THE CHERRY COKE$、トラッドなアイリッシュパンクをアップデートした答え、新作『THE ANSWER』インタビュー

THE CHERRY COKE$、トラッドなアイリッシュパンクをアップデートした答え、新作『THE ANSWER』インタビュー

suzuちゃんは「いける?」って訊いたら、「やります」と。「ちょっと難しいですね」とは言わないんですよ(笑)(MASAYA)


——また、4曲目の“Gypsy Moon”は、アコーディオンとサックスからはじまるんですけど、これまた高速で。チェリコにしかできないスタイルだと思います。

MASAYA  THE CHERRY COKE$の曲を作る時って、アイディアを探すんですよね。フランスのミュゼットを聴いたり、東ヨーロッパのクレズマーを聴いたり、ロシア民謡やブルーグラスを聴いたり、いろいろ漁ってから作り出すんですけど、ふと、アコーディオンはじまりの曲を作りたいなって思って、suzuちゃんはソプラノサックスも持っているので「(普段はアルトサックスだけど)いける?」って訊いたら、「やります」と。「ちょっと難しいですね」とは言わないんですよ(笑)。

suzuyo でも、本当はソプラノサックスがちょっと苦手なんですよ。あれ、吹きづらいぞって思うんですけど、できないなんて言えない(笑)。

MASAYA (笑)。それで作り始めたんですよね。まあ、レニングラード・カウボーイズの要素とか、ロシア民謡の“ポーリュシカ・ポーレ”とか出てきますけど、アニメの『ガルパン』(『ガールズ&パンツァー』)で、“カチューシャ”(ロシア民謡)が使われているっていうところに、時代の流れを見たからっていうイヤらしい理由もあるんです。でも、ラスティックとかが根っから好きですからね。入れてみたら、意外と合うなって。

——そう考えると、本当にいろんなアイディアが詰まってますね。

MASAYA あと、最初のアコーディオンとサックスでリスナーを殺すっていうことで(笑)、そこの音量もすげえこだわりました。“No Man, No Cry”のバンジョーのボリュームもですけど、そこで(曲の)世界を持っていくっていう。

——細かいけど大切なところですね。

MASAYA そこに時間をめちゃくちゃかけますね。


アルバムは一曲一曲が独立した世界を持っているので、それらを総合した時に、出だしの音量で、その曲の印象が変わることもある(LF)


——ライブバンドでありながら、そういうこだわりもあるという。

LF ライブだけでは見えないことっていっぱいあると思うんです。だからレコーディングは、ライブと照らし合わせてやる。また、アルバムは一曲一曲が独立した世界を持っているので、それらを総合した時に、出だしの音量で、その曲の印象が変わることもあるし。曲のダイナミクスは、ひとつの曲の個性だと思うし。だから、ミックスの作業は重要ですよね。

——そして6曲目、7曲目は、チェリコのライブではお馴染みの“John Ryan’s Polka”、さらにアイリッシュトラッドの“The Irish Rover”と、カバーが続きます。

MASAYA  “John Ryan’s Polka”は1stアルバムにも入っています。よくライブの物販で「どのCD買ったらいいですか?」って訊かれるんですけど、“John Ryan’s Polka”が入っていれば「これを買えばいいよ」って胸を張って言えると思ったんですよね。

——“The Irish Rover”に関しては?

KAT$UO わかりやすく、アイリッシュトラッドをパンクにしたやつを提示したいなって。いろんな海外のバンドもやってるし、こすり尽くされたネタではあるんですけど「みんながやってるから、みんなが知ってるだろう」って考えはなくしたほうがいいなって。俺らが好きな人たちがカバーしてても、俺らを好きな人たちが知っているかどうかはわからないし。

——チェリコはいろんなアプローチをしてきたバンドですけど、一周回ってど真ん中もやれるようになったことが、特にこの2曲でわかります。

suzuyo 20年近くやってきて、これができるようになったのかなって。

——ど真ん中を避けていたこともあったじゃないですか。

MASAYA 避けることなかったのにね(笑)。でも、避けたい時もあるんでしょうね。反抗期ですかね、ようやく大人になりました(笑)。

——大人になってますます弾けているっていうことも、後半の楽曲には表れていますけど(笑)。特に、“Lilac”と“Lion”は、トラッドど真ん中とは違う、新しい方向性を見せていますよね。まず“Lilac”は、日本のトラッドとまではいかないかもしれないけれど、歌謡ブルースみたいな匂いがある。

MASAYA そうですね。イントロのピアノは、イーグルスの“デスペラード”からきてたりするんですけど。アコースティックのパブライブを企画した時に、アレンジをガラッと変えて、ディキシーランドジャズ風にしていたんですけど……アコーディオンのMUTSUMIが使っているのがVアコーディオンなんで、ピアノの音とかも出るんですよね。そこで弾いていたのを聴いて、いいなって思って。ぷんぷん男臭さが匂うなって(笑)。

——そして、次のアグレッシブな“Lion”への飛距離がすごい!

MASAYA A(メロ)、サビ、A(メロ)、サビ、みたいな流れの曲を多く作ろうと思ったんです。それまでは、A(メロ)、B(メロ)、サビっていう流れの曲が多かったんですけど、Bいらねえなって。昔好きだったロックバンドの曲も、そういうものが多かったし。スキッド・ロウの“スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド”や、メガデスの“ポイズン・ワズ・ザ・キュア”……そういうのをミックスして、冒頭にロバート・ジョンソンみたいなギターを入れたら、こうなったっていう。好きなものを詰め込んだんです(笑)。

——これは、演奏しててもテンション上がるんじゃないですか?

LF 上がりますね。

suzuyo やってて、すごく速くなっちゃったこともあったんです(笑)。

LF もっとどっしりやろうよ!って(笑)。でも、このテンポ感は難しい!

MASAYA 速いほうが簡単なんですよ。

——また、終盤に向けてキャッチーが加速していきます。“Snows In The Town”は、テーマそのものがキャッチーなクリスマスソングですよね。

MASAYA  KAT$UOさんが、季節ものをテーマにした作品を作りたいって言っていたんだよね。

KAT$UO ああ、そうだ。ミニアルバムとかね。

MASAYA 自分たちの中で、そういう話をしていたのが、きっかけになっているのかな。あと、思い出した、これ、“KISS IN THE GREEN(~Drunken lovers nite~)”のネクスト、みたいなものを作りたかったんですよね。もしくは、僕があの曲を超えたかったのか、勝手に。

——なるほどね。そして最後に“Our Song”で、みんなで盛り上がって美しく終わるっていう。

KAT$UO チェリコに関わる全ての人たちに(向けた歌詞)、っていう。「THE LIVE」ツアーのライブでも、本編の最後に、間奏にメンバー紹介を入れてやっていたんですよ。

MASAYA 最後の《Lalalalala》は、ライブでは何回もやりますからね(笑)。

——「Once more!」も、絶対にライブで聴きたくなりますね。

MASAYA あそこも、3回やったりしていたんです(笑)。また、どんどん速くなっていくんですよ。それで、これを(CDに)入れる?って話して。

LF とりあえず1回やっておこうか? テンポも上げておこうと。

——これ以上繰り返して聴きたい時や、もっと速くなったものを聴きたい時は……。

MASAYA ライブにどうぞ、っていう(笑)。

——リリースツアーもありますもんね。

KAT$UO はい、8月から来年の1月まであります!


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