2019年12月に1stアルバム『混在ニューウェーブ』でメジャーデビューを果たしたvivid undress。彼女たちが今作『変身コンプレックス』で表現しているのは、タイトルからもわかるとおり「コンプレックスもすべてさらけ出して変化していこう」という意志表示だ。初めてMVで笑顔を見せたというリード曲“主演舞台”を筆頭に、新たなアプローチを随所に施し、変化と真摯に向き合うバラエティに富んだ全6曲。kiila(Vo)、yu-ya(G)、syunn(B)の3人に、今作の真相を訊いた。
インタビュー=沖さやこ
迷っている自分からとにかく抜け出したかったんです。実際のわたしはわかりやすい人間だし、けっこう素直だし。そういう部分をもっと知ってもらいたかった(kiila)
――ここ数ヶ月、メンバーそれぞれの楽曲解説などの動画制作、今作のアルバムタイトルにちなんだリスナー参加型の「NEW YOUプロジェクト」、ウェブラジオなど、配信ライブ以外にもインターネットを使って積極的な発信をなさっていますよね。kiila(Vo) 応援してくださる方々となかなか会えない状態なので、「わたしたちは元気です、みなさんも元気でいてほしい」という気持ちを常に発信して、光を絶やさないようにしていきたくて。
shunn(B) 「NEW YOUプロジェクト」も、少しでも前向きになってくれたらな、という気持ちで始めました。
yu-ya(G) その想いで僕も50日間連続筋トレをしています(笑)。
――yu-yaさんのお宅の可愛いワンちゃんも登場した筋トレですね(笑)。この取材日はチャレンジからちょうど30日目のタイミングですが、筋トレの効果は出てますか?
yu-ya 出てます! 最終日までにクリスティアーノ・ロナウド選手と同じくらいの肉体にすることが目標なんですけど、達成できなかったらメンバーに焼肉をおごります(笑)。
――はははは。そういうポジティブなムードは、今作『変身コンプレックス』の作風にもつながってきますね。全編通して「変化」がキーワードの作品ですが、これにはどんな背景があるのでしょうか。
kiila 今作のそもそもの発端が、ディレクターとも話していた「kiilaという人物像が見えるアルバムにしよう」、「どんな人なのかわかるように歌を大切にしよう」ということだったんです。おまけにちょうどその時期、わたしは「このバンドにおいてどんな人間であるべきか」、「そもそもわたしはどんな人間なんだろう?」、「今後このバンドはどんなことを発信していくべきなんだろう?」と悩んでしまって。前作『混在ニューウェーブ』で自分の持っているものを出し切ったからこそ、わからなくなってしまったんです。
――『混在ニューウェーブ』はkiilaさんの心境の変化がそのまま歌詞に表れた作品でしたが、今作はさらに「変わっていきたい」という意志が克明に記されているのが特徴的だと思います。
kiila 迷っている自分からとにかく抜け出したかったんです。vivid undressのkiilaは「取っつきにくい」とか「怖そう」とか「なに考えてるかわかんない」みたいに言われることが多くて(笑)。実際のわたしはわかりやすい人間だし、けっこう素直だし。そういう部分をもっと知ってもらいたかった。
――「違う別のなにかになる」というよりは、「今まで見せられなかった自分の顔を見せる」という意味での、「生まれ変わりたい」という願望や「変化」ですね。
kiila うん、まさにそうですね。その気持ちが露骨に作品に出ました。曲が揃った時に「あ、わたしは生まれ変わりたかったんだな」と気付いて、『変身コンプレックス』というタイトルが出てきたんです。
過去の自分が頑張ってくれたからこそ、今の自分が強く生きていける(kiila)
――“主演舞台”は「生まれ変わりたい」と走り出した瞬間の心境が描かれていますが、同時に過去の描写も多く登場するところがキーになっていると思うんですよね。kiila 今までは自分の抱えてる感情だけで書いてたけど、「作品を聴いた人が少しでも背中を押されるものになったらいいな」とも思ったので、“主演舞台”は上京したての頃の気持ちを思い出しながら、ちょっと俯瞰な視点で書いたんです。過去の自分のエピソードを曲にすることはこれまであまりなかったので、新鮮だったし挑戦でした。昔は過去の自分のことが大嫌いだったし、自分を辞めたいって何度も思ったけど、今はすごく愛おしい。過去の自分が頑張ってくれたからこそ、今の自分が強く生きていけるなと思いますね。最近生きるのが楽になったんです(笑)。
――Twitterでも呟いていらっしゃいましたね。「どんな自分になりたいかより、どんな自分でいるときが好きかを大事にしている」って。
kiila 自分じゃない自分を無理矢理演じるのは、ものすごく高いヒールを履いてずっと歩くのと同じで、とても疲れてしまって。それは「どんな自分でいるときに周りや自分が好きになってくれるか」という自分像とは真逆だったんですよね。今作の歌詞はそういう自分が出せているので、すごく気に入っているんです。わたしという人物像を見せるために、楽器陣もボーカルを立たせるアレンジを考えてくれました。
――となると、バンド全体で新しい扉を開けたということですよね?
yu-ya 「現状からステップアップしていこう」という話は、集まるごとにしましたね。
kiila 「アップデートしよう」は口癖だったね。やっぱり、バンドをやるからにはワクワクしていたい。それはわたしたちにとって、同じことばかりして慣れることではなく、ずっと挑戦できる場所であることなんです。前作まではアレンジにも細かく口出ししてたんですけど、今回は6年バンドを続けてきたからこそ築けた信頼関係があって、安心して任せられたんです。メンバーの温度感もすごく良かったんですよね。
yu-ya 前作はみんなで会う機会がなかなかなくて、データのやり取りで制作をしていたんですけど、今回はみんなでスタジオに入ってアレンジを考えることが多くて。そのぶん、バンドとしての強度は上がってる気がします。
syunn 全員で「この曲はこんなふうにしたいね」という想いを共有したなかでの制作だったので、ひとつのゴールに向かっていけました。だからこそしっかりまとまったオケが作れたのかなと思いますね。