Tempalay、2020年の人間を描き切る4thフルアルバム『ゴーストアルバム』を語る

Tempalay、2020年の人間を描き切る4thフルアルバム『ゴーストアルバム』を語る - Photo by 鳥居洋介Photo by 鳥居洋介

綾斗っていう人間の考え方が面白いなと思うんです。ちゃんと物事を俯瞰していろんな側面から見てる(AAAMYYY)


──でもまさにTempalayってそういうバンドだし、このアルバムもそうですよね。それこそ生き死にみたいなことも同じ熱量で歌っているというか。“春山淡冶にして笑うが如く”とかとくにそうなんだけど。

小原 答えが出てないですからね。生き死になんてめちゃくちゃいろんな捉え方ができるじゃないですか。死ぬっていうことで宴をしていたみたいな文化もあるし、やっぱり葬式で坊さんとか見てると笑ってしまいますよね。そういうふうに物事にはいろんな一面があって、そういうのをなんか真剣にからかうようなことで、より一層、それが深く映るっていうところがあるんじゃないですかね。

──“Odyssey”とかを聴いていても思うんですけど、いいとか悪いとかじゃない、両面ある人間とか、あるいは日常とか生活とか、そういうものを描いている気がするんですよ。それはやっぱり2020年だったからなんですかね。

小原 どうなんですかね。でも、明確に言いたいことが……思うんですけど、ミュージシャンなんて歌うこと、別にないと思うんですよ。無理やり引っ張ってきてると思うんです。でも……それで言うと今回はたとえば地震とかそういうことじゃないじゃないですか。政府がどうとか、そういうことでもない。今回のこの事態って、要は自分に立ち返るというか、自分が本来こういう人間でこういう人生であったみたいなものをどうしたって突きつけられるものだと思うんです。だからそれ以外に歌うことはないなって感じでした。別にマイナスな意味でもなんでもなく、そういうふうになったっていう。

──AAAMYYYさんは綾斗さんの歌詞を歌う時にどういうことを考えているんですか?

AAAMYYY 私、最初は全部フリガナふって音として歌うんですよ。意味とかは考えずに。でもミックスとかで聴いた時に、今この言葉が入ってきたとか、そうやって徐々に理解する感じです。このアルバムについては今やっとそれが始まってきた感があります。やっぱり綾斗っていう人間は、冷めているわけじゃないけど、そういう目線で物事を見てるので、その考え方も面白いなと思うんです。こうしろとかああしろとかじゃなくて、ただそういうことがあるよみたいな感じなんですよね。ちゃんと物事を俯瞰していろんな側面から見てる。

小原 まあ、狭いんでしょうね。僕の世界観が。愛情を注がれたい部分が狭い。だから対象によって態度がまったく違うんですよ。そういう意味で冷めてるのかもしれない。

ウルトラマンがかっこ良く登場すんねんけど、その瞬間に踏み潰されて死ぬ人がいる。そういうのってすごく妙じゃないですか(小原)


──ちなみに綾斗さん的に今ぐっと来てるものって何かあるんですか?

小原 なんだろう……あ、『レゴ®バットマン ザ・ムービー』っていうのがあるんですけど。ブロックの人形でバットマンをやってるんですけど、要はみんなが思ってるバットマンっていうものを前提としたパロディなんですよ。僕が好きな作家さんが『なんらかの事情』っていう本を出してるんですけど、たとえば『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーって寝る時どうしてるんやろう、みたいなことを書いてるんですよ。悪の帝王も一仕事終わって家に帰って「ふう」って落ち着く瞬間があるのかなとか。彼もマスクを取って顔を拭いたりしている瞬間があるわけじゃないですか。そう思うとちょっと愛しくなる。バットマンのもそういう映画なんですよ。何の話ですかね、これは(笑)。

──要するにダース・ベイダーも人間なんだっていうことですよね。

小原 うん。そういうのってすごく妙じゃないですか。たとえばウルトラマンがめちゃくちゃかっこ良く登場すんねんけど、登場した瞬間に踏み潰されて死ぬ人がいるみたいな。そういうものが好きなんですよね、僕。

──実際の世の中はそうじゃないじゃないですか。ウルトラマンに踏み潰される人はいないものとして扱われるわけで。でもそれって違うんじゃねえ?っていうことだと思うんですよね。

小原 そうなんですよね。それこそまさしくくだらないことと真剣なことを両方捉えることで見えてくるものですよね。それはなんか、自分の音楽に通ずるなあという感じがします。

──『ゴーストアルバム』の「ゴースト」っていうのもそういうことだと思う。見えないけど存在しているものっていうか。そこに向けて眼差しを注いでいる作品なんだなって思いますよ。

小原 すごいいいこと言いますね(笑)。でも本当にそれで、ジャケットもマジカル・アイ(焦点をずらすと立体画が見える画像)なんですよ。表面的なものではなく、奥に見えるものっていう。あと普通に、みんなこの1年、もう生きてんのか死んでんのかわからん、やりようのない感情があったし。でも、それって憤りとかじゃないんですよね。それを歌っていると気持ちいいから歌ってる。自分の胸がギューっとなるかならないかが基準なんです。

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