(“magnet”は)自分の曲なのに嫌だって思う時もあれば、すごい感謝する時もあるんですけど、やっと昇華して自分の曲だぞという気持ちを持って歌うことができるようになりました

── そして、葛藤が様々な曲によって表現されている狭間で、ラブソングが存在感を発揮しているのも、このアルバムの魅力ですよ。“数センチの隙間”とか素敵じゃないですか。

「そう言われると照れくさいですが、ありがとうございます(笑)。ラブソングは気恥ずかしいっていう気持ちがあって、あんまり書いてこなかったんです。“数センチの隙間”は、ボーカロイドの曲で原形があったものでして。自分で歌うのが恥ずかしいからボーカロイドに歌わせていました(笑)。それを自分の気持ちに書き換えて、今回の曲になったんです。歌ってみたら、『こういうのもいいのかな』って思いました。自分が思うことの一面が表れている曲ではあるので」

── あと、セルフカヴァーも収録されていますけど、選曲の基準は何かあったんですか?

「他の人に提供した曲ですけど自分もその気持ちで歌えるっていう、共有部分がすごく多いものを選びました。提供した人に合うように書きつつも、自分に全くないものってなかなか出てくるものではないので。そういう共有できる部分が多いのが、今回歌った“ハルノハテ”と“アイ”と“チョコレート・ホリック”ですね」

── “magnet”もセルフカヴァーですが、これはボカロPとしての代表曲ですね。

「この曲をきっかけに、いろんな出会いがあったり、思いもよらないお仕事を頂いたりとかしたんですよね。いろんなものに繋がったきっかけの曲です。重要な曲でありつつ、いい意味でも悪い意味でもすごく振り回されたというイメージがあって(笑)。この曲がなかったら今に辿り着いていないから超重要な存在です。その分、正直言って辛いこともいっぱいあったんですけど(笑)」

── 人気がある分、様々な影響があった?

「はい。聴いてくれる人が多かったし、『歌ってみた』によって広がったので、意図しない見られ方をいっぱいするきっかけにもなった曲なんです。自分はこの曲を作った人なんだけれども、発信した時点で自分のものではないという気持ちにもなりました。でも、やっぱり自分の中から生まれ出たものなんだと、ここ最近思うようになっています。いろんなことがあった曲だからこそ、ここでこの曲を歌うことによって区切りというか、けじめをつけたかったんですよね。発表してから6年くらい経つと思うんですけど、やっとちゃんとした意味で受け入れて、次に進むための区切りをつけることができました」

── “magnet”がなければ、『ブラックボックス』もなかったでしょうし。

「そうなんですよね。この曲が存在しなければなかったことばかりなので。自分の曲なのに嫌だって思う時もあれば、すごい感謝する時もあるんですけど、やっと昇華して自分の曲だぞという気持ちを持って歌うことができるようになりました」

── けじめも形にすることができたこのアルバムを経て、今後、どんな活動をしていきたいと思っていますか?

「SNSでもすでに言っているんですけど、このアルバムって次を考えたものではないんですよね。『この一点に全てを集中させて、まずやってみないと』というものだったので。だから、やってみて自分がどういう気持ちになって、どういう反応を得られて、自分はどう変わるのか、そこを踏まえた上で次に進みたいと思っています。今後に関するカッチリした予定は特に立っていなくて。でも、『発信するぞ』っていう気持ちに折角なれたので、どういう形にせよ発信はしていきたいと思っています。このアルバムのリリースにまつわるいろいろなものを体験することによって、次に生まれる作品が変わる気がするんですよ。『どうなるのかな?』と僕も思っているところです。でも……ここまで黒い曲はもう出てこないんじゃないかと思っています(笑)。自分の中に溜まっていたものを全部吐き出し切った気持ちはあるので。次はもしかしたらもうちょっとハッピーかもしれない」

── 次回作は『ホワイトボックス』ですか?(笑)。

「ホワイトまでではないでしょうね。グレーくらいかも(笑)。まあ、このアルバムを作ったことによって、いろんなことを始められる環境が整ったのかもしれないです。来年からユニットのViCTiMの活動もあるので、並行していろいろやれるほど器用にはなれないと思うんですけど、何かが生まれた時、発信できる状態ではいたいと思っています」

提供:Being

企画・制作:RO69編集部

↑TOPに戻る

トゥライ人気記事
  • 記事がありませんでした。

公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする