16歳のシンガーソングライター・久保あおい。成長と恩返しのために過去と向き合った“独り言”と“邂逅”を語る

16歳のシンガーソングライター・久保あおい。成長と恩返しのために過去と向き合った“独り言”と“邂逅”を語る

同じような気持ちを抱える人同士で、どんなことを感じたのか意見を交換し合えたら

――12ヶ月連続作品では今のところ、曲作りの前にまず久保さんがエッセイのような「散文」をお書きになっているんですよね。“独り言”の散文には誰とも会いたくない1日が綴られていました。普段からよくこういうテキストをお書きになるとのことで。

「はい。だからもともと“独り言”の散文も歌詞にするつもりではなく、その日のことを書き起こしたいなと思い立って、一つひとつ思い出しながら書いていったものなんです。誰にも会いたくない日、ひとりになりたい日、何かにくるまりたい日がわたしにはめっちゃあって。この日もそうだったんですけど、わたしには帰る場所があるんだなと実感できた日でもあるんですよね。それにじーんとしたというか」

――ひとりで出かけていた久保さんに、お母様が17時に「早く帰りなさいよ」とメッセージを送ってくれたというシーンですね。

「そうです。その時に『わたしには帰る場所があるんだ』と気づけました。家庭環境が複雑なこともあって、ちゃんと心配してくれる人がいるという幸せになかなか気づけなくて。ふさぎ込みがちな毎日がちょっと晴れた、気持ちがラクになった日でもあるので、すごく記憶に残っていました。ほんと独り言みたいな曲なので、ナチュラルに聴けるアレンジにしていただけて、思った通りのものができました」

――今のお話を聞いていて、久保さんはひとりになりたい瞬間は多いけど、孤独は苦手なのかなと思いました。

「そうですね……(笑)。孤独ってひとりでもみんなでいても訪れるものだと思うんです。わかってもらえないと、孤独感が生まれちゃったりするというか」

――たしかに。そうですね。

「特にわたしは同じような経験をしている人があんまりいないから、どんな時でも自分と同じような気持ちの人を探しちゃうのかも。だから音楽でも、同じような気持ちを抱える人同士で、どんなことを感じたのか意見を交換し合えたらなと思うんですよね。アップされている自分の曲のコメント欄で、聴いてくれた人がその人自身のことや思いを書いてくれているとすごくうれしいんです」

わたしの居場所は家なんです。それは目で見える居場所だけど、「心の居場所」は目で見えない

――12ヶ月連続リリース第2弾の“邂逅”は、久保さんの書いた散文をもとにシンガーソングライターの上野大樹さんが作詞・作曲を手がけています。久保さんはもともと上野さんの“て”という楽曲をよく聴いていたそうですね。

「上野さんは聴き手に問いかけるような曲を作る人だから、聴いていると普段隠している本心を読まれているような感覚になって、自然と涙が出てくるんです。わたしはピンポイントに向けた言葉しか書けないけど、上野さんはいろんな人に響く言葉に落とし込める人なので、今回『心の居場所』という散文をお渡しして、それを曲にしていただきました」

――「わたしの居場所」ではなく、わざわざ「心の居場所」と言っているのには意味があるんですよね?

「“独り言”の物語でも出たように、わたしの居場所は家なんです。それは目で見える居場所だけど、『心の居場所』は目で見えないなと思っていて。やっぱり誰かといてもひとりでいても孤独感に襲われることがあるので、心の居場所を探したいと思ったんですよね。自分の気持ちを解放できる場所を見つけたこと、そこに行けなくなってしまったことを書いた散文です。それを上野さんが、いろんなことを連想できる言葉で歌詞にしてくださって。本当に感動的でいい曲。最初聴いた時からスッと入ってきて、覚えやすかったし歌いやすくて」

――これまでにないくらい、しなやかな歌声だと思いました。歌いやすいというのは、無理をせず自然体でいられるということ?

「本当にそうです。歌いながら意味をじっくり噛み締められる歌詞だし、音程を気にせず歌えるから、歌で心をそのまま出せるというか。これまでは過去から目を背けていたけれど、これからは過去とも向き合って、周りの人や応援してくれる皆さんともしっかり目を合わせていきたいな……と思いながら歌いました」

――ラスト2行の《忘れてしまうのは怖いけど/忘れてしまうことから始めよう》という歌詞が印象的でした。久保さんはこの言葉とどう向き合いましたか?

「過去と向き合うという課題があるわたしには、まだまだ過去を忘れてしまうことに迷いがあって。でもつらい出来事が過去になって、今すごくいい環境にいるので、新しいスタートを切るところから始めようという思いで歌いました」

――話していただいた「成長したい」という願望とつながってきますね。

「心の奥から強くなった自分にすごく憧れているのと、過去の自分に勝ちたい思いがすごく強いんです。負けず嫌いなんです(笑)。この気持ちはずっと忘れずに持ち続けたいですね。人に寄り添う曲を歌うには、強い自分でいたい。こう思えるようになったのも、過去に弱い自分がいたからですね。自分の過去を振り返ると『変わった人生だな』、『いっぱいいっぱいだったな』と懐かしく思うし、面白いと言えば面白くて。でも急にボン!と落ちることがあるので気をつけないととは思っています(笑)」

――(笑)。最後に伺いたいのですが、久保さんの散文や歌詞には天気や気候の描写が多いですよね。それはなぜでしょう?

「何かあるとすぐ空を見ちゃうんです。だからその時の天気や風の感じが、そのまま散文にも表れるんだと思います。空を見ると『自分って小さいなあ』と思うし。空って不思議だなー……と思います」

――空もわからないものだから、惹かれるのかもしれませんね。

「あははは、そうなのかな。なんか思わず空を見ちゃうんですよね」

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