4人が見つけたバンドの「土台」とは?

KNOCK OUT MONKEYが昨年2月にリリースした1stアルバム『INPUT ∝ OUTPUT』は、それこそ「PUNKSPRING」「Ozzfest Japan」やゼブラヘッドのジャパン・ツアー・サポートなどで洋楽ファンも揺さぶってきたアグレッシヴなサウンドを、日本語の「歌」の訴求力をブーストさせる最強の武器として結晶させた作品だった。が、『Wonderful Life』『Greed』『How long?』のシングル3作を挟んで、前作から約11ヶ月のスパンで届いた2ndアルバム『Mr.Foundation』は一転、4人の野性を最大限に解き放ち炸裂させた結果、ソリッド&ハード・エッジな“RIOT”からミクスチャー・ロック“Take you”、激走スラッシュ・ナンバー“Our World”、アコギをフィーチャーしたバラード“街”など幅広い楽曲のひとつひとつからロックのタフネスがあふれ出す快盤に仕上がっている。「洋楽志向」は強く持ちつつ「海外志向」は皆無、という独特のスタンスで「日本発のラウド・ロック」をリアルに体現し続ける「神戸の暴れ猿」ことKNOCK OUT MONKEYが、今作を通して発見した自らの「Foundation=土台」とは一体何か。初の新木場STUDIO COASTワンマンを含む全国ツアー「TOUR 2015 "Mr.Foundation"」を目前に控えた4人とともに、今作の核心に迫ってみた。

インタヴュー:高橋智樹 撮影:石井彩子
ヘアメイク:五十嵐 将寿(LUCK HAIR) スタイリスト:長谷川 渉

前回は頭を使いながら作ってみたいっていうのがあったので、今回は一度そういうのを度外視して、動物的に、「せーの」で4人で入っていくっていう風にやりたかった

―― 2014年の2月にアルバム『INPUT ∝ OUTPUT』が出て、4月からツアーを回って、夏フェスもイベントもたくさん出て……1年足らずの間によくシングル3枚とアルバムを作れましたよね。

w-shun(Vo・G) あんまり飛ばした実感はないんですけどね(笑)。前のアルバムができてから結構、やりたいことのアイデアが急激にポーンと出てきたんで。それを一個一個具現化していったら、「あ、アルバムになった!」みたいな感じだったので。あまり根詰めてやった感じはなかったんですけど。

―― 『INPUT ∝ OUTPUT』を完成させてわりとすぐ、新しくトライすべきことが見えてきた?

w-shun そうですね。前回のアルバムができあがってすぐ、リリースをする全然前に、次の合宿に入って。前回のアルバムは結構、理論的にも根詰めてやったりとか、頭を使って作ってみたい、っていうのがあったので。今回の作品に関しては、一度そういうのを度外視して、動物的にやりたいなって。何も考えずに、「せーの」で4人で入っていって曲を作っていく、っていうふうにやりたかったので。それが前回とは真逆だったので、だから逆に煮詰まらずに、スムーズに行けたのかな、とは思うんですけどね。

―― 『INPUT ∝ OUTPUT』は、4人それぞれのサウンドのキャラクターを、w-shunさんの歌をフィーチャーするためにどう活かすか?という視点でものすごく考えて作られた作品でしたけど。今回は、歌はもちろん際立ってるんですけど、音自体がもっとエモーショナルというか、内側から湧き出てきてる感じがありますよね。

w-shun 前回の制作が終わって、「もっと楽器隊をフィーチャーしてもいいな」って思ったんで。単純にリフから始まるものであったりとか、ギター・キッズが聴いたら「このリフをコピーしたい!」とか、ベース・プレイヤーだったら「このスラップを真似したい!」、ドラマーだったら「このフィルを真似したい!」とか……プレイヤー的な部分でのテクニックを、もっともっとぐいぐい出した上で、ヴォーカルも好き勝手やってる、っていう感じが、より「らしい」なと思ったので。そこに取り組みたい、っていうところからのスタートでしたね。いかに「考えてない感」を出すかっていう(笑)。

―― なるほど(笑)。

w-shun 考えてないんだけども、前回細かな部分で吸収できたものが各々あったので――それについてはこう、メンバー同士で言葉を交わして言い合うっていうことはあまりないんですけど、でも絶対吸収してるものがあるなと思ったので。そこは敢えて信用した上で曲を作ることによって、意外と今回は「ここどうしようか?」っていう話になる前に「こうしていこうよ」とか「こうしたほうがいいんじゃないの?」っていうアイデアが出てきたので。それは確実に、前回の経験が基になって活きてる証だと思うんで。プロデューサーもありきで曲を作ってはいくんですけど、よりセルフ・プロデュース感が出てきたというか、自分たちの見せ方とか、楽器陣の得意なところとかが、より見えてきてるんではないかなと思いますね。

―― お互いに「こんなポテンシャルを持ってたんだ!」っていうのを引き出し合って楽しんでるような感覚がありますよね、今回のアルバムは特に。

w-shun そうですね……メンバーが苦でなければ(笑)。

ナオミチ(Dr) (笑)。今回に関しては本当に――何も考えてないわけではないですけど、自然と自分の持ってたもの、得意なものを出せたというか。でも、フィルを入れすぎたりとか、メロの邪魔をしたりっていうわけではなくて、駆け引きというか、そういうものがしっかりできたなっていうのはありますね。得意な部分を出したことで、自信もつきますし。次の作品にもつながっていけるのかなって。

―― “Wonderful Life”のリズムのジェットコースター感とかすごいですしね。ミクスチャーからラテンっぽいダンス・ビートになって、そこからヘドバン系のヘヴィなパートに流れ込むっていう。

ナオミチ あれは今でもまだ大変です(笑)。ちゃんと各セクションで、みんなでしっかり合わせないと成り立たない曲なんで。一箇所が崩れると、もう全部流れがフニャッとしてしまうっていう。面白いですよね。よくこんなん作ったなって。

亜太(B) 誰から目線や(笑)。でもまあ、シンプルに「これやったらカッコいいんじゃね?」っていうだけですね。ドラムがフレーズを持ってきたら、自然と「いいね!」って。で、ギターがテーマ的なリフを弾いた時に「いいね!」。で、「もっとよくなりそうだね!」「やってみよう!」ってやってみて……「よくないね!」って(笑)。頭で考えちゃダメだね、最初の本能的なやつがいいね、っていう成り立ちで。本人たちが最初に「これいいんじゃない?」「俺こんなのやりたい」っていうのが、自然とハマったっていうのがすごく印象的ですね。だからこそ、ナチュラルなテンション感で挑めたから、のびのびしてるし。振り幅がこんだけ広がっても、全員が柔軟にそこに対応できたと思うんですよね。

w-shun 今回に関しては、各々の武器を持ち寄ってる分、「うかうかしてると、他のパートに喰われる!」っていう感覚があったので。自分も得意技で挑まないと!とか、「この曲に関しては、他のどのパートにもフォーカスがあたらないぐらい自分が行くんだ!」とか、そういうのがすごくありましたね。「前回やったらそこ、絶対音数減らしてたやん!」っていうところに無理矢理ねじ込んでみたりとか……意図してないところでの、メンバー同士のせめぎ合いというか、テクニックの出し合いとかが逆に心地好い感じが、僕はしてたので。その中で、歌が負けないようにどれだけ力を注ぎ込めるか、っていう部分もあったりしたので。そういう部分で、前回とはまた違う歌の表現ができたかな、と思うんですよね。それがよかったのかなって。

dEnkA(G) まあ、曲を作る時に、1曲1曲テーマがわかりやすかったので、ひとつの曲に向かってみんなで集中しやすかったし、パワーのあるフレーズを作りやすかったというか。骨のある、効果的なフレーズが浮かびやすかったので。前のアルバムだと装飾的な、ちょっと考えたフレーズで埋めてみる、っていうのが多かったんですけど、今回はフレーズに関しても、真ん中から作るということができたのが一番の強味というか。音的にも、着飾らなくてもしっかりしている楽曲が並んだので。振り幅は大きいけど、ちゃんと的を得ているフレーズができたなって。それがこのアルバムの強味だなあと。

さらけ出すのって結構怖いことだと思うんですよね。もしかしたらボコボコにされるかもしれんし。でも、けちょんけちょんにされる覚悟で全部さらけ出しながら進んでいったほうが受け皿は広くなるっていう感覚で音楽をやってる

―― なるほどね。パワフルなフレーズはもちろんですけど、“MOON”“街”っていうバラード・ナンバーの並びも含めて、「KNOCK OUT MONKEYはこういうバンドだから、こういう見せ方をしよう」じゃなくて、自分たちから湧き出てくるものに対してリミッターを外した結果、振り幅の大きい楽曲の数々が、自然とKNOCK OUT MONKEY像を作っていく、っていうサイクルができてるのがいいですよね。

w-shun 何かに括ってしまうとか、ジャンル的に絞ってしまうっていうのが、あんまり得意ではなかったりするので。聴いてくれる人にしてみれば、「え、じゃあ結局KNOCK OUT MONKEYって何なの? どれがいいの?」っていう感じになる可能性もなくはないと思うんですけど。それも踏まえて僕らだと思うので。曲順に関しても、びっくり箱じゃないですけど、“街”から“Our World”へ急に展開を変えてみたり、そういう「へっ?」っていうところに面白味を感じるタイプなので。やってる音楽性も、何か自分たちで壁一枚張ってしまうぐらいだったら、その壁すら全部取ってしまって、全部さらけ出したほうが、やる側としてはすごくすっきりするなあって思うので。

―― アルバムの最後にも《垣根ない世界へ 目を見据え quest for the road》(“Eyes”)っていうフレーズがありますしね。

w-shun そうですね。さらけ出すのって、結構怖いことだと思うんですよね、自分の内側も外側も全部出すのって。もしかしたらボコボコにされるかもしれんし。でも、わりとさらけ出してボコボコにされながらも這い上がってきたタイプなので。その経験があったからこそ、たとえばどんなハプニングがあったとしても、冷静に対処できるというか。それを守りながら「怖い怖い」って言いながら動いていくと、一個何かあった時にすべて止まってしまうので、そっちのほうが僕は怖かったりするので。だったらもう、けちょんけちょんにされる覚悟で全部さらけ出して進んでいったほうが、自分たちの受け皿も広くなるし。そういう感覚で音楽をやってるつもりではあるんですよね。

―― 特に“RIOT”とか、《Always, no brain》(“?”)とか、さらけ出してる感覚は強いですよね。

w-shun ネガティヴというか、怒りの部分って、あんまり今までフォーカスを当てなかったっていうのもあるんですけど……できれば光のほうに進んでいきたい、っていうタイプなので。でも、今回に関しては、自分のネガティヴな部分ですらさらけ出すことのほうが、もしかしたら光により向かっていきやすいのかもしれないというか。より自分の言いたい本音の部分が、ダイレクトに伝わりやすいんじゃないかなと思って。たとえば弱っちい部分であったり、性格的によくない部分を見せることって、アーティストにとってどうなん?って思うところもあったんですけど、それも含めて自分だと思うので。それを言うことによって、またけちょんけちょんにされて、そこから這い上がれる、っていう感覚でやれたらいいのかなと思いますね。

dEnkA なんか、前のアルバムを経てから、やりたいことが個々なりにすごくあったんだろうな、とは思いましたね。「次は俺はこうしたい」っていう、メンバー同士では言ってないような個人目標的なものが。僕は僕なりにありましたし。そういう意味では、全員がアグレッシヴになったんじゃないかなと思いますね。

ナオミチ ハングリーではあるよね。

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