これがJ-POPのど真ん中! イトヲカシ、シーンの王道を行く歌ものアルバム『中央突破』を語る

これがJ-POPのど真ん中! イトヲカシ、シーンの王道を行く歌ものアルバム『中央突破』を語る


J-POPのど真ん中をやりたい、そういう理念の範疇にすべての楽曲が収まっている(宮田)

――今回のアルバムはどのように作っていったんですか?

伊東歌詞太郎(Vo) 『中央突破』としてのコンセプトを掲げて作ったわけではなく、俺らは振り返れないし目の前のことを一生懸命やるタイプなので、常に曲を作っているんです。その中で、今回アルバムを作ります、じゃあシングルを軸にあとはどんな曲があったらいいだろうと選んでいったのが『中央突破』ですね。1曲目の“スタートライン”ができたのは2014年の6〜7月くらいで。それが一番古いです。

宮田“レフティ”リョウ(B・G・Key) そういう意味ではけっこう長いスパンをかけてできたアルバムかなと。

――“スタートライン”は、ダイナミックなリズムにアコギや鍵盤、ストリングスも加えた豊潤なサウンドが乗り、《走り出せ》や《僕の世界の果ての果て》のような熱い言葉が歌われていて。つまりポップスらしい曲とバンドマンらしい歌詞、そのふたつの円が交わり唯一無二の魅力を放つというイトヲカシの武器が凝縮されていますね。

伊東 1stフルアルバムなので、もちろんメジャーデビューはしてるけどアルバムは初めてだから、やっぱり1曲目は“スタートライン”だって思ったら、図らずもそういうエッセンスみたいなものが入っていたってことだと思います。

宮田 まあ今思うと全部我々らしい楽曲になったなというのはありますけどね。僕らなりのですけど、王道の音楽をやりたい、J-POPのど真ん中をやりたい、そういう理念の範疇にすべての楽曲が収まってる。その中でも“スタートライン”は誰が聴いてもそうだろうなというか、「J-POPだろ!」って曲にはなってるかなと思います。

――この曲、歌詞を分析するとAメロと大サビは主観的な「僕の気持ち」で、Bメロとサビは客観的な「君へのメッセージ」じゃないですか。共感できるし励まされる、これもふたつの円が交わり独特の聴き心地を与える部分だなと。

伊東 ほう! ちょっといいですか?(紙資料を手に取る)――たしかにそうですね! あとの曲は主観か客観かどっちかに統一されてる感じもあるけど“スタートライン”は違う。意識してなかった、勉強になります(笑)。実は歌詞を書くときに主観で書こうとか考えたことが一度もなくて、心の赴くままに書いてしまうので。

――あえてじゃなかったんですね。

宮田 あんまりロジカルにやるほうじゃないですね、我々。あとから「これってこういう意図があったんじゃね?」と気づくことのほうが多いです。

伊東 あと取材で気づかされることもあって、これもびっくりしました。こう言われたからには今後、歌詞を書くときに主観/客観を考えちゃうんだろうな。

宮田 はははは、「流川、次はパスだ!」(※漫画『SLAM DUNK』より)みたいな(笑)。ドリブルだけだと思ってたらパスもあるぞって。

伊東 そうそう(笑)。ヤバイなあ、がんばろう!

失敗って無駄なんですよ。でも無駄だったものが、今この瞬間の俺にとって宝物になってる(伊東)


――“ドンマイ‼”も困難を飛び越えろという、励まされるメッセージがあるなと思っていて。

伊東 “ドンマイ‼”は、結果だけで言ったら俺らはバンドを解散してるし売れなかったから失敗だと思っていて。その失敗っていうのは、バンドが失敗しちゃったねっていうひとつの失敗ではなく、バンドをやってた何年間の間に数えきれない失敗をしてるわけです。同じライブを続けてたら動員が増えるはずもないのに「なんで動員が増えないんだろ」って腐ってたり。で、あえて言うと失敗って無駄なんですよ。無駄無駄無駄無駄。でも無駄だったものが、今この瞬間の俺にとって宝物になってるんです。苦しんだこと、お金がなくて食べられなかった記憶。そのときは無駄だけど、それが一気に宝物に転換されるときっていうのが確実に来るんですよ。
インターネットで伊東歌詞太郎という存在を始めてからお客さんが増えていって。どんどん増えて、これからもっと増やしていきたい。その中で、自分は歌が好きだとか、お客さんに対する感謝とか、そういうものをブレずに持ち続けられるのは、その宝物のおかげだと思ってるんです。これがなかったらもっと違う考えで音楽をやってたと思う。「ありがとう」とか、そういう言葉に説得力もなかったと思う。だからいつか宝物に変わるその無駄を生かすためには、今きつくてむしろ後退してんじゃねえかって思っても、諦めないでやることが一番大事だって思ってます。
俺は「運」とかあんまり信じてないんですよ。運がいいから売れるとか。そうじゃなくて、チャンスが来る前にやめちゃうから巡り会えないだけで。それが明日なのか、5年後なのかはたまた10年後なのかわからないけど、必ずチャンスは巡って来る。そのときに、無駄を宝物に変えることができるかどうか。それがまさに“ドンマイ‼”という曲で。どんな困難も神様がくれたプレゼントなんですよ。いつか宝物になるから、何万回ドアを叩いても次も叩いてみようぜっていう。

――「諦めたらそこで試合終了だよ」と。

伊東 そうそう(笑)。ただドンマイだけだと、失敗しても気にしないでどんどん行こうぜみたく聴こえるけど、それは最悪ですよ。そうなったら誰も成長しないから、悔しさを忘れちゃいけないんですよね。あと失敗して誰かに迷惑をかけたら「ごめんなさい」って言う。反省する。そうしないと人は成長できないから、“ドンマイ‼”っていうのはそういう応援歌なんです。

――この曲は《本当に楽しくなるのはまだ/クレッシェンドさぁこれからだ》という言葉で締めくくられていますけど、今、本当に楽しいですか?
伊東 俺たちですか? 二面性はあると思いますね。もちろん音楽をやるのは楽しい。でもここで、楽しいねで終わるのは嫌なので、もっと楽しくなると思ってます。

宮田 そうですね、音楽がどんどん好きになってます。僕らで言うと中学からだからもう何年音楽をやってるかわかんないですけど、これドラクエだったらさすがに飽きてんだろうみたいな(笑)。

伊東 ドラクエなら飽きてるね(笑)。

宮田 打ちのめされることもあるし、強えやついっぱいいるし。悔しいこともいっぱいあるけど、「この先に何があるんだろう?」って気持ちにどんどんなれている時点で楽しいですね。そしてもっと楽しくなるっていうのがわかってるから、やめらんないなって思います。

次のページ何にも負けず、腐らず、このまま真面目に一生懸命やっていきたい(伊東)
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