ポルノグラフィティ 王道の両A面シングル、その全てを語る(2)
お互い違うものを作ろうっていうよりは、自分のスタイルを追求しているっていう意識です
――改めて、岡野さんと新藤さんという、ふたりの強力なソングライターがいるっていうのがポルノの大きな強みだと思うんですが。今回で言えば“LiAR”は新藤さんの物語性のある楽曲、“真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ”は岡野さんのかなりパーソナルな楽曲と、それぞれ作る楽曲の個性が違いますよね。そういう棲み分けみたいなものって意識していますか?
岡野 棲み分けようねって言ったことは一度もないんですけど、なんとなくそうなってますね。
新藤 歌詞に関してはそうかもしれないね。お互い違うものを作ろうっていうよりは、自分のスタイルを追求しているっていう意識ですけどね。
岡野 対比として考えると、晴一はシングルを作るときに、すごく作家的な作り方ができてると思うんです。僕はそういう作家的な作り方ではなくて、サウンドに引っ張られながら歌詞を書いているところはありますね。どっちがいい、悪いじゃないですけど。だからいつの間にか棲み分けられてるんだと思います。
――さっきも話に出た“オー!リバル”とか、アルバム曲の“Ohhh!!! HANABI”なんかは、作曲が岡野さんで、作詞が新藤さんですよね。逆に、こういう共作モードになるのはどういう時なんですか?
岡野 ああ、そうですよね。さっきと言ってることが矛盾するかもしれないですけど、この曲たちは作家モードで作ったと思います。だから歌詞も晴一に任せたんだろうし。今、そう質問されて気づきました(笑)。
――新藤さんは、作詞だけを任される時っていうのは、どんな感じなんですか?
新藤 作詞だけを任される場合は……言うなら、劇の脚本ができる前に、舞台セットができている状態。セットがきれいにできているから、その中で無理なく役者が動けるように脚本を書いていくっていう感じです。本当はまず劇があって、セットが作られるはずなんだけど、あたかもこっちが先だったかのように言葉を選んでいきます。だから、自分がその時に思ってることだとか、そういうのは全然関係ないんですよね。だってそこにもうセットがあるんだから。例えばシェイクスピアみたいなセットにコンビニの話は書けないですよね。曲とメロディがどんな言葉を欲してるか、それだけを考えて作ります。
たくさんの人に聴いてもらえないような曲だったら、じゃあ出さなきゃいいって思う
――岡野さんが作家モードになる時っていうのはどんな時ですか?
岡野 僕らは、シングルでヒット作品を出して勢いづくチームだし、ヒットがあって、ちゃんと地盤が固まるというか、そういうやり方をしてきたんですよね。なのでシングルに関しては、あまり自分の心情を吐露することだけに重きをおくんじゃなくて、多くの人にポルノグラフィティらしさを求められることが多いし、自分たちもそうすべきだと思っているんです。そういうことを念頭に置いた時に、自分の頭の中は作家モードに変わるんじゃないかと思いますけどね。
――「ヒットさせたい」「もっと聴いてもらいたい」っていう思いが曲作りにも反映されている?
岡野 ポルノグラフィティが世に知られるきっかけになった曲は、プロデューサーさんが書いた曲で、そこに対するコンプレックスが僕にはあったんですよね。そのカウンターで違うタイプの曲を書こうとか、そんなことを思ったこともあったんですけど、今こうして音楽活動ができているということは、世の中が、「ポルノってこうなんだな」と求めてるものがあるということだと思うので。そこは裏切ることなく、作品を待っていてくれる人が納得するようなものを作らなきゃいけないなって――ある意味、強迫観念に近いものがあるんですよ。ヒット曲って、誰が聴いても、どの世代が聴いても「いいよね」って言ってもらえる間口が広いものだと思うし。だから、シングルに関しては、そういうものを作ろうと考えてます。
新藤 シングルっていうアイテム自体がそういう性格のものだしね。たくさんの人に聴いてもらえないような曲だったら、じゃあ出さなきゃいいって思いますし。ポルノってもともとポップだと思うんですけど、昔アルバムで本当に「自由に作っていいよ」って言われた時も、別にすごく暗い曲が集まるわけでもなく、突然フォーキーになったりブルースになったりするでもなく、出てくるものはやっぱりポップスだったり、ポピュラーなロックなんですよね。だから、ポピュラーなものを作ろうとして作っているというよりは、勝手に出てくるのがそういうものなんです。
自分たちも恐いんだと思う、世の中に僕らの名前がないっていうのが
――それにしても、デビューして17〜18年で、シングルがすでに44枚目となると、だいたい1年に3枚リリースのペースですよね。途中で休みたいと思ったりしませんでしたか?
岡野 お休みさせてくれないんですよ(笑)。まあ、自分たちも恐いんだと思います、世の中に僕らの名前がないっていうのが。なんでしょうね、若い頃は「売れる」っていう言葉に対してアンチテーゼを持っていましたけど、でもよく考えればそういう曲は大好きだし、うーん、そういう山あり谷ありで、結局今までやり続けてるというか(笑)。
――最後に。ポルノグラフィティをこうして長く続けてきて、ソングライターとして、お互いのことをどんなふうにお思いですか?
新藤 うーん。作家として評価するのって難しいですよね。いろんな曲を書いてるし、いろんなタイプの曲があるから、どう評価するかっていうのはすごい難しい。あ、評価してないっていう話じゃないですよ(笑)。彼はボーカリストだから、本当は歌だけで持っていくような歌詞とか曲も書けると思うんだけど、その中でもちゃんとメロがあり、起伏がある曲を作ってくるので、そういう意味ではシンガーソングライターというよりは、バンドマンとしての作曲家であり、担当パートがボーカルというスタイルなのかなって思います。
岡野 晴一は変わってないと思うんですよね、昔から。インディーズ時代に作ってた曲もしっかりポップだったし、メロディがしっかり日本的で、ちゃんとJ-POPシーンの中でも届くようなメロディの書き方をするっていうのは一貫してる。その精度が上がってきているのも感じますね、めっちゃ上から目線ですけど(笑)。
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