9月3日にリリースされた2ndミニアルバム『夕方ヘアースタイル』を引っさげ、9月9日・名古屋、9月10日・大阪で行われたさよなら、また今度ねの対バン自主企画「先輩あざーす!」。その開催を記念して、名古屋・大阪両公演に出演した先輩・忘れらんねえよの柴田隆浩(Vo・G)とさよ今メンバーによる座談会が実現した。名古屋公演終了後、お互いの魅力、音楽にかける思い、バンドをやっていく上での悩みなどなど、先輩/後輩の垣根を越えて、徹底的に語り明かした!

(司会=小川智宏)

柴田「対バン相手が好きなバンドだと、明らかに自分たちのライヴが良くなるんですよ。なんか魔法がかかるんです」

菅原「いつもどおりの忘れらんねえよさんを観て、ああ俺らもいつもどおりやっていいんだなって安心しました」

──まずは菅原くんにこの「先輩あざーす!」という企画について説明してもらいましょう。

菅原達也(Vo)「もう単純に、先輩バンドさんの胸をお借りして、なおかつ全然僕らより知名度のあるバンドさんなので、『あざーす!』という心をこめ」

柴田隆浩(Vo・G)「なるほど。ある種僕らの『ツレ伝』と一緒ですね」

──そうそう、忘れらんねえよは今年ずっと『ツレ伝』という対バンのツアーをやってて。

柴田「はい。ツレって言ってますけど、基本的には『あざーす!』ですよ(笑)。もう、俺らがコバンザメみたいに、人気バンドに『ねえ、仲間に入れてよ』」

菅原「はははは!」

柴田「『媚び伝』ですよ、『媚び伝』」

──何言ってんだ(笑)。でも、やっぱり対バンってなると、ワンマンとは違いますか、気持ちの上で。

柴田「絶対違う。対バン相手が好きなバンドだったりとか、尊敬してるバンドだったりすると、明らかに自分たちのライヴが良くなるんですよね。それって説明はできるんですよ、楽屋がいい雰囲気だからみんなリラックスしていい演奏ができるとか。でも、そういうことじゃなくて。なんか魔法がかかるんですよ」

菅原「僕も、もう今日は完全にindigo la Endさんと忘れらんねえよさんの空気を感じて。僕、今日はおとなしめに、丁寧に演奏しようという気持ちでいたんですけど、忘れらんねえよさんを観て、ああいつもどおりでいいんだな、って思いました」

柴田「今日の酒田(耕慈/忘れらんねえよのドラマー)の演奏、ひどかったからね!」

菅原「そういう意味じゃなくて!(笑)。いつもどおりの忘れらんねえよさんを観て、ああ俺らもいつもどおりやっていいんだなって安心しましたね」

柴田「それこそ、さっき僕が言った『いい対バン』ってことなんじゃないかなあ」

菅原「俺、忘れらんねえよ、ほんとに大好きなんです」

佐伯香織(B)「だからもう、こうやって一緒にやるとか信じられないことじゃないですか(笑)」

柴田「いやいやいや、そんな! 俺もう尻尾振って来ます、ほんとに」

──忘れらんねえよのどこが好きなんですか?

柴田「顔以外でいいっすよ?(笑)」

菅原「(笑)。単純に曲が好きだし、やっぱり歌詞が好きだし。歌詞の爆発力というか、“CからはじまるABC”の、爆音でチャットモンチーを聴いて涙がぼろぼろこぼれたっていうところで、俺も涙がぼろぼろこぼれて」

柴田「おおー、ヤベえ! 嬉しかぁ! でもね、俺、『先輩あざーす!』ってタイトル、いいタイトルだなあって思ったんですよ。さよ今っぽいなあと思ったんですけど。でも先輩後輩って、バンドやっててあんまりないというか。みんなライバルだしみんな仲間だし、って感じなんですよ。だから僕ら、今日もそういうつもりでやらせてもらった。さよ今のライヴ観てて、まず、『曲、いいなあ!』って思ったんですよ。全曲良くて!」

佐伯「うわぁ……」

菅原「ありがとうございます!」

柴田「弾き語りでも全然成立するいい曲を連発してんなと思って。だから『ヤベぇなこれ!』って。ドラムの酒田と『俺らも早く新曲やりてえな』って話してた。自分たちが先輩だなんて思ってないっすよ。ほんとにライバルを観たって感じです」

菅原「嬉しい。超畏れ多いですほんとに」

佐伯「あざーっす!(笑)」

──渋谷くんは今日のライヴはどうでしたか?

渋谷悠(Dr)「今日はほんとに、1バンド目に忘れらんねえよさんを観て、めちゃめちゃ楽しかったんで、ほんとに今日は僕も楽しもうと思って。その気持ちだけでやりました。普段はすごい緊張して、自分でもわけわかんなくなっちゃうんですけど」

柴田「あんなん(カエル)着けてんのに?」

佐伯「ははははは」

渋谷「(笑)カエルかぶってんのに、自分でもわけわかんなくなっちゃうんですけど。今日はでも、すごい落ち着いてライヴができて、すごい良かったですよ。ほんっとに楽しみました」

柴田「でも、あのカエル、今日、完全無視されてたね(笑)」

菅原「普段、ほんとに触れないんで」

柴田「酒田のベストと一緒ですね」

渋谷「いつやめるかっていうのをたまに相談して(笑)、酒田さんと。『やめるタイミングないよねえ』『確かにそうですねえ』って」

──ははははは! 菊地くん、どうでした? 今日は。

菊地椋介(G)「忘れらんねえよさんが盛り上がってて、自分たちの番になったら俺どうしたらいいんだろうっていう、ちょっとした不安もあって。先輩方のライヴを観て緊張して、緊張した結果、水飲む時も手が震えて。ペットボトルの蓋が自分で閉められなくて(笑)」

柴田「おお、エモい!」

──いつも緊張するんですか?

菊地「いや、緊張しないです」

佐伯「全然しないよ」

菊地「本番前にマンガとか読んでるんです。で、本番だよって言われて、『あ、本番か。じゃあ行くか』」

──じゃあ、いつもとはちょっと違う空気があったのかな?

渋谷「気持ち的にたぶん、あったんだと思います」

菊地「特別なんですよね。言葉にならない特別感があって」

柴田「そうなんです! やっぱり対バンのマジックですよ。そういう時って何かが発生するんですね、ほわぁ~ん、って何かが」

菅原「なるほどぉ」

柴田「セックス!」

佐伯「ははははは」

──(笑)。さよ今はこの間、セカンドアルバム『夕方ヘアースタイル』をリリースしたばかりなんですけど。今日、新曲もやりましたが、どうでした?

菅原「こう言うのもあれですけど、とにかく、自信があったので」

柴田「MCでも言われてましたもんね」

菅原「はい。とにかく自信があったので。もう、聴かせてやろうっていう一心で。やっぱり練習量も多かったので、メンバーにも任せられたし。弾き語りという言い方はちょっと違うかもしれないですけど、なんかこう、変なんですよ、ひとりで歌ってるほうが逆に自信がありました」

柴田「あれ、合わせてるっていうよりも、みんなで『うーわっ!』ってなってる感じがあって。俺も今日、そうなれたんすよ。良くないライヴの時とかは、ドラムを聴きながら『ミスんなよ』とか思いながら、『ああ俺、ライヴやってんのに!』ってなるんですけど、今日はなかったの。ただ爆音で音楽やってて超楽しー!みたいな感じだった」

菅原「精神的にバンドやりたいっていうのはないんです。でも音楽をやるという執念はある」

柴田「“素通り”みたいな曲、誰も書かないじゃないですか。それがちゃんと歌になって抜けて聞こえてくるのがすげえなあと思う」

──この「先輩あざーす!」はさよ今にとっては初めての自主企画シリーズなわけですけど、忘れらんねえよはしょっちゅう対バンとか自主企画とかやってるイメージがありますよね。

柴田「うん。むしろワンマンが苦手なんすよ。この前クアトロでやった時は、初めて俺、ワンマンが楽しくやれたぐらいです。今まではほんともう、ワンマンがつらくて」

菅原「つらいって、どういう感じなんですか?」

柴田「たとえば、MCでギャグとか言うでしょう? みんな笑ってくれるじゃない。もう、嘘だと思っちゃうんですよね。『みんな気ぃ遣ってくれてんだ』とか」

菅原「ああ、なるほどなるほど」

柴田「何かに刃向かったり、何かにしがみつこうとしてる時のほうが、たぶんずっとそういうことやってきたから慣れてるっていうことなのかもしんない。自由にさせてもらえるとつらいの」

菅原「俺はもう、ワンマンやりたくてしょうがないんですよ。俺自分がおもしろくない人間だと思ってるから(笑)、気ぃ遣ってくれてんだとしても、笑ってくれるとほんとに嬉しいし。もうほんとに、すごい楽しいです。ワンマンがそんなにつらいっていうの、珍しいですよね」

柴田「完璧に受け入れられるってことに慣れてないからかな」

菅原「でも、完全にその態勢じゃないですか。みんなで『EXILEやれー!』とか」

柴田「あれもねえ、『ほんとはやりたくないんだろう? やむを得ずやってるだろうおまえら』とか、どっかで思ってるの(笑)。俺は少なくともガキの頃から『絶対的に認められない、クッソ! クッソ!』と思ってバンドを始めたみたいなところがあるから、どうしてもね」

──要するにバンドの原動力がなにくそ精神というか、そこからすべてがスタートしているということなんだけど。さよ今の場合は音楽をやっていく原動力というのはどういうものなの?

菅原「僕の場合だと、当時、mixiで音楽投稿サイトというのを見たら、“レット・イット・ビー”をカヴァーしてる女性のヴォーカリストがいて。いいカヴァーだなと思って聴いて。それで宅録ミュージシャンという存在を初めて知って。いっぱいいい曲もあったし、俺もこれやりたいなあと思って宅録機材を買いそろえ始めたというのが音楽のきっかけで。精神的にバンドやりたいっていうのは、基本的にはないんです。でも音楽をやるという執念はあると自覚してるんです」

──なるほどね。音楽を作るというか、曲を作るというか、そこに対して執着が。

菅原「あるつもりではいるんですけど。ただ、ものすごい人はたくさんいるんで」

柴田「俺、今日さよ今のライヴ観てかっこいいな!と思ったし、indigo la End観てて、曲いいなあ!と思ったんですよ。俺、おとつい名古屋で、STANCE PUNKS先輩とか、THE MASSMISSILE先輩とか、太陽族先輩と一緒にやって、同じこと思ったんです。『曲、いいなあ!』って。そこに上下って、たぶんないんですよ。結局どのバンドもみんないい曲作ってるよな、って最近思ってて。こうやってツアーを回ってライヴをやれるようなバンドはすべからくいい曲書いてるよなあって思います」

菅原「思いますね、確かに」

──そのポイントって、やっぱりメロディですか?

柴田「いや、言葉とメロディっすね。それで、さよ今のライヴを観ていたら、偉そうですけど、言葉が抜けて聞こえるタイミングが何回もあって。爆音で鳴ってると言葉って聴き取りづらいんだけど、ほんとにいい歌詞は抜けて聞こえるんですよね。“踏切チック”ってやっぱり抜けて聞こえてくるし。あと、『2回皿割った』みたいな歌ありますよね」

菅原「あ、あります。“素通り”って曲です」

柴田「あれも抜けて聞こえてきて、『うわ、おもしれえ!』みたいな。超いいメロディ歌ってたでしょう、Aメロの前半で。『うわあ、かっけー!』と思って」

菅原「(笑)嬉しいな、ありがとうございます」

柴田「しかもあんなん誰も書かないじゃないですか。皿2枚割ったって話をわざわざ歌うような。それがちゃんと歌になって歌詞になって抜けて聞こえてくるっていうことは、すげえなあと思って。だから言葉がすごい感じですね」

──でも、歌詞がおもしろいとはよく言われるでしょ?

菅原「いい意味ではおもしろいって言われるし、悪い意味では意味わかんないって言われるし」

柴田「だって“踏切チック”も意味よくわかんないですもんね、言われてみれば。でも、The SALOVERSっているじゃないですか」

菅原「俺大好きなんです」

柴田「そう、俺もすげえ好き。この前ようやく『ツレ伝』で一緒にやれて。その時、“ディタラトゥエンティ”って曲、あるじゃないですか。俺ずっと気になってて、古舘(佑太郎)くんに『これどういう意味なの?』って訊いたら、『わかんない』って(笑)」

菅原「かっこいい!」

柴田「そういうもんなんだね。でも完全に抜けて聞こえるし、みんな覚えてるじゃないですか。だから歌詞っておもしろいっすよね」

──忘れらんねえよの場合、歌詞はメロを作ってから?

柴田「が、多いですね。ただ、セットで出てくる時もあって。“CからはじまるABC”とかセットで出てきたんですね。最初、自分でも意味わかんねえなと思ったけど」

菅原「あ、そうだ。“CからはじまるABC”はわかんないっすね」

柴田「俺もわかんない」

菅原「YouTubeのコメントでいろんな仮説が書かれてて、どうなんだろうと思ってたんですけど」

柴田「ねえ。みんな考えすぎだよね。二日酔いの時に考えついただけなのに(笑)」

──菅原くんは歌詞、悩む?

菅原「いや。僕は歌詞が先なので」

柴田「うらやましい!」

菅原「小節が16小節とかって決められてるじゃないですか。俺、よくわかんなくて。歌詞カード見ると、Aメロがあって、3行あって、1行間隔あけて。そういうような歌詞の書き方をそのまんまやってるんですよ。そうすると小節がめちゃくちゃになっちゃって」

柴田「じゃあたとえばサビで言いたいことがAメロで洩れちゃったりとかしたりするの?」

菅原「ああ、したりもしますね。Aメロでよかったなっていう解釈はあとでするんですけど」

柴田「へえー、おもしろ! なるほどねえ。俺は歌詞書くの、一番嫌です。ほんとしんどい」

──あんなにツイッターやってるのに?

柴田「ねえ?」

佐伯「ははははは」

柴田「ツイッターは楽なんすよ。ほんとは昔もツイッター的に歌詞を書いてたんですね。“慶応ボーイになりたい”とか。今、それができなくなっちゃってて、めんどくせえなって。自分でハードルみたいなの設定しちゃってて、それが逆に邪魔くさくてテンションが上がんないっていう時が多いですね。もっとおもしろいことをとか、前に言わなかったことをとか、考えちゃって、大変」

菅原「ああ、そうなんだ」

柴田「そこと向き合うしかないですね」

菅原「先輩だなあ……」

柴田「いやいやいや。たぶんスタイルの違いです。キャリアとか上下ではなくて、スタイルの違い」

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