「KOYABU SONIC」、2019年で開催10回目!小籔千豊に訊く「このフェスだけの哲学」

「KOYABU SONIC」、2019年で開催10回目!小籔千豊に訊く「このフェスだけの哲学」

芸人のクオリティは、日本一の自信があります。芸人の目利きに関しては……僕はやるより観るほうが好きなんで、今でも。港から直に仕入れてます


──ねえ。あと、音楽ファンにお笑いを見せたい、お笑いファンに音楽を見せたい、というふうに、異なる趣味とか価値観とかが混ざり合っていく場として「コヤソニ」が大事、ということろも大きいですか?

「そうですね。フェス行ったことない僕が、フェス出たいけど出られへんから自分らでやりだした、ミュージシャンが何組か出てくれはった、僕の知り合いで吉本のおもしろい奴おるから当然出てもらう。で、転換っていうのがあると。セッティングで15分ぐらいかかるってきいたから、じゃあそこを芸人がMCでつなぐ。演奏終わったら『ありがとうございました!』ってからみに行く。漫才のイベントやったらあたりまえなことなんですけど、それをやったらスチャダラさんに『こんなフェス見たことない』って言われて。あと、(MC)Boseさんが言ってくれたんが、お客さんも出演者もみんなすごいピースフルなんは、『小籔のために集まってるんでしょ』という感じがあると。知らんアーティストでも『おまえも小籔に頼まれたん? 俺も頼まれてん』っていう共通点があるというか。よそのフェスやったら、誰が俺らを呼んでくれたんかもわからん状態で行って、ライブやって、横のアーティストの人ともあんまり関係なく帰るけど、コヤソニは……楽屋が一個っていうのもよかったみたいです。ハナレグミさんとBoseさんが隣に座ってて、AFRAさんも入って楽屋でチャカチャカやって、『出よか』ってそのまま出てくれたりとか。斉藤(和義)さんとBoseさんも、『何か一緒にやろうって昔から言うてたけど、やってないな』って打ち上げで言うてて、それが“いたいけな秋”っていう曲になったりとか(2010年の斉藤和義のアルバム『ARE YOU READY?』に収録)。アーティストは『Mr.オクレ観れてよかった』とか『(池乃)めだかさんとからめて感動です』って言うてくれはるし。芸人は芸人で、麒麟の川島(明)とか、『僕スチャダラパーむちゃくちゃ好きやったんで、マジで観れてよかったです』とか、言ってくれたりするんで。よかったなと思いますけど」

──芸人も出ている音楽フェスは、他にもありますけど──。

「ありますけど、芸人の数がアーティストとほぼ一緒っていうのは、ないと思うんです。あとは、芸人のクオリティは、日本一の自信があります。芸人の目利きに関しては……僕はやるより観るほうが好きなんで、今でも。そのへんのフェスやってる音楽関係者が選んだ芸人ラインナップよりかは、港から直に仕入れてますんで。自信があります」

「小籔、あんだけもろうてんのか」ってなったら腹立つと思うんですよ。自分は、どの出演者よりももらってない状態にしとかんと、ヤバい


──あと、小籔さんが今これだけいろんな仕事をされている中で、収益的にはたぶんいちばん割の合わない仕事ですよね。

「コヤソニは僕、出演料、1000円なんですよ。それは、『すいません、来てください』って言うて出てもらってんのに、『あいつ100万円儲かってんのか』ってなったら、『行くか!』ってなるじゃないですか? だから僕は、これに関しては、おカネを取ってはいけないというか。おカネじゃなくて、出てもらってることがご褒美というか。最初の頃、終わったあとに事務所が振り込んできたから、『いや、言うたやん! これもろたら、後輩らに申し訳ないから』って、返して。みんな普通の営業ギャラで来てもらってるんですよね。そやのに、『小籔、あんだけもろうてんのか』ってなったら腹立つと思うんですよ。どの出演者よりももらってない状態にしとかんと、ヤバいから」

──でも、これだけ毎年続いているということは、採算的にも成立しているんですよね。

「最初の頃は赤やったと思います。僕、収支、知らないんですよ。それは何回も言うてるんですけど……吉本的に、芸人のギャラを教えたないのは、なんとなくわかるんです。それはわかると。でもアーティストのギャラは教えてくれ、そやないと……あと1組どうしよう、と思った時に、あの人は安い、あの人は高い、ってなったら、同じくらいの呼びたい度やったら、安い人を呼んだほうが運営としてはいいじゃないですか。俺の言うたことを全部実現していくんやから、俺が経費知ったら、『あ、ここ、こんなにかかるんか。じゃあやめとこか』ってなるやん? そのほうが得やで?って言うのに、収支だけは何回言っても教えてくれないです」

──なぜそんなに教えたくないんでしょうね。

「基本、芸人にイベントの収支は教えない、という文化はありますよね。でも『俺カネいらん言うてるやん! たとえば500万円黒字になった、そのうち250万円くれって言わへんやん!』って言うんですけど。でも教えてくれへんのは、僕、『こんなに浮いたんやったら、あの人にもっと払うてくれ』って言い出すからでしょうね(笑)。でも、吉本に儲けさしたいとは思わないんですけど、吉本の社員は……社員は、歩合じゃないんですよ」

──ああ、仕事を増やしてしまっていると。

「僕がコヤソニやるって言わへんかったら、あの人ら、その日は休みやった可能性あるんですよ。僕のわがままでめっちゃ動き出すんですよ、いっぱいの社員が。アーティストをアテンドする人が、昔劇場で一緒にやってた社員やったり、関係者受付のメガネかけた女の社員の人は、若い頃からお世話になってる人やったり。もう知った顔がバリバリおるんですよ。その人らは給料変わらないんですよね。コヤソニ手当もないわけです。じゃああの人らの喜びってなんやねん?ってなったら、お客さんが喜ぶことと、売上が立ったということやと思うんですね。だから、社員の人らの達成感も、僕はとても大切なことやと思います。そやないと……おそらく、赤の時代もあったんですよ。スタッフの顔色見てて、そう思ったんですけど」

──よくやめなかったですよね、会社は。

「それはたぶん……最初の2年目から5年目くらい、社員とすれ違ったらよう言われたんです、『コヤソニはほんま楽しいです!』と。『コヤソニやってる時の社員、みんないきいきしてます!』とか、何人かからきいたから。……でも最近、そういう声、きかんから、ちょっとイヤんなってきたんかも(笑)」

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