- 1
- 2
越川「曲作りの段階でダカさんがアイデアをポンポン持ってくるんですけど、初めは正直戸惑った。『あれ、むっちゃメロディ付いてる!』みたいな」
──実際に制作の現場ではメンバー間でどういうコミュニケーションがあったんでしょう?
越川曲作りの段階でダカさんがアイデアをポンポン持ってくるんですけど、初めは正直戸惑ったっていうか。「あれ? 明るいぞ」みたいな(笑)。
日高「あれ、この人もう怒ってないぞ」みたいな(笑)。
越川「むっちゃメロディ付いてるし、ええ感じやん!」みたいな(笑)。でもそれをそのまま落とし込んで、明るい曲を明るいままやっちゃうと「これってもしかしてビートになるんじゃないか?」って。で、そのビートと似たことをするのがタブー的なところも――直接言われたことはないですけど――あったっちゃあったんです。でもアレンジをするうえで、やっぱり日高さんの声でこれを歌うっていうことはBEAT CRUSADERSじゃないですか。聴く人が聴いたら。でも「曲に対してベストなものを落とし込んでいこうよ」っていうのをギターの3人に俺は伝えた感じですけどね。「っぽいって何よ」みたいな。メロディと歌声がある、そこに沿っているものがギターだから、そこは自分たちのアイデアでいいと思ったんですよ。たとえば(菊池)篤が弾いたら篤っぽくなるし、俺が弾いたら俺っぽくなる。「それでいいじゃん」って。そうやって、楽曲に対して素直にドンとやるっていうのが今回でしたね。
日高俺も西くんもいろんな声が聞こえてくるなかで、「っぽさ」っていうのがどうでもよくなってきちゃったんですよ。最初はお互いに気遣っていた。他のメンバーに対してもそうですけど「LOCAL SOUND STYLEっぽくない、なるべく違うこと」とか。篤はFed MUSICなんで、そこは気遣わなくても絶対違うんで、気遣わなかったですけど(笑)、なるべく被らないようにしてあげるのが優しさだったし、実際にそれは正解だったと思う。で、一番の衝撃は、昨年末MY FIRST STORYとかと一緒にRADIO CRAZYに出た時、リスナーさんやお客さんの層が全然違うんですよ。下手したらビークル、(毛皮の)マリーズも知らないで、「今から音楽聴いています」みたいな学生さんが多かったんで。
──端的な話、KANA-BOONを最初に聴いて、次いきなりTHE STARBEMSを聴いている子とか(笑)。
日高そう。そういう世代のお客さんもいるんだって考えたら、「ビークルとの差別化にそこまで頑張らなくても大丈夫だろう」って思いましたよね。そこはデカかった。
──逆にそういう若いリスナーにとって、今回のアルバムのメロとかアレンジって、すごく斬新だと思いますけどね。
日高そう聴こえているといいなと思いますけどね。我々も「バンド内被り」をなるべく避けるように、前にやったパターンをなるべく覆すような構成を考えていて。おまけに進行もタイトだったんで、半分は博打でしたね。一か八かというか。それこそベースの寺尾(順平)が抜けたのがROCK IN JAPANの翌日だったんで。
──ああ、そうでしたね。
日高ひとつ「落とし前つけよう」みたいな話し合いだったんで、翌日にさっそく打ち合わせして「どうする?」って。彼ははっぴいえんど好きの横ノリ人間で、俺は逆に「還暦目指してどんどんBPM上げよう」「どんどん縦ノリ化しよう」みたいな話をしていて。ただファーストを出してからの半年間ぐらいで、そこがどんどんズレてきちゃったんで、「どうする?」って彼とも1年ぐらいかけて話し合って。一旦はちょっと別れて――これもまた生ぬるいカップルみたいなんだけど(笑)――ケンカ別れじゃないんだけど、一旦離れて冷静に客観的にTHE STARBEMSを見てみて、またやりたくなれば戻ってきてもいいっていう。そういう別れ方だったんで。で、そこから1ヶ月あるかないかのなかで13曲をREC。13ってのは俺が決めて。「パンクっぽい13、不吉な数字13で揃えよう」と(笑)。
──たとえばアルバムには“Sweet Nothing Blues”っていう曲が入っていて、これはポップの美メロなイントロからいきなりラウドな展開に持っていくっていう、いわば日高さんの十八番な技だと思うんですが、こういうところにも禁じ手を解放した感じが出ていますよね。
日高そこは前だったら「ビークルっぽくね?」でボツにしていたんでしょうけど、今は自分のなかでも自信ができたというか。「ビークルっぽい」っていうのを避けてもしゃーないんで、むしろ「ビークルだったらこうしただろうな」ぐらいのものになっちゃってもいいと。ただ演者が違うんで、結果は全然違うものになったと思いますし、そこはやっとメンバーとの信頼関係ができてきたんじゃないかと。ただ、ゴスケ(後藤裕亮)はまだ信用できないとこありますけど。メイクも含めて(笑)。一応、俺的には「ジグ・ジグ・スパトニックにしてくれ」っていう。
──あ、そういうオーダーなんですね。
越川オーダー(笑)。
日高そういうオーダーのもと、ゴスケから返ってきた答えがあれだったっていう(笑)。まあ、その差も逆におもしろがれるのは1コ余裕ができたってとこなんだなあと思いますけどね。バンド的な。前だったらちゃんと演出していたんでしょうけど。「アンガス・ヤングやるなら全身アンガス・ヤングやれ」「靴すら揃えろ」ぐらいな感じだったんでしょうけど、今は別に「フレッドペリーを着たまんまジグ・ジグでもいいんじゃない?」っていう(笑)。
──あくまでニュアンスですよね。
日高そう。ニュアンスだけ伝えれば、あとはリスナーが好きに解釈してくれるだろうってのは、自信の裏返しなんだろうなって思いますしね。
──またこのアルバムで随所に聴くことができる70's的、80's的なオマージュも、脈々と受け継がれているロックの系譜を感じさせてくれますよ。
日高我々がやれる最大の武器はそこだと思うんで。たぶん俺も西くんもどっちかっていうとオールドスクール寄りなリスナーだし。90年代ぐらいが真ん中だとすると、そこから前の音楽をものすごく吸収しているんで。でも西くんは80'sがごそっと抜けていたりとか、そういうお互いの差がうまいこと埋まった感じはしますよね。俺と他のメンバーとの共通点を1コ1コ検証していった結果、こうなるみたいな。
日高「ニューロティカとも楽しく話せるし、MY FIRST STORYとも楽しく話せるっていうのが俺の1コのテーマなんで」
──ちなみに昨今のラウドシーンは、いい意味でも悪い意味でも、「歌モノ化」が進んできていると思うんですよね。そういった動きと今回のアルバムがクロスする地点みたいなものっていうのはあるんですか?
日高スクリーモが出てから若者たちが――「若者たちが」っていう言い方もほんとおじさんですけど(笑)――一気に多様化しちゃったんですよね。マイケミ聴くのとブリング・ミー・ザ・ホライズン聴くリスナーは、本来だと被っていなかったけど、今はすごい被っちゃうじゃないですか。で、俺もリスナーとしてはどっちも好きだし、聴けちゃうタイプなんで、それをおじさんなりのフィルターを通すとこうなるんだっていうのを見せないと、とは思いましたね。それをやらないと、どっちみち先には進めないなと思ったんで。どっちかに寄せるのはそんなに難しくないんでしょうけど、どっちも昇華して尚且つ、俺節を生かすっていうのは難しいですよね。
──めちゃくちゃ、アクロバティックですよね(笑)。
越川ははははははは。
日高尚且つ、60'sっぽい音楽も好きだから、80'sとか。そういうエッセンスも少しずつ入れてくと、自分でもどうなるかわからないけど、やってみるとこうなると、ひとついい試金石になったかなと。そこがないと、このバンドを自分がやっている意味がないというか。(ニュー)ロティカとも楽しく話せるし、MY FIRST STORYとも楽しく話せるっていうのが俺の1コのテーマなんで。
──ははは。すごいな(笑)。
日高その2バンドは対バンする必要ないんですけど、自分たちはどっちとも対バンしたいなと思います。たぶん、あっちゃん(イノウエアツシ)もマイファスもお互い「対バンしましょうよ」って言われたら嫌がらないと思うんですよね。それは単純にバンドマンとしてのノリというか、友情というか、そこの「選ばない感」は今のほうが自由なんで。たぶん00年代のほうが自由じゃなかった気がする。「村」って言い方はよくないですけど、お互いをけん制し合うバンド界隈みたいなのはあったかな。たぶん西くんはマリーズを始めた頃がそうだろうし、先輩だから言いにくいだろうけど(笑)、「キンブラに負けないライヴせなあかん」みたいな緊張感?
越川ありました。 「全然違う畑のバンドとはやらんぞ」とか。メロコアのバンドとやることなんかなかったし。でも今のこのニュアンスだと「全然アリじゃん」って普通に思える。そこは日高さんが今言ってるのを聞いて自分でも納得しましたけど。
日高今のキッズたちや今のバンドのほうが全然自由なんですよね。「いいっすよ」ってふたつ返事でやる感じ。そのフットワークの軽さは、逆に自分たちが若い頃にもあったし。だんだんバンドが固まっていくなかで、どんどんギスギスしたり緊張感が高まっていく。そのいい例が、ザ50回転ズ(笑)。
──ははは! 実名出しちゃった(笑)。
日高別に悪口じゃないんで。ダニーとか普段はめちゃめちゃいい奴だけど、あいつも対バンに対するギラつきが半端ないから。「肩の力抜けよ」って普通に言いたくなる時がたまにあったりしたんで。今はダニーも自由度が高くなって、丸くなりましたけど。いや、そうでもないか?
越川どうですかね(笑)。
──ははははは。
日高目力半端ないんでね。
越川髪型も変えましたしね(笑)。
日高先輩の怒髪天とかもそうなってきたし。コレクターズもそうですよね。先輩たちこそ、そういう空気を敏感に感じ取っているんで、我々もそういう自由度はどんどん上げたいですよね。
越川今のコたちってインターネットでなんぼでも情報が入るじゃないですか。だからこそジャンル分けみたいなのがないんかなと思って。だから俺も「最近の音楽聴くぞ」っていろんなのを垂れ流しするんですけど、「なんでもありやな」と思って。で。実際に甥っ子の友達とかに話を聞くと、そういう聴き方していて。それこそ「KANA-BOON聴きながら、次はイエモン聴いてます」みたいなコが出てくるんで、そういう意味では音楽に対する変な思想がないのかもしれないですね。アイドルとメタルが一緒になるっていうのもそういうことなのかもしれない。「かわいくて曲がよければそれでいいじゃん」って。
日高すごい時代になったなと思いますよ。
──そういうシーン全体のいろんな変化のなかでも、改めて今回のアルバムで日高さんが開陳した必殺の美メロは、最強の武器であり、ウルトラマンでいうところのスペシウム光線なんだなっていうのを改めて感じましたけどね。
日高そう思っていただければ幸いですね。美メロの定義自体も広がってはいるんでしょうけど、「日高節」ですよね。全然封印していたわけじゃないんですけど、気を付けるポイントを変えるだけで聴こえ方も鳴らし方も変わるんだなとは、ファーストと聴き比べても思いますよね。ファーストを聴きかえすと「怒ってんなあ、俺」って思うし。だから今回は竹中直人ばりに笑いながら怒ってます。
──出た(笑)!
日高一応怒ってはいるんだけど、アウトプット的には明るく楽しく。「楽しく怒る」って矛盾した言葉ですけど(笑)。
越川それが一番怖いですけどね(笑)。
日高そうそう、一番危なっかしいのはそっちなのかなっていう。
──目からウロコの話がたくさん聞けました。ありがとうございました!
日高・越川ありがとうございました。
リリース情報
2nd アルバム
『VANISHING CITY』
2014年11月12日(水)発売
TKCA-74158¥2,778+税
- 【収録曲】
- 01. Working Youths
- 02. Sublime
- 03. Let Lights Shine (NEW RECORDING)
- 04. Vanishing City
- 05. The Midnight Sun
- 06. Pitfalls (NEW RECORDING)
- 07. Sweet Nothing Blues
- 08. Dinosaur Boy
- 09. Vengeance Sea
- 10. Everybody Needs Somebody
- 11. Burning Heart
- 12. Pig Ministry
- 13. Evening Star / Morning Star
ライヴ情報
VANISHING CITY TOUR 2014
2014年11月28日(金)大阪・梅田シャングリラ OPEN18:30/START19:00
2014年11月29日(土)名古屋・池下CLUB UPSET OPEN18:00/START18:30
2014年12月10日(水)渋谷TSUTAYA O-WEST OPEN18:30/START19:00
ミュージック・ビデオ
Vanishing City
提供:徳間ジャパンコミュニケーションズ
企画・制作:RO69編集部
- 1
- 2