広島出身の4ピースバンド、RED in BLUE。ジャンルに捉われないハイブリッドなロックで注目を集めてきた彼らが、約2年ぶりとなる音源『FRANKEN MUSIC』をリリースする。ライブで培った強靭なグルーヴとキャッチーなメロディで進化を感じさせつつ、音楽の楽しみ方が多様化を極める今の時代に闘争心剥き出しのメッセージも強烈な1曲だ。その意志と連動するように、この1曲入りシングルを100円という破格で、限定店舗の店頭のみで販売するというのだから、生半可なこだわりではない。収録時間、約3分。余計なものを削ぎ落とし、改めて自分たちの強みと目指すビジョンをここに刻み込んでみせた4人に話を聞いた。
インタビュー=後藤寛子
ジャンルを消化するというよりも、僕ららしい「雑種」のままで、噛み付けるようないい曲になったなって思いました(高橋)
――今回の『FRANKEN MUSIC』が、2017年のフルアルバム『Hybridize』以来の音源ということですが、この2年間はライブを中心に活動してきたんですね。
高橋祐揮(Vo) そうですね、ライブばっかりしてました。
磯村駿介(B・Cho) ちょうど、僕がサポートで入ったタイミングだったのもあって。メンバー同士の関係っていう部分でも、曲を作るよりもライブをまず一緒にしないと、みたいなところがあったんですよ。
田口悟(G・Cho) 曲作りも並行してやってはいたんですけど……それよりもメンバー間の音やライブ感のすり合わせをしたり、プライベートも一緒に過ごしたりを優先していました。このバンドで本格的にツアーとかをするようになってから、メンバーが入れ替わるのが初めてだったんですね。だから、結構そこの動揺もありながら、一生懸命練習とライブをやってたら、曲作りが遅くなっちゃって。
――メンバーが変わって、改めて練習していく中で、それまでとは違う何か、新しい方向性を感じていきました?
田口 すごくいい意味でですが、お客さんに伝わりきらないような、プレイヤー的なこだわりを排除して、音にしても、見映えにしても、要らないものを削ぎ落としていくのに費やした2年だったと思います。そのうえでバンドに筋肉をつけていくっていう。その場にいるお客さんだったり、より多くの人たちに届けようと思った時に、そういうこだわりは小さい世界のことなのかなって思うようになりました。
――ライブを重ねることで、バンドの力を実感できていったからこそですよね。
田口 はい、今すごく実感してますね。
――そこからついにこの“FRANKEN MUSIC”ができあがって。完成した時の手応えはいかがでしたか。
高橋 2年前に『Hybridize』をリリースする時に、僕ら「雑種」って銘打ってリリースしたんですよ。いろんな音楽を自分たちなりに消化して、RED in BLUEの音楽としてリリースしようっていうテーマで出したんです。で、それから2年間ライブを重ねていった結果、どことでも一緒にライブができるよね、とか、どこにも属してないよねっていう感じのことをよく言ってもらえるようになっていて。だから、あえてジャンルを消化するというより、そのまま僕らは僕ららしくいればいいのかなって思って、「雑種」のままで、噛み付けるようないい曲になったなって思いました。
メロディの強さに一点集中した曲を作ってみようって思ったんです。アレンジも歌詞も、そこを狙ってできた1曲という感じです(田口)
――そういう意味では、いろんなことができるバンドなのに、1曲に絞って1曲入りのCDとしてリリースしたのは?
田口 どうしても楽器が好きなんで、よりたくさん弾いてっていう方向に傾きがちだったというか、そこがバンドの強みでもある自負はあったんですけど。いっぱい曲を作る中で、僕らにとってのリード曲ってなんだろうっていうことを考えたんですよね。そうすると、やっぱり歌とメロディだって。だったら、まずはメロディの強さに一点集中した曲を作ってみようって思ったんです。アレンジも歌詞も、そこを狙ってできた1曲という感じです。
――たしかに、キャッチーなメロディが前に出ていて、すごく耳に残りますよね。
田口 メロディができたあとに、楽器隊のプレイについて考えました。あんまりやったことのない方法だったんですけど。
磯村 今までは、音楽を足して足していいものを作っていくって感覚だったんですけど、今回は、たとえばベースも、自分が目立つタイミング以外はずっとボトムを支えるっていうところに重点を置きました。とにかく引いて引いて、ここだって時だけベースを出すみたいなのを、実験的にやった曲だったんですよね。うまくいったなって手応えはすごく感じています。ドラムと一緒に録ったりもして。そういう感覚はシェアしながらできたよね。
山崎慧(Dr・Cho) そうだね。
――リズム隊をシンプルにするって難しいですよね。単純にすればいいって話ではないですし。
磯村 そうですね。最近のロックは、特にうねるベースとかがやっぱり多いから。いや、それでも俺は引くぞ!って。それは自分の中で決めてました。そうしたら、表に出た時により目立つようになると思うから。
田口 サビ以外、ほとんどずっと同じフレーズだもんね。
――それでも、ドラムとのユニゾン感というか、リズム隊ががっちりタッグ組んでグルーヴしてるのが伝わってきました。
磯村 ありがとうございます。嬉しいです。
――山崎さんはいかがですか?
山崎 RED in BLUEの曲って、ギターの悟が全部作ってくるんですけど、いつもデモの段階で、なんか人間が再現しきれないような構成がてんこもりだったんですよ。
田口 はははは!
山崎 なんとか作曲者の意図を汲み取るべく、結構無茶をしてきたんですけど(笑)。今回は同期のサウンドが入ったことによって、いかに自分がドラマーとしてシンプルな立ち位置に立てるかっていうことを考えました。うわものの音と、メッセージ性がすごく強いんで、そういうところをいかに聴かせるかという。
高橋 僕もそうですね。メロディも基本的に田口が作ってるんですけど、今まではほかの楽器隊と一緒で、メロディに関しても音の数が結構果てしなかったんですよ。歌詞の文字数が多かったり、歌うにあたってもなかなかキツイぞ、みたいな(笑)。
田口 ブレスする位置がないとかね(笑)。
高橋 そう、そういうのが多かったんですけど。みんながそれぞれ引き算足し算することで、一体感が増した感じがします。気持ちいい瞬間に、一緒にみんなで気持ち良くなれてるような。最近はライブやっててもそうなんです。
田口 4人で10ずつ持ち寄ってたところを、今回は全員で10になるようにしたというか。
高橋 そう! いいね、その表現(笑)。
今回はリスナーのほうから店頭に行ってCDを決めて買う、みたいなことをさせたいと思った(田口)
――メッセージ性っていうキーワードが出ましたが、今作は伝えたいことがすごく明確で。《生活に溶け込む蝕む ポップは不健全だ/贅沢に横着に摂り過ぎている》とか、テーマも挑戦的ですよね。
田口 そうですね。でも、挑戦的に聴こえるように作った、っていうのがほんとのところで。歌詞カードを見たり、一聴した時に、言いたいことっていうのはある程度の人はわかると思うんですよ。YouTubeだったり、サブスクリプションとかSNSで音楽を聴けることに対して噛み付いてるみたいな……そう見えるようにあえて書いたんですけど、もう一個ちゃんと伝えたい意味があるんです。今、眺めてるだけでどんどん勝手にオススメをしてくれるじゃないですか。音楽だったりコンテンツだったり、ある意味口をあけて待ってるだけで、スクロールしてるだけで耳に入ってくるし、目に入ってくる。で、結局トピック性の強いものがどんどん目に入ってきて、濃い味のものに慣れていくっていう感覚があって。だからこそ、今回はリスナーのほうから店頭に行ってCDを決めて買う、みたいなことをさせたいと思ったんですね。それで、限定店舗で100円で販売するっていうところに結びつきました。そのかたちも含めて、《君にぴったりのミュージック》っていう歌詞にあるとおり、僕らのほうから、君へのオススメですって言っている曲なんです。皮肉にも聞こえるけど、すごくちゃんと前向きな曲になったと思っています。
――まさに、メッセージと発売形態がリンクしていますよね。聴くだけじゃなくて、買いに来てくれ!っていう。
田口 そうですね。そこまでがセット。
磯村 そのための100円です。無料よりずっと聴いてもらえると思って。
高橋 買うっていうのが大事だよね。もらうじゃなくて、もう買いに来い!ってくらいの。
磯村 そうそう。
――CDで聴いてほしいって気持ちは、やっぱりありますよね。
田口 ありますねえ。
磯村 サブスクも全然否定派じゃないですけど……。
田口 全員使ってます(笑)。
磯村 でもCD世代だから、CDが好きですね。そこは間違いないです。
――《君を生かす血肉となりたまえ》っていう歌詞が象徴的だなあと思ったんですけど、聴いて終わりじゃなくて、その先に行動を促すというか。リスナーにエンジンをかけたい!って気持ちが伝わってきました。
田口 《君を生かす血肉となりたまえ》は、書いた時に自分でもすごくグッときたんです。その人の生活の中で息づいてくれて、この曲で朝起きたり、通勤の時とか、帰りに聴いてテンションあげてくれたり、そういうものになってくれると万歳だと思って書きました。
――強いワードですよね。歌うほうとしてはいかがですか?
高橋 そこは歌っていてもすごく気持ちいいです。気持ちいいという意味では、最後の《踊るのさ 舌の上で》っていう落ちメロからの♪オエオエオ~に繋がるところ。抑揚と爆発みたいな展開は、すごくレコーディングでも意識したところです。
――そこからの転調もいいですよね。歌詞に《最後の一口まで》ってあるように、最後まで聴かないと一番気持ちいいところにたどり着けない展開になっていて。このアレンジについてはいかがですか?
田口 これでも、めちゃめちゃ削ったんですよ。この曲をより濃いものにしていこうってなった時に、たくさん削ぎ落として、贅肉になり得る部分を全部とって、アスリート体型にして出しました。最初はものすごく手の込んだ転調の仕方をしていたんですけど、もっともっと短く、わかりやすくって。僕の中のプレイヤー気質なところを1回排除して。
――珍しく、ギターソロもないですもんね。
田口 ないです。弾きたかったんですけど(笑)。言葉とメロディが主役の曲っていうところで作れたと思います。今までできなかったことです、こんな引き算。
――削ぎ落としていこうっていう田口さんの方向性について、みなさんは?
山崎 僕としては最高でしたね!(笑)。
高橋 ははははは!
山崎 その気持ちは僕の中にもあったんで、いい成長だと思います。
磯村 僕も、もう大賛成って感じでした。一番印象に残るところは残せたし。たぶんリフが一番印象に残ると思うんですけど、最後は全パートでリフをユニゾンして終わるっていうところまで、ストーリーを感じるアレンジにできました。
田口 メンバーそれぞれがフォーカスするポイントが合っていたというか、察しながらできたかもね。背中を預け合いながらできた感じがあります。でも、何年もバンドをやってきて、それぞれプレイヤーとしての癖があるので。だから、どれだけシンプルに削ぎ落としても、滲みでてくる部分があると信じています。そうは言ってもいろいろやってると思いますし。
磯村 さっきも、バンドのリードトラック、強みが何か考えた時に、絶対メロディだっていう話がありましたけど、今回のシングルも、極論メロディを聴いてもらえたら、RED in BLUEってわかってもらえる曲になったので。いくら削っても自分たちらしさっていうのは残っていると思います。
自分たちがもっと強くなりたい、かっこよくなりたいって過程の中で、次の行動をみんなと一緒に起こしていきたい(田口)
――さらに、この『FRANKEN MUSIC』発売にあわせて、ミニアルバム『MUTANT CIRCUS』のリリースが解禁になりました。
田口 めっちゃいい曲できてるんで! “FRANKEN MUSIC”で振り向いてくれた人は、次も気にしてもらいたいですね。1曲の中にあれもこれも詰め込むんじゃなくて、ミニアルバムって作品の中に、この曲はこれ、ってそれぞれ役割を与えながら作れたと思います。作った時は、この曲普通すぎませんか?って思うくらいだったんですけど(笑)、しっかり癖もでてるし、めちゃめちゃいい曲だよって言ってもらえた曲とかもあって。
磯村 逆に、テクニカルな曲も入ってるし、激しい曲もあったりします。
田口 そう、ギターがピロピロしてる曲もあります。もう我慢できひん!みたいな(笑)。
――いろいろやりたいことを、今度はそれぞれの曲に落とし込めたんですね。
田口 そうです。
――“FRANKEN MUSIC”に込めた、聴くだけじゃなくてリスナーを動かしたいって意思はアルバムにも続いていますか?
田口 はい。やっぱり、自分も音楽に突き動かされてきた人間なので、今度は動かす側になりたいです。でも、引っ張っていくぜ!っていうたちの人間ではないので、どちらかというと、自分たちがもっともっと強くなりたい、かっこよくなりたいって過程の中で、次の行動をみんなと一緒に起こしていきたいなって。もともとマイナススタートの人間が始めた音楽なので、俺らでもここまでなれたから、全然君たちも大丈夫だよ、というのが常に前提にある気がします。背伸びはほとんどないかな。歌詞も、ほんと等身大だったり、なにかしらに投影して書いてるし。
高橋 僕らも音楽と一緒に変わってきたので。特に僕なんかは、もっと全然うじうじクヨクヨしてるタイプの人間だったんですけど、ライブをやって変わってこれたし、まだまだ変わりたいと思ってますから。音楽で、自分に言い聞かせている部分もあるしね。言わなきゃ何も始まんないくらい、足が動かない人はたぶんいっぱいいると思うので、そういう人の背中を押せたらいいなと思っています。
“FRANKEN MUSIC”
ニューシングル 『FRANKEN MUSIC』 2019年8月21日発売
価格:¥100+税 LABCR-0003
販売店舗
タワーレコード:札幌ピヴォ店、新潟店、渋谷店、新宿店、横浜店、名古屋パルコ店、梅田NU茶屋町店、 梅田大阪マルビル店、広島店、福岡パルコ店
ヴィレッジヴァンガード:渋谷本店、横浜ワールドポーターズ店、イオンモール倉敷店、 広島段原SC店、Freaks福岡パルコ店
蔦屋書店:熊本三年坂
ライブ情報
RED in BLUE presents 『FRANKEN MUSIC』RELEASE PARTY
“BATTLE OF CYCLONE”
場所:SHIBUYA CYCLONE
日時:2019年9月6日 (金)
開場 18:30/開演 19:00
出演:RED in BLUE / MOTHBALL / MOSHIMO
チケット:adv ¥2,500 / door ¥3,000
RED in BLUE RELEASE TOUR【BATTLE OF RIVERST】
場所:新潟CLUB RIVERST
日時:2019年9月7日 (土)
開場 17:00/開演 17:30
出演:RED in BLUE/LONE/dragonchina/Monstera/ホロトニア/マチカドラマ
チケット:adv ¥2,000 / door ¥2,500
RED in BLUE 『FRANKEN MUSIC』RELEASE PARTY
“CHAOTIC NIGHT” フリーワンマンライブ
場所:広島 CAVE-BE
日時:2019年9月28日 (土)
開場 17:30/開演 18:00
Ticket FREE !!!!
提供:Lastrum
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部