャンルの中からありったけのロマンとポジティヴィティの欠片を拾い集めて結晶させたような、圧巻のプレイアビリティと爆発力……2013年の結成からわずか1年あまりという5人組・Fo'xTailsが鳴らす音楽にはそんな魅力が凝縮されている。これまでリリースした音源といえばライヴ会場限定販売ミニアルバム『VenerY』(2013年11月)&『UnleasH』(2014年4月)の2作のみというニューカマーながら、人気アニメ『黒子のバスケ』第3期エンディング主題歌に大抜擢されたことも納得の、一聴した瞬間に視界がバキッと冴え渡るような輝度と強度が、彼らのサウンドは確かに内包している。目映いロックの新星はどのように生まれ、どこへ向かおうとしているのか? takao(Vo)・鳴風(G)・坂本尭之(B)・峻洋(Dr)の4人にじっくり話を訊いてみた。

インタヴュー:高橋智樹 撮影(インタヴューショット):塚原彩弓

全員が対等にアイデアを出してぶつかり合う、ヒーローのカリスマ性で成り立つものよりも、化学反応起こしまくりのバンドをやりたかった

―― 結成からまだ1年ちょっとで、テクニックとポップ感のギリギリのバランスを、ここまで作り上げてるっていうことにまずびっくりするんですけど。当初から「こういう音楽をやろう」っていうヴィジョンは明確にあったんですか?

takao(Vo) 結成した当時は「こういう方向性の音楽をやろう」っていうのをあえて掲げてなくて。自分たちが持っているものを、リハとかに持ち寄って、曲を歌ってみたら、自然と俺らになった、というか。方向性を話し合わなくても、自然と今の音楽スタイルになっていった感じですね。

―― 結成の旗振り役は誰だったんですか?

坂本尭之(B) 僕ですね。音楽性を追求するっていうよりは、「このメンバーと」っていうほうがでかかったというか。もともと僕とテラと峻洋は違うバンドをやっていたんですけど、そのバンドが解散して。自分たちが音楽人としてどう生きていくか?って考えた時に、「もう一度バンドで挑戦したい」と思って、新しいバンドをやりたいと思った時に挙がったのがこのメンバー(鳴風&takao)で。鳴風くんは峻洋の先輩にあたる人で――前のバンドには峻洋はあとからドラムで加入したんですけど、峻洋を紹介してくれて、よく対バンさせてもらって。でも、僕とテラはもっと以前、10年ぐらい前から、鳴風くんのことをいろんな雑誌とかDVDで一方的に知っていて、CDも買ったりしていたので。峻洋の加入をきっかけで知り合えて、対バンできて、お話できて、しかも良いやつで、音楽の話も合って。一番リスペクトするギタリストなので、「一緒にやりたい!」っていう気持ちが強かったんですね。で、takaoくんは……僕と峻洋とで「一緒にやりたいヴォーカリスト像」っていうのを話してたんですね。自分の気持ちを持っていて、伝えたいメッセージを持っていて、何よりカッコよくて、まとってるオーラがあって――って思い描く人の中で、峻洋が動画を見せてくれて。峻洋の学校の後輩にあたるんですけど、「超カッコいいのいるんだよぉ」って。

峻洋(Dr) ……真似してんの?(笑)。

坂本 うん(笑)。で、そこからお話させてもらって――すごくアツい人で、本当に深い人で。それで惚れて、一緒にやりたい!ってふたりに懇願しましたね。僕たちが今後音楽をやる上で、「最後のバンド」というか、君たちと一緒にやって形を残す以外のことは考えられない、っていうことを、とてもしつこくしつこく言いまして。それで結成になりましたね。

―― それぞれの音楽的なバックグラウンドももちろんあるだろうけど、それよりもメンバーのパーソナリティを考えた上で「このバンドしかいない」と?

坂本 そうですね。

―― それで、ここまでバキバキのプレイヤー5人が超合金合体するってなかなかないですよね。

全員 ははははは!

坂本 最初にバンドをやる時に、「リーダーをあえて置かないバンド」をしたいというか、メンバー全員が全員、対等にアイデアを出し合って、意見を言い合って、音をぶつけ合って、そこから生まれる何かを大事にしたい、と思って。ヒーローのカリスマ性で成り立ってるバンドもいらっしゃいますけど、僕たちがやりたかったのはそういうものよりも、それこそ化学反応起こしまくりのバンドだったので。「超合金合体」はすごく嬉しい言葉ですね。

takao 経験もキャリアも育ちも全然違うメンバーなんで……僕は最初、このバンドやる気なくて、断ってたんですよ、ずっと。「音を出して、一緒にやってみて、ダメだったらいいから」って言われて「じゃあやるよ」って一回目の音を合わせた時に、「あ、これやりたかったやつだわ」って気づけたというか。みんな全然考え方とかバラバラなんですけど、音を出したら見てる方向が一緒なんですよね。そこにすごく魅力を感じましたね。単に俺が経験が浅すぎて、みんなが上手かったからそう思ったのかもしれないですけど(笑)。でもやっぱり、安心して歌えるし。そこがヴォーカルとして一番求めてたところだったので、よかったですね。

―― 詞はtakaoさんが書いて、曲は鳴風さん?

坂本 今回の曲は全部鳴風くんが書いたんですけど、基本的には竿隊(ギター&ベース)が曲を持ち寄って、そこからメンバー・コンペをやる感じですね。

―― いろんなジャンルの邦楽ロックのエッセンスが垣間見えるし、ルーツもそれぞれ違うんじゃないかと思うんですけど?

坂本 そうですね。「自分にないところのカッコよさ」に、メンバーそれぞれ惚れてやってるというか。だから、同調はあえて求めない、っていうのが良さだったりするので。そこが武器だし、Fo'xTailsは音楽性とかジャンルとかをあえて決めていなくて。なので、どこまででも、どこへでも行ける――Fo'xTailsがジャンルになる、っていうのを目標にしてますね。

いろんな曲があるけど、どんな歌でもtakaoが歌えばFo’x Tailsになる

―― 1stミニアルバム『Venery』(2013年)の時はもっとエレクトロコアっぽい感じを前面に出してましたし、そういう要素もバンド・サウンドの肉体性の中に取り込みつつ、だんだんソリッドなロックとしての強さが出てきた感じがしますけど、別にそれは「◯◯から□□へ向かう変化」っていうベクトルを持つものじゃないし。今回の『GLITTER DAYS』も、“GLITTER DAYS”のアグレッシヴなサウンドがある一方で、“花びら”みたいな王道歌モノがあったりして。いろんなところに手を伸ばせるポテンシャルを持ってる人たちだなあと改めて思ったんですが。

坂本 それは全部、もともとメンバーが持ってたものというか。メンバーそれぞれ違う界隈でやってたので、それが良さになっている感じですね。

―― 5人が5人、お互いがお互いの引き出しを開け合ってるみたいな感覚が、もしかしたら日々あるのかもしれないですね。

坂本 日々あります(笑)。

鳴風(G) 性格がみんなバラバラなんです(笑)。考え方ひとつ見ても、みんな違う方向を向いてたりして、「あ、そっちね」みたいなのがちょいちょいあって。自分じゃ届かない部分を考えてたりする人もいるので。「なるほど!」みたいなのは日々ありますね。

坂本 それが音楽にも出てたりするし。

鳴風 みんな、否定が少ない……かな?

坂本 うん、みんなそう。それがあったとしても――恋人でもそうですけど、お互い違うところがあって、そこを楽しいと思えるかどうかってことが、人付き合いって大事なのかな、っていうところを、それぞれの畑で経験してきて。結果、今この5人が集まれたので。各々が持ってる考え方とかバックグラウンドとか、「今できること」を大事にして、それを100%出せる環境づくりを各々が考えてやってるから。本当に理想的なバランスでできてますね。メンバーはライバルだし、楽器のパートも違うし、役割も違うけど、感銘を受けるし。

鳴風 なんか……メンバーに「良い」って言われるのがすごい嬉しいんですよね(笑)。

峻洋 (笑)それはある!

坂本 「認めてもらいたい」じゃないけど、そのために切磋琢磨してたら結果、今の形になったよね。

―― ダメ出しし合う関係性じゃなくて、「これみんな喜ぶんじゃないか?」「こんなフレーズ入ってたら『おおっ!』ってなるんじゃないか?」みたいな?

坂本 はい(笑)。バンド内でダメ出しをしちゃってた時期もあったんですけど。最初の半年ぐらいまでは、結構ダメ出しの連続で、ケンカもいっぱいしたし。「そうじゃないでしょ」っていう。「僕が今まで一緒にやってたプレイヤーはそうじゃなくて、こうきたから」っていうのを求めてたりしたんですけど、それじゃ違うなって。「じゃあなんで一緒にやってんの?」っていうことに気づいて。タイム感の取り方も呼吸の場所もみんな違うんですけど、それを否定し合ったり、無理矢理同じにするんだったら、全部のパートをひとりでやったほうが望ましいものが作れるじゃないですか。じゃなくて、5人でやってるんだから。だったら、それこそ「峻洋は『見せる』ドラム、派手なドラムをやって、ひたすら暴れてくれ。その接着剤を僕がするから」みたいな会話を、常にみんなしながらやってますね。

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