THE CHERRY COKE$が、8thアルバム『THE ANSWER』を6月13日にリリースする。日本を代表するアイリッシュパンクバンド として名を馳せながら、ここ数年はメンバーチェンジなど激動の時期を過ごしていた彼ら。しかし、『THE ANSWER』は、その全ての「答え」が詰まったような、力強い作品になっている。
彼らの血肉と言えるアイリッシュパンクから、国境をまたいで様々なジャンルを昇華したオリジナリティ溢れる楽曲まで、興奮と発見と感動が行き来する12曲を収録。バンドを代表して、KAT$UO(Vo)、 MASAYA(G)、suzuyo(A.Sax・T.Whistle)、LF(B)の4人に訊いた。
インタビュー=高橋美穂
全く予備知識がない中で全国ツアーをやって、新曲を披露していって、どんだけお客さんと熱くなれるのか?っていうことを知りたかったんです(KAT$UO)
——まず、『THE ANSWER』という、直球にして意味深なアルバムタイトルの由来から教えていただけますでしょうか。
KAT$UO 去年、「THE LIVE」ツアーというのを行ったんです。本当は、昨年の4月ぐらいにニューアルバムをレコーディングしようと思っていたんですけど、その前にカリブ海クルーズツアー(FLOGGING MOLLY主催の「Salty Dog Cruise」)とか、いろんなことをやらせてもらって、今一度自分たちが音楽を発信する意味を考えた時に、いわゆるCDをリリースして全国ツアーを回ることじゃなく、まずアルバムサイズの手元にある新曲をライブで育てて、それをCDにする……っていう、逆パターンをやってみたくなって。海外のライブでは、曲を知らないお客さんも盛り上げることができるっていうTHE CHERRY COKE$の強みを感じるので、全く予備知識がない中で全国ツアーをやって、新曲を披露していって、どんだけお客さんと熱くなれるのか?っていうことを知りたかったんです。そのツアーでやった曲を(今作に)収録しているっていうところで、「THE LIVE」ツアーで出た答え、っていうのが、一番大きな意味合いなんですね。
——収録曲は、全曲ライブで披露済みですか?
KAT$UO 全曲ではないです。ただ、やってなかった曲のほうが少ないですね。
suzuyo “No Man, No Cry”“Dong Chang Swag”はやってないですね。
KAT$UO “A-Yo”もやってないです。
——あの、ライブで絶対に盛り上がりそうな曲も、とっておいてませんか?
全員 (笑)。
——聴かせていただいて、チェリコにとってはチャレンジだなって感じたような曲を、すでにライブで披露していたりするんですかね?
MASAYA そうかもしれないですね。
——じゃあ、チャレンジして、お客さんに披露して、その反応も混ざり合ったところで、今作に収録したという。
MASAYA はい。
——さきほど、『THE ANSWER』と名付けた由来を伺いましたけど、メンバーチェンジなど幾多の山を乗り越えて、こういったチャレンジを経て、「これが今のチェリコだ!」っていう答えが詰まっている、っていう意味での『THE ANSWER』ともいえるのかな、と私は思ったんですよね。
KAT$UO 前作のタイトルが『THE CHERRY COKE$』だったんです。あれも、「これが俺たちだ!」っていう提示だったんですね。その次の作品ということで、よりそれを超えた今の自分たちを提示しなきゃいけないとは思っていました。おっしゃってくれたように、ここ3年くらいは、1年たってメンバー辞めて、また1年たってメンバー辞めて、っていうことが続いていたので、そんな中でこうやってひとつ盤を出す時に、今一度THE CHERRY COKE$とはなんぞや? アイリッシュパンクってのはなんなんだ?みたいなところを伝えたかったんです。「日本を代表するアイリッシュパンクバンド」なんて謳ってもらったりするんですけど、実際その座はまだ空いているんじゃないかな?って自分では思っていて。そこを確実に自分たちのものにしたいんですよね。だから今回は、「俺たちがアイリッシュパンクバンド日本代表なんだ」っていうところを提示したいという意図もありました。
——チェリコは、アイリッシュパンクだけに影響を受けたバンドではない、ということも公言してきましたけど、やはり血にあるのはアイリッシュパンクであるということを、自分たちを見つめ直して再確認したっていうことなんでしょうか。
suzuyo そうですね。
KAT$UO それが自分たちを育ててくれた大きな要素ではありますから。
「キャッチー」っていうところに対しては、すごくシンプルに追従できていると思うんですよね。いらないものは排除して、必要なものを入れるようにできている(suzuyo)
——トラッドなアイリッシュパンクを、現代流、チェリコ流にアップデートしている感覚が、今作にはありますよね。特に冒頭、高速アイリッシュで幕を開けるあたりが象徴的といいますか。
MASAYA 一時、2ビートをやめようと思ったことがあったんですけど、そういう考えはいらないんじゃないかな、らしさを出せばいいんじゃないかなって。2ビートを封印した時は、16ビートやいろいろやったんですけど、そうやって考えすぎてやるより……狙ってやったんですけど、「ポップよりキャッチー」っていう。ニュアンスの問題かと思うんですけど、そこを第一にやったら、スピード感が必要な楽曲があったっていう。
——「ポップよりキャッチー」っていうところ、もう少し詳しく説明していただけますか?
MASAYA ポップとキャッチーの差は何かっていうと、J.ガイルズ・バンドの“堕ちた天使”……♪ラーラーララーララ、はポップよりキャッチーですよね。あれを念頭に置いて作ったのはあります。変にこねくり回さず、耳馴染みのいいものを、と。
——キャッチーっていう意味でいうと、suzuさんの存在はより重要になってきているのかなって。(もうひとりの女性メンバーだった)tomoさんが2015年に辞めて、コーラスなどの役割が増えたことに関しては、どう思ってらっしゃいますか?
suzuyo やることは増えましたけど、今言っていたような「キャッチー」っていうところに対しては、すごくシンプルに追従できていると思うんですよね。いらないものは排除して、必要なものを入れるようにできているので。
——なるほど。一曲一曲聴き応えがあるので、なるべくたくさんの楽曲に触れていきたいと思いますが、まず2曲目の“No Man, No Cry”。これは、さっき言わせていただいたような、アイリッシュパンクを現代流、チェリコ流に鳴らしたものだと思っていて。できあがった時は、かなり手応えがあったんじゃないですか?
KAT$UO でも、結構ギリギリにできたんです(笑)。スタジオの喫煙所で「これじゃない気がする」って話してて、MASAYAがなんとなく歌ったサビを「それじゃね!?」って、スタジオで鳴らしてみて決まったっていう。
——結構ラフな成り立ちだったんですね(笑)。
KAT$UO 最初はガチッと固めてきたものがあったんですよ。でも、それを崩したり捨てたりして、結局、喫煙所で出たアイディアが採用された(笑)。
MASAYA 今回、他の曲もそうなんですけど、「わっかんねえなあ」ってなって、喫煙所でムニャムニャ鼻歌を歌ったものを「あ、それだ!」って言われることがあって。家ですごく時間をかけたアイディアより、みんなで話し合って5分で決まったものが多いんです。
——作曲クレジットこそMASAYAさんですけど、みんなと言葉や音でセッションしながらできあがったものが多いんですね。
MASAYA そうですね。
——そして、3曲目の“Dong Chang Swag”は、曲名からチェリコらしくて、「こう来たか!」「これ言っちゃうか!?」っていう(笑)。
KAT$UO メロディと同時に歌詞が思い浮かんで、MASAYAに「これを曲にしてくれ」って言ったんです。だから、最初から《ドンチャン騒ぎ》って歌詞はあったんですよね。でも、曲名は「Swag」にしたほうがかっこいいんじゃないかなって(笑)。
——タイトルの日本らしさも含めて、アイリッシュとジャパニーズが見事に融合されていますよね。三三七拍子も出てきますけど、これって日本のトラッドじゃないですか。
KAT$UO 三三七拍子入れたいな、って思ってたんですけど、ちょっと言うのが恥ずかしくて(笑)。でも「いいじゃないですか」って言ってもらえたんで。
——こういう曲を海外でやってほしいですね。三三七拍子のビートを聴くと、日本人なら反射神経で手を叩いてしまいますが(笑)、外国の方はどういうリアクションをするのかなって。
suzuyo ああ、それ気になりますね!