キヨサク(MONGOL800)、佐藤タイジ(シアターブルック)、名越由貴夫(Co/SS/gZ)、古市コータロー(THE COLLECTORS)、ウエノコウジ(the HIATUS)、武藤昭平(勝手にしやがれ)、タブゾンビ(SOIL&"PIMP"SESSIONS)、スチャダラパー、山本健太、高野勲……という超強力ラインナップが時にワイルドに、時にしなやかに繰り出す、ロックとポップの核心の音。その強者揃いのサウンドを牽引するのは、“君といつまでも”“海 その愛”など音楽史を代表する数々の名曲を送り出してきた、日本が誇るシンガーソングライターのレジェンド・加山雄三、現在78歳。加山が尊敬する「THE KING」ことエルヴィス・プレスリーと「K(加山)+ing(進行形)」にちなんで命名されたというこのバンドが、「THE King & ALL STARS」ではなくて「THE King ALL STARS」=「全員キング」という位置づけであることの理由が、メジャーデビュー盤となる新作ミニアルバム『I Simple Say』(7月22日発売)からも、以下の加山/古市/武藤/山本インタヴュー(加山は途中合流)からも伝わることと思う。

インタヴュー=高橋智樹 撮影=若田悠希

加山さんの奥行きの深さみたいなものは感じて。それで遠慮がなくなった感じはあるね。別に何やっても、「こんだけドス効いた歌を歌ってくれりゃ平気だな」っていう(笑)(古市)

──もともとは、2013年の「ARABAKI ROCK FEST.」に「加山雄三&ARABAKI YOUNG KING BAND」として出演されたのが発端ですけど、その時はこれがパーマネントなプロジェクトになるという予感はありました?

武藤昭平(Vo・Dr) 最初にお話をいただいた時は、加山さんが「フェスに出たい」っていうことで。加山さんがいつもライヴをやっているようなスタイルよりも、もっとフェス仕様のバンドを組んだらどうか?っていうアイデアの中で、我々が呼ばれたので。最初は「企画ものだろうなあ」と思ってたよね。

古市コータロー(Vo・G) まあ、そうだよね。僕は途中からなんですよね、最初の「ARABAKI」の時はいなかったし。

──でも、今回のミニアルバムを聴くと、加山さんとメンバーのみなさんがお互いのロックを引き出し合ってる図がすごく浮かんできますよね。去年のアルバム『ROCK FEST.』は「バンドやるぞ!」っていう衝動が前面に出ていたアルバムでしたけど、今回はもっと真正面からロックの名曲を作りに来ている感じがすごくあって。

古市 うん、そうそう。だから今回、ファーストアルバム的な感じもあるんじゃないですかね。

武藤 前回のアルバムで、みんな手の内がわかってきたっていうか。今回の曲出しとかでも、いい意味で容赦してないっていうか。少し前は遠慮があって、「加山さん、こういう歌は気に入ってくれるかな?」って曲を書いてたりしてたのが、「これを加山さんが歌ったら面白いだろうなあ」「これを歌ってほしい」っていうふうな気持ちで書いてるから。「こういうサウンドは加山さんに似合うかな?」っていう遠慮が、今回はもうないから。「こういう曲だったら、この音似合うし、カッコいいじゃん」っていうのが、普通に出せてる。そういう意味で、よりバンドらしくなってるなって。

──このバンドで一番若手の山本さんはもちろん、コータローさんにしても武藤さんにしても、レジェンドと言っていい方と一緒にバンドをやって影響を与え合うっていう機会は貴重だと思うんですが。

古市 そうですね。でも、結構ナチュラルだよね? 影響を受けてるっていうことで言えば、加山さんと一緒にやる前から僕は加山フリークで影響を受けてたんで、「一緒にやったから影響を受けた」っていうことではないかな。ただやっぱり、加山さんの奥行きの深さみたいなものは感じて。それで遠慮がなくなった感じはあるね。別に何やっても、「こんだけドス効いた歌を歌ってくれりゃ平気だな」っていうのはあるよね?(笑)。

武藤 前回のレコーディングでも、俺たちも曲出しをしたりして、その時に学んだことがあって。加山さんを意識しなくても、加山さんが歌ってしまったら加山さんになっちゃうっていうのもすごくわかったし。

古市 まさに。今回、昭平が作った“Dr."K"”なんて、どうなんのかな?と思ったけど、全然普通だったからね(笑)。

──確かに、“Dr."K"”は前回のアルバムでは出てこなかった曲だと思うし。お互いの理解が深まることで、投げられる球種も増えてくるし。

武藤 実際、加山さんもTHE King ALL STARSのことをすごく気に入ってくれて。加山さんのディナーショーに去年――名義は「加山雄三ディナーショー」なんだけど、それをぶっちゃけTHE King ALL STARSがバックっていうことでやらしてもらって。加山さんの持ち歌を、加山雄三ファンの人に向かって演奏する、っていうのを、うちらでレパートリーを覚えてやったんですけど。その、加山さんの書いた曲の幅の広さっていうのが……それこそ昭和歌謡的なものもあるし、エルヴィス(・プレスリー)もあるし、ジャジーなものもあるし、(フランク・)シナトラだって大好きだし。やっぱり振れ幅が広いので、俺らが「この球投げたらどうだろう?」って考えるのは、なんかお釈迦様の掌の上で踊ってる孫悟空な気分ですよ(笑)。

加山雄三がいるぞ、こんなメンバーがいるぞ、っていうところを通り越して、「曲いいでしょ?」っていうのを、この全員でできたっていう。もう次のステップ行けてるなあって(武藤)

──逆に言うと、加山さんの音楽的なレンジの広さを全開放するには、このメンバーが必要だったんだろうなっていう気はすごくしますね。

古市 うんうん。まあ、たぶん俺らより若い世代じゃあ――健太は若いけど――無理だよな(笑)。

山本健太(Key) 僕的には、加山さんのレジェンド具合と、みなさんのレジェンド具合というか、「雲の上の人」感って、そんなに変わらないんですよ。僕からしたら、みんな加山さんみたいなものなんですよ、緊張具合で言えば(笑)。

──山本さんが今30歳ぐらいでしたっけ?

山本 そうです。

古市 30ってのは若いよ。

山本 ここにいると、そんな気になります。「あ、まだ若いな」って(笑)。同年代とやってる時はそんなことはないんですけど。

──そんな強者揃いのバンドが、「ロックバンドやって楽しけりゃいいや」じゃなくて、ちゃんとロックの名曲を作りにいってるなあっていうのが、“continue”とかからも伝わってくるし。

古市 苦労したよね。

武藤 そうっすねえ。

山本 一番苦労しましたね。

──作詞がキヨサクさんとスチャダラパーの共作、作曲がキヨサクさんで。ラップのパートも含め、バンドの自己紹介的な曲にもなってるし――。

武藤 そうですね。“continue”って、まず曲がいいでしょ。さすがキヨサクだなあと思って。加山雄三がいるぞ、こんなメンバーがいるぞ、っていうところを通り越して、「曲いいでしょ?」っていうのを、この全員でできたっていう。もう次のステップ行けてるなあって、あの曲は。スチャダラパーが入ってくるとか、ひとりひとりの音色もそうだし……全員でその曲を「いい曲だよね」っていう形にしていってる感じ。「feat.加山雄三」っていうことじゃなくて、いい曲をどうやってみんなで出すか、っていうところに向かえたなあと思って。ほんといい曲だと思いますね。

──「加山さんとバンドメンバー」な感じじゃないですからね、この歌と音は。

武藤 そう。で、キヨサクに“continue”の歌詞の話を聞いて、ちょっと涙したんだけど……あれは最初、恋人との別れかな?っていうふうに思わせるけど、生まれ変わってまた会えれば、って歌ってて。「恋人と別れて、生まれ変わってまた会うって大袈裟だなあ」って思ったら、お母さんが亡くなった時にできた曲だって言ってて。で、加山さんがその話を聞いてて、そういう気持ちでこれをしっかり歌いたいんだ、っていう思い入れがすごく強くて。そういう想いも、ひとつあの曲に向かってるなあって。そういったものを、あの曲でみんなで大切にできたらなって。

──そういうパーソナルな物語も共有して鳴らしていくっていう。完全にバンドっていう共同体としての在り方ですよね。

武藤 そうですね。俺も別のバンドではバンマスやったりするけど、コータローさんとか(佐藤)タイジさんとかがいるおかげで、「ああ、いい兄貴に教わってるわ」っていう感じもすごくするし。そういうひとりひとりの、誰がどの位置にいる、っていうのが、すごくバランスいい感じに見えてるなあって。

──確かに、バンマスだらけのバンドですからね。

古市 そう。引くところは引かないとね(笑)。

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