去年の9月に体調不良でライブ中止を発表して以来、ほぼ表に姿を現さず全く音沙汰のなかった横山健からデカいニュースが届いた。6曲入りミニアルバム『Bored? Yeah, Me Too』リリース!である。そして編集部に音源も届き、インタビューのスケジュールももらった。完全に「Ken Band始動!!!」である。すぐにカメラマンとともにPIZZA OF DEATHへ向かった。健さんは元気で、メンバーも嬉しそうだった。アホな写真とエモいインタビューをとってきた。横山健の体調やKen Bandの新ドラマー・松本英二の加入も含めた過去のいきさつから現状について、インタビューですべて語られた。そしてインタビュー内でも僕は力説しまくっているのだが、新ドラマー・松本英二が加わった新生Ken Bandの初の単独音源となるミニアルバム『Bored? Yeah, Me Too』の内容がとにかく素晴らしい。前作のオリジナルアルバム『SENTIMENTAL TRASH』での50'sロックンロール回帰を経て、その懐の深さを踏まえたうえでもう一度パンクへとダッシュする、その疾走感とギリギリ感がひたすらエモく、そして全曲ほんとに曲がいい。やっぱり横山健、別格。
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=Patrick Tsai
バンド自体も休憩が必要かなっていうタイミングでもあったんですよ。結果オーライっていうんじゃないですけど、今すごくいい状態です(南)
――去年、体調不良でライブが中止になって。そうこうしているうちにコロナ禍になり、本当に音沙汰がなくなり。そうしたら突然、新作のミニアルバムが届いて。ものすごい手応えを感じる超ド級の作品でびっくりしました。Ken Band大丈夫かなって思ってたんですけど、ここまでの半年間とこのミニアルバムの突き抜けてるパワー感っていうものが、なんか辻褄が合わないっていうか(笑)。横山健(Vo・G) ギャップがすごすぎる(笑)。
――どうだったんですか?
横山 9月入って北海道ツアー(「Still Age Tour Ⅱ」)の途中で「あれ? 俺ちょっとおかしいかも」って。突然きたんですよ。その原因はわかんないんです。ストレスもいっぱいありましたけど、それはみんな生きてりゃあるようなものなんですよ。まあ、調子が悪くなった。それで北海道から盛岡に流れて、フェス(「いしがきMUSIC FESTIVAL2019」)の前日にメンバーに集まってもらって「俺ちょっとまたまずいかも」って告白して。それをPIZZA OF DEATHに話したら、「もう今決まってるの全部止めましょう」っていう措置を取ってくれて。そんな感じです。
――なるほどね。
横山 30歳の時に俺一回やっちゃったじゃないですか。あれとたぶん同じだと思うんですけど、今回すごく軽度だったんですよ。周りの理解もあったし、自分で気づくのも早かった。だから11月にはスタジオに復活しましたね。本調子じゃなかったですけど、ライブはキャンセルしちゃったから、とにかく新曲を作ることが自分のアイデンティティなんだろうなっていうか。でも、キャンセルした以上、あんまり元気アピールをするのもなあと思ったんです。SNSでアピールするのもダサいし。
――そうなった時、メンバーとしてそれぞれどういう思いを持ったんでしょう。
Jun Gray(B) もう止めようってなった時は、どこまで止まるのか全くわかってなかったので。半年なのか1年なのか、1年半、2年なのか全然見えなくて。でも止めるしかなくて。それで、1ヶ月ちょっとでやりたいって言ってきたんで、なんつーか、もう動いてくれるのか、みたいな。さっき言ってなかったけど、曲作りはずっとやってたんですよ。去年、もっと前から、アルバム作りたいねって言っていて。その途中だったので、じゃあまたそれに戻れるなっていう。安心したっていう感じですかね。
松本英二(Dr) 自分は入ったばっかだったんで、とりあえず自分が焦ってもしょうがないから、いつ戻って来てもいい状態にしておこうっていう気持ち、その一心で待ってました。いつでも戻って来られるような体制をキープする役回りでいようかなと思って。
南英紀(G) その前の1年間は、新しくえっくんが入ってツアーしていて、その前はもう辞めるっていうメンバーを抱えてツアーしていて、なんだかんだ2年くらい……通常運行じゃない活動をしていたので、わりと疲れてはいたんですよね。で、バンド自体も一回休憩が必要かなっていうタイミングでもあったんですよ。それから健さんは戻って来てくれたんですけど、100%じゃなかったので、時間かけていくしかないなっていうところでコロナが――あんまりこういうこと言っちゃいけないんですけど、ちょうどあって。結果オーライっていうんじゃないですけど、今バンドはすごくいい状態です。
ちょっとフライングかもしれないですけど、この次はもうフルが待ってるんです、俺ら。いいふうにばっか出ちゃって(笑)(横山)
――復活して曲作りに入ったんだけど、そのすぐあとにコロナが来ちゃったの?横山 比較的すぐですね。本当はアルバムを4月に録るはずだったんですよ。実は2回キャンセルしてるんですね。9月の段階で、実は去年12月に組まれてたのも当然キャンセルで。で、俺の調子が良くなって、スタジオに戻って曲も揃ってきて、今年に入って4月にレコーディングの予定を立てたんですよ。そしたら2月くらいにコロナがまずいことになってきて、3月の半ばには俺らの練習もストップしたんですよ。で、当然それは4月のレコーディングを飛ばすことを意味しますよね。3月の半ばから5月いっぱいまで練習も休んで。それはもういわゆる自粛期間ですよね。
――ひとつよくわからないのは、アルバムを作る予定だったんですよね?
Jun そう。去年の段階ではアルバム。
――で、今回できたのがミニアルバムなんだけど、これは当初作ろうと思っていた作品なんですか?
Jun その時は思ってないですね。
横山 去年の12月はフルアルバムを録ろうと思ってた。それが白紙になって、今年の4月に立てた予定では、シングルとアルバムを録ろうと思ったんです。
――じゃあ、シングルを挟んで、フルアルバムをもうちょっと先にっていう。
横山 はい。『SENTIMENTAL TRASH』の時みたいに、シングルとアルバムを矢継ぎ早に出す予定だったんですけど、それがコロナでポシャった。その間に曲は増えていくじゃないですか、作り続けてるんで。これはもうミニアルバムかなと。だから、ちょっとフライングかもしれないですけど、この次はもうフルが待ってるんです、俺ら。
――結果として取れ高は増えてるんだね。どういうことそれ?(笑)。
横山 謎なんですよ。いいふうにばっか出ちゃって(笑)。笑ってるけど(笑)。
英二 イマイチだねってボツにするくらいの余裕がある感じですよね。
南 そうそう。
横山 今までだったら作ったもの全部入れてたくらいの感じだったんですよ。そのあとになって、これはアルバムにはいらなかったかもなって曲が1曲2曲出てきたりとか。でも、それがKen Bandなんだなって感じてたんですよね。なんだけど、今回ミニアルバム録って、今アルバムのこと見てるじゃないですか。すごく焦点の絞れたものになってくと思うんですよ。
ネクストレベルに持っていくくらいのいいものを作ろうとするんだったら1年くらいライブできない(横山)
――なんでそういうことが起きたの?横山 なんでだろう……今までだったら時間ないし、これでいくしかないみたいな。それも良し悪しだと思うんですけど。だって、そこで悩んでたら、それこそガンズとかみたいにずっとアルバムが出ないじゃないですか。納得いくまで曲作りしようなんて言ったら、やっぱり5年10年かかりますよ。なんだけれども、今はすごく検証とか精査する時間があるんですよね。
――いろんなアーティストに、作品がパワーアップした理由を聞くんだけど、みんなコロナが関係してるって言うんだよ。それは精神的な意味で影響を受けたのかなと思っていたんだけど、やっぱり時間ができたからっていう。キチキチな中でやっていたのとは違う時間感覚でやると、ジャッジもシャープになるし、作品のテンションやクオリティが上がる。理由としては味気ないけど、そういうことなんだなって。
横山 そうなんですよ。味気ないけど、そういうことなんですよ。ネクストレベルに持っていくくらいのいいものを作ろうとするんだったら1年くらいライブできないですね。やっぱライブはしたいですよ。今はできないですけど。だから、この時期ってすごく特別な時期で、今制作してるバンドって相当濃厚な作品出すんじゃないですか?
――それで、これができて。前作『SENTIMENTAL TRASH』は、ロックンロール回帰じゃないけど、ロックとかパンク自体を新鮮に見直してトライした感じだったけど、今作は方向性が全然違いますよね。
横山 そうですね。自分で言っちゃあれだけど、今回はやれることの中でやった感はあるんですよ。本当は自分なりにトライはしてるけれど、聴く人からは些細なことすぎてわからないレベルだと思うんですね。でもやっぱ、Ken Band節みたいなものを持っているのは新作だと思うんですね。
――ただ明らかにパワーアップして、攻撃力がすごく増してると思います。今回のこのメンバーになって初めて、まとまったかたちで新しいサウンドの音源ができあがってどうですか。
南 えっくんは今回絶対迷いなく、自信持って叩いたと思うんですよね。それがすごく伝わってくるし、僕も本当に今回は自分のギター弾くことだけに集中して録音できた。
横山 バンドリーダーなんですよ。だから南ちゃんがそう言うってことはそうなんだろうなっていう。
「Ken Bandは圧倒的でなければいけない」っていう哲学も持ってます。それも去年えっくんがすごく悩んだことだと思う(横山)
――えっくんは、この感じのグルーヴで、FACTっていう経歴もあって、さっき歳を聞いたら41歳なんだってね。英二 あ、そうです。
横山 そう、若手じゃない(笑)。
――そこもいいよね、味わいとして(笑)。Ken Bandってもう歴史も長いじゃないですか、いつの間にか。
横山 16年。
――メンバーも代わってるじゃないですか。でも、Ken Bandはすごくタフに進んでいますよね。このミニアルバムを聴いて、久々にそれをモロに感じた。
南 そこが去年ツアーしてての課題だったっていうか。3人は、メンバーも代わったから上を目指していて、どんどん「来い来い!」みたいな感じだったから、苦労してたと思います。
英二 でも、さっき歳の話したけど、もう40代に入って、俺の中では最後のビッグオファー(笑)。ここで結果を出せなかったら、すべてがパアになるんだろうなってくらいの気持ちでやってます。
横山 俺はさっき山崎さんが言った「Ken Bandってすごくタフだよね」ってことを受けてお話ししたいんですけど。まずね、集団ってことに対して哲学があるんですよ。ひとり人が代わったらもう振り出しですよね。過去の実績の上にあぐらかいて、うまくやれないこともないんだろうけど、やっぱりそこに真正面からぶつかっていきたいんですよ。で、それぞれのキャラクターとか技量とかを活かして、うまくはめこむ作業が去年のツアーしながらの苦しみだったのかなって。あと「Ken Bandは圧倒的でなければいけない」っていう哲学も持ってます。それも去年えっくんがすごく悩んだことだと思うし。でも、図らずもライブが止まって、作品に向かったところで、このバンドが噛み合った気がするんです。
南 ひとつ、僕ら3人の共通点があって。そこそこ活躍してたバンドが解散して、健さんに拾ってもらってるんですよ。僕はKEMURI、えっくんはFACT、で、Junさんはケントリ(KENZI & THE TRIPS)とかいろいろやってきて。だから健さんに対する感謝の気持ちはめちゃくちゃあるんですよ。やっぱりリーダー、健さんのために100%やるっていう。もちろん4人でひとつのバンドっていうのもあるんですけど、そこがすごく3人は共通していますね。
横山 そんなの言われたことないから照れるじゃん。
――(笑)。体調はもう大丈夫なの?
横山 もうすっかり大丈夫です。太っちゃいましたもん(笑)。
――自らのレーベルから直販みたいなことも新しいトライアルだよね。
横山 そうですね。それはすごくこの時期ならではというか。自粛で怖くて家出られなかった時の経験が活きるんじゃないかなと思って。
――これがうまくいくと、後続の人たちのヒントにもすごくなると思う。お金を稼ぐことを諦めざるを得ないような状況に、ただでさえコロナの前からそうなってきていたのに、さらに追い込まれているから。
横山 ね。コロナは怖いけれど、ここから何か発想できるものっていうのは絶対ありますよね。音楽だけじゃなくても、何をやってる人でも。
Ken Yokoyama 1st Mini Album「Bored? Yeah, Me Too」Trailer【レーベル直販CD】
●リリース情報
2020.9.25 発送開始
品番:PODR-2/価格:¥1,650(税抜)
PIZZA OF DEATH RECORDS レーベル直販作品(通販のみ)
提供:ピザ・オブ・デス・レコーズ
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部