こんなに爽やかな曲(“クリア”)は久しぶりに書けたから(笑)。それが嬉しかったです

──(笑)。カップリングの“クリア”は化粧水のイメージソングとして書き下ろした曲ですけども。“わかんないのはいやだ”の躍動感とは違うタイプの、センチメンタルなポップ感を持った曲ですよね。

「これは、ある程度ドラマ感みたいなものが──『こういうストーリー』っていうわけではなく、人物像みたいなものがみなさんの中でフッと浮かべばいいなというか。私も、人物像がピンと浮かんできて書いた曲だったんで。それこそ“さよならのかわりに記憶を消した”とかもそうなんですけど、『こんな人のこういう瞬間を曲にしたいな』と思って作っているものですね。なので、『切ない曲にしよう』『楽しい曲にしよう』っていう気持ちの面でのイメージというよりは、オルビスさんとお話しさせていただいた時に出てきたキーワードを聞いていたら浮かんできた人物像を表現した、っていう感じですね」

──マインド面での進化が結晶したのが“わかんないのはいやだ”だとすれば、“クリア”はイメージを曲に定着させるソングライターとしてのクオリティの高さがはっきり出ている曲ですよね。

「めっちゃいい感じで言ってくださいますね(笑)。ありがとうございます。『いい曲にしたいなあ』とは思ってたんですよ。聴いた時に気持ちいい曲にしたいなと思っていて。で、いただいたイメージの中で『強くありたい』とか『日々頑張っていて、それでもちょっと揺らいでしまう瞬間』とか『誰かに認めてもらいたい』とか、そういう女の子像が浮かんだので。私もなんとなく身に覚えがあって、なんかわかるなあと思ったところから書いていきましたね。でも、すごくワードごとに歌詞が浮かんでいったんですよ。1コーラスだけ先に作ってお渡ししたんですけど。《眼差しの光》とか《刺さる》とか《木漏れ日》とか、とにかく知っているイメージから生まれているワードがたくさんあるので、書き始めた時は『まとまるかな?』って不安だったんですけど、1曲になってみると『あ、なるほどな』って思う瞬間を、久しぶりにこの曲で感じましたね」

──そういう断片のコラージュが、ひとつの物語を想起させていくマジックがありますしね。

「面白かったです、書いていて。やっぱり、何かのテーマについて書いていくことが、私自身も好きだなと思ったので」

──自分の中で考えてること/思っていることから曲を発信していくだけじゃなくて、タイアップっていう外から与えられたテーマに応える形でも植田真梨恵を発揮できるっていうのは、自信にもつながったんじゃないですか?

「うん、そうですね。でも単純に、こんなに爽やかな曲は久しぶりに書けたから(笑)。それが嬉しかったです。たぶん、この爽快感、清涼感みたいなものをこんなにも出そうと思ったのは、オルビスさんが使われるっていうところを念頭に置いたからだと思うんですよ。だから、本当に作品のために書いているものだな、私自身のためではなく、っていう感覚がすごくあります」

──最後の“夏の日”は、17歳ぐらいの時の曲だそうですね。

「はい。もう、曲ができた17歳の頃のタイミングから、別にこれはバンドアレンジとかではなく、ギター1本で弾く感じがいいなと思っていて――というか、これ以上広げる曲ではないと思ってるんです(笑)。アルバムに入れることも、たぶんこれから先ないだろうなと思って。このシングルに入ってるとめちゃくちゃいい曲だなと思って入れました。夏の思い出みたいなものを、私自身よく思い出すので。というか、忘れ辛いことだなって思うんですよ、夏休みのこととか。だから、シングルをせっかく夏にリリースできるのであれば、この曲を聴いて思い出す夏の瞬間が、いっぱいあればあるほどいいなと思って。なので、この1枚に『私が思う夏』っていうものをひたすら詰めた感じで作っていきましたね」

──《知らぬ間にもう成長していたエゴを、ゴクゴク/グラスに氷と混ぜて さりげに飲み干す》とか、最高ですよね。

「ようそんなこと言うなあ、みたいな(笑)。でも、めちゃくちゃスッとできた曲だったんですよ。車に乗って家族で海に行ったことを思い出して、日記的に書いた曲なので。誰に聴かせるわけでもなく、ライヴでもわざわざ演奏せず(笑)、ほんとに自分が満足してる曲だったので。これを聴いて、夏の思い出がふと誰かに思い出される瞬間があるなら、すごいことだなと本当に思います」

──「今ならこの曲を入れてもいいかも」と思えたのはなんででしょうね?

「単純に、『“夏の日”って曲あったなあ』と思って、聴き返したらいい曲やったんですよ(笑)。で、歌詞で歌ってる《忘れたくないあの人と/忘れない 夏の日》って歌ってるんですけど……わかんないんですよね、『忘れられないあの人』って誰のことやろ?って(笑)。自分が演奏しているというか、ほんとにもう、むしろカヴァーぐらいの感じでレコーディングして収録したので」

──「こういう気持ちを歌っていた17歳の植田真梨恵っていう人がいた」っていう?

「ほんとそんな感じですね。『ああ、ええ曲やなあ。入れたらいいのに』って(笑)。でも、そんなに浮ついた気持ちで書いてたわけではなかったと思うんですよね、たぶん。だから、家族のことを歌っているのかな?って今は本当に思いながら歌ってますけど」

もう私は、私にできること――歌詞を作って、メロディを作って、歌う、全力で!っていうところを抜かりなくやりたいなと思ってますね

──3曲まったく違った方向性と意味合いを持った楽曲だし、ミニアルバムくらいの広がり感のあるシングルになりましたよね。

「そう言ってもらえると、めちゃくちゃ嬉しいです、ほんとに。シングルなんですけど、アルバムばりにアートワークも凝っていて、『なんでこんな凝ってんねやろ?』って(笑)。(初回限定盤/通常盤で)ジャケもそうなんですけど、中身も色も全部違うので。シングルとは言え、1000円とかするわけじゃないですか。だから、絶対に手に取って『買ってよかった』って思ってほしいし。私自身これ、初回盤と通常盤どっち買う?って言われたら、ほんまこいつナメとんな、どっちも買いたくなくなるわ!っていうぐらい迷うんですよ。めっちゃ自画自賛ですけど(笑)」

──(笑)。でも確かに、曲だけじゃなくてパッケージからも気合いは伝わりますね。

「アルバムのモードから引き続きになっているところもあるので、シングルとはいえ気を抜きませんよ!っていう気持ちではいるんですけど。アルバムを出して以降、曲を作るのがめっちゃ楽しくなったんですよ。なので、“わかんないのはいやだ”も面白く書かせてもらったので。それが自分にとってすごい嬉しいですね。いっぱい曲を書きたいなと思ってます。6月の間、『1日1曲書こう』と思って曲を書いていて。(スタッフに向かって)知らなかったでしょ?別にどうでもいい曲でもいいから書こうと思って――っていうわりには、日付分の曲は溜まってないなっていう感じではあるんですけど。でも、ずーっと音楽モードを抜かずにいられたので、すごくいい時間でしたね。特にメジャーに行ってからは、いろんな人たちが、自分の見えないところでめちゃめちゃ動いてくださってるのがわかるんで。全然いろんなことを把握しきれてなくて、うわあって思うんですけど……もう私は、私にできること――歌詞を作って、メロディを作って、歌う、全力で!っていうところを抜かりなくやりたいなと思ってますね」

──すごくいいモードですね。10月のツアー「UTAUTAU vol.2」も楽しみにしてます。

「今回のシングルの初回盤特典に、『はなしはそれからだ』ツアーのライヴ映像とドキュメンタリーも付くんですよ。それを確認がてら観ていたんですけど……めちゃくちゃツアーが楽しかったなあと思いまして、過ぎ去った後で(笑)。その時は一生懸命すぎて、『楽しい!』みたいな実感は全然なかったんですけど。なので、早くやりたいなと思ってます。めちゃくちゃ楽しみですね」

提供:GIZA studio

企画・制作:RO69編集部

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