phatmans after schoolから「saji-サジ-」とバンド名を改め、今年新たなスタートを切ったヨシダタクミ(Vo・G)、ユタニシンヤ(G)、ヤマザキヨシミツ(B)の3人。TVアニメ『あひるの空』のエンディングテーマ“ツバサ”を表題曲とする彼らの最新シングル『ツバサ』は、phatmans時代から培ってきたバンドサウンドの躍動感はそのままに、ポップの「その先」へ向けて大きく扉を開け放ったような爽快な作品に仕上がっている。
UnLimited〜phatmans after school〜sajiとバンドの形を変えながらも、そのエモーショナルで澄んだ歌声越しに清冽なポップを響かせてきたソングライター=ヨシダタクミ。キング・アミューズメント・クリエイティブを新たな活動の舞台に選んだ彼らは今、最も充実した季節を迎えつつある――ということが、以下のメンバー全員インタビューからも伝わることと思う。
インタビュー=高橋智樹
一生懸命に楽曲に向かって自分を磨いていくだけですけど……ちょっと新鮮な面はありますね、やっぱり(ユタニ)
――「saji」という新しい名前でのスタートを切る、っていうことはいつ頃から考えてたんですか?
ヨシダタクミ(Vo・G) 今年に入ってからですね。1〜2月から――まだその時は名前は決まってなかったですけど、ぼんやりと「改称しよう」っていうのは考えてましたね。これは今もそうですし、当時もそうでしたけど、系譜としてphatmansを終わらせようという意図はあまりなくて。僕らメンバーも変わってないですし。ただ環境としては――キングレコードの中でも、僕らが身を置くキング・アミューズ(キング・アミューズメント・クリエイティブ)というのは特殊な場所なので。音楽シーン的にも、バンドシーンとは違うところへのアプローチが増えていくことにもなるので。「新人としてやっていこう」っていう気持ちですね。なので、ニューシングルというよりは「メジャー1stシングル」として打たせていただく形にはしてます。
――phatmans時代にも、phatmans after schoolとUnLimited(phatmansの前身バンド。ヨシダ&ユタニが在籍)の対バン企画とかもやってましたし――。
ユタニシンヤ(G) ありましたね(笑)。
――phatmansにも“過去現在未来進行形”っていう曲があったりするし、時系列を超えて音楽がつながっていくっていう感覚は、たぶん自然なものとしてあるんでしょうね。
ヨシダ うん、そうですね。僕自身はUnLimitedもphatmansもそうですし、sajiになってからも、作詞作曲の部分は僕が100%担ってやっているので。僕自身、音楽に対するスタンスは不変というか、変わらずに「自分で思う『いい音楽』を作ろう」っていう。マネジメントも、10年近く籍を置いてたところを今年の春先に退所しまして、今まで関わってきた大人たちが全員一新されたわけですけど――不安はあんまりないですね。楽しみっていうのが強いです。
ユタニ 新しいスタートを切ったっていう気持ちの反面、僕がやっていくことは今もそんなに変わってないので。一生懸命に楽曲に向かって、自分を磨いていくっていうだけなので。そんなに気持ちは変わらないんですけど……まあ、ちょっと新鮮な面はありますね、やっぱり。
ヤマザキヨシミツ(B) キングレコードさんとかがすごく後押ししてくれてるっていうか、「一緒になって戦おう」っていう――ひとつのチームみたいな感じでやってくれているので。意識しなくても、勝手に高揚感っていうか、そういうものは感じてますね。
「バンドを組んで世に出る」しか手段がなかった僕らの世代も、どんどん面白いことをやっていいんじゃないかって(ヨシダ)
――そういう形でバンドを取り巻く環境が新しく整ったというのも、ひとつ大きな要素だと思うんですけども。それに加えて、ヨシダさんに関して言えば、monoralismというクリエイターチームにも名前を連ねていて――。
ヨシダ はい。よくご存知ですね(笑)。
――monoralismはヨシダさんと、今回もアレンジで参加されているアオヤマイクミさん、中島生也さん――中島さんはそれこそかつてUnLimitedのメンバーでもあったわけで――と、サポートドラムのタイヘイ(ex.カラスは真っ白)さんという顔ぶれで。バンドのソングライターでありフロントマンでもある人が、クリエイターチームの一員でもある、っていうのはわりと珍しい例だと思うんですけど?
ヨシダ そうですね。とはいえ、別に契約も何もしてないですし、友達のサークルみたいなものなんで。monoralismっていうもの自体も、僕がもともと招集をかけて――僕ら全員同い年で、北海道出身なんですね。僕ら世代の、20代後半の人間たちって、バンドもそうですけど、結構多方面で活躍してる人が多いんですよ。同い年で言うと米津(玄師)くんとか、KANA-BOONとかもそうですし……いろんなところでつながりとか付き合いがあったり、僕の中では「音楽を生業として成功している仲間が多いな」っていう印象があって。せっかくいろんなつながりがあるから、こういうサークルみたいなものがあってもいいんじゃないかな、っていう話をして。で、集まってみたら、幸いそこでアニメの原盤制作のお話をいただいたり、僕が個人でやってるものの制作物を一緒に作ったり、っていうことがあって。
――バンド/レーベル/マネジメントという旧来型の枠組みでなく、そういう旧知の仲間ともチームを組んで制作に向かえるというのは、ヨシダさんにとっても大きいと思うんですよね。
ヨシダ そうですね。僕らの世代の時って、まだ「バンドを組んで世に出る」しか手段がなかったんですよね。今の若い子たちって、クリエイティブなことをして、作品をネットに上げるじゃないですか。で、大人になった今、世の中的にはそういう面白いムーブメントがどんどん生まれてきてる中で「別に俺らぐらいの世代になっても、そういうことをやってもいいんじゃないか」と思って。