上白石萌音が全力で向き合った「恋」。5つの恋物語が描かれた最新作『i』を語る

YUKIさんとn-bunaさんという化学反応にふさわしいのは、まっすぐな声だと思ったんです


──そこから、アルバム制作へとつながる中で、今回1曲目に収録された“永遠はきらい”にも驚かされました。

「私も驚きました(笑)」

──作詞をYUKIさんが、作曲をn-buna(ヨルシカ)さんが手がけていて、このおふたりの共作というのがまず驚きで。

「いやもう、文字通り震えました。今回、5つのテーマの中に『思わせぶりな恋』っていうのを入れた時点で、このテーマの曲は挑戦になるなって思ってたんですけど、その通りでしたね。最初にn-bunaさんが曲を送ってくださって、それをYUKIさんにお送りして、また戻してくださってというやりとりだったんですけど、デモでYUKIさんが自ら歌ってくださっていて、それがもうYUKIさんワールドで、YUKIさんの新曲をこっそり聴いちゃったみたいな感じ。私はYUKIさんの歌が大好きなので、だからそれで満足しちゃいそうな感じだったんですけど(笑)。ほんとに心を揺さぶられました。この曲自体が『恋』みたいで。こうやって気持ちが揺らいで揺らいで、なんかそういうのをガツンと入れられた気がします」

──いやほんと、なんて曲だこれって思いますよ。メロディも耳に残るしキャッチーで、でもよくよく聴けば転調もすごいし、これを歌いきっている上白石さんの表現力にも驚きました。

「ありがとうございます。でもほんと難しいんですよ。すごいチャレンジングな曲でした。今、リリースが近づいて披露する機会も多いんですけど、そのたびにほんと『なんて曲だ』って思います(笑)。でもすごい気持ちいいんですよ。突き抜ける感じが。n-bunaさんの曲は中毒性がありますね」

──歌い出しの歌詞も強烈ですよね。《神様 お疲れ様》って。

「恋愛って神頼みじゃないですか。なのにそれを初っ端から排除するって、男らしいなと思いました(笑)。肝を据えているというか。やっぱりYUKIさんすごいです」

──この歌、どういうふうに表現しようと思いました?

「とにかくまっすぐ歌おうと思って。曲自体が持つパワーがすごいので、そこをもうストレートに表現したいなと。たぶんこの曲の女の子って、すごいまっすぐで、すごいピュアな子なんだろうなって気づいたから、あえて飾らずに、ビブラートもこぶしもなんにも使わず、シンプルに歌うっていうところに行き着きました。YUKIさんとn-bunaさんという化学反応にふさわしいのはまっすぐな声だと思ったので」

お芝居も歌も、どちらも生きた言葉として届けたいし、その表現の追求なんだと思います


──今作は他にもバラード曲やバンドサウンド的なアプローチで歌い切る楽曲など、ほんとに曲ごとに上白石さんの多彩な「表現力」を感じることができるミニアルバムだと思います。1作目のカバーミニアルバムを含めると今作が3作目ですが、その間に歌うということへの向き合い方や、音楽での表現に対する思いの変化というのはありましたか?

「歌が好きという気持ちの大きさは、もう3歳くらいの頃から変わっていないです。でも、音楽にどう関わっていくのかというのは、どんどん変わってきましたね。前作の『and…』というアルバムは、楽曲を提供いただくアーティストの方に、それぞれ『こういうものをお願いします』と依頼して届いたものを表現するという、ある意味、受け身な制作だったんですが、今回初めて、ジャケットの写真も含め、どういう曲にするかも、全部ゼロの段階から自分の意見を言わせていただきました。ひるまずに『こういうのはどうですかね』って、自分の考えを言葉にして。そういう経験はこれまであまりなかったので、すごく大きな一歩だったなあと感じています。正しいとか間違ってるとか関係なく、自分の思っていることは言ってみるものだなあって。そこに気づけたのは、自分の性格上、これから生きる上でも大切な出来事だったなと思います」

──「こうしたい」という思いは前作時にもあったはずで、でも今回それを言葉にできるようになったのはなぜだと思いますか?

「やっぱり前作から2年、間が空いたというのがすごく大きかったと思います。歌いたい、歌いたい、アルバム作りたいっていう思いが時間をかけて高まっていって。いろいろ考えたりする中で、私は何が歌いたいんだろう、何が好きなんだろうって、そういうことを考える時間が十分にあったので、あとはそれを言うか言わないかだけで。そのタイミングでレーベルも移籍して、スタッフさんたちの顔ぶれも一新されて、言うなら今しかないだろうっていうので、それで一歩思い切れたというのもありました。いろいろなことが重なったんですね。“ハッピーエンド”も、自分で『歌いたい』って言えたことで形になったっていう、ひとつの成功体験のようなものになって。本気で歌いたいという思いが強かったから、自分の意見を言いたいという気持ちにもなったんだと思いますし。その思いの強さは2年分以上のものがあったんじゃないかと思います」

──自分の意見を言うのは勇気のいることでもありますよね。

「怖いですよね。でも、自分の意見に絶対的な効力を持たせたいわけじゃないから、『私はこれは違うと思うんだけど』みたいな感じで。みなさん、それをすごく受け止めてくださるので、お互いが『ああしよう』『こうじゃない』って、バンバンやりあうことができて。もちろん私も『それは違うよ』って言われたし、すごく良い経験でした」

──こうしてオリジナル曲が増えたことによって、ライブへのモチベーションも高まってきているんじゃないですか?

「ほんとに、ライブしたくてしょうがないんですよ。ライブってすごいですよね。だってみんな自分の歌を聴きに来るんですよ。舞台とかでも、全員が自分の声を聴きに来ているなんてことはないですから。すごいことだなあと思います。私もみなさんの顔を見るし、それがすごく楽しくて。こう歌ったらこういう表情になってくれるんだなあとか、そういうのがほんと楽しいです。早くライブしたいですね」

──逆に、女優として演じることと歌で表現することを比較してみて、似ていると思うところはありますか? もしくはまったく別物だと感じているのか。

「似ている、というか、結局『同じ』だと思いました。嘘がつけないし、でもどこかフィクションで。どちらも生きた言葉として届けたいですし、その表現の追求なんだと思います。今回制作していて面白かったのは、ここ何年かでいろいろな役を通して恋をした、その経験が歌を歌う上で生かされていると感じる時間がすごくあって。『あ、この曲はあの子のことかな』とか、この感情知ってるって思えたり、演じることと歌うことはリンクしているなあと感じられました。逆に“永遠はきらい”みたいな新しい楽曲へチャレンジしたことで、また新しい役を演じる時に、『あの歌の子だ』って思えるかもしれないですし。そういう相互作用みたいなものは絶対にあるなって思いますね」

──また新たな役を演じることが楽しみにもなりますね。

「そうですね。そうやって、編み物みたいにお芝居と歌を縒っていけたらいいなと思います」

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