DISH// 北村匠海、半生のすべて。孤独とは、音楽とは、バンドとは、仲間とは、未来とは――今、その目に映る虹色の夢、そこに至る25年の歩みを初めて語る

DISH// 北村匠海、半生のすべて。孤独とは、音楽とは、バンドとは、仲間とは、未来とは――今、その目に映る虹色の夢、そこに至る25年の歩みを初めて語る

(“モノクロ”について)「できない」ということをちゃんと認めてあげるのが大事だったんだなあと。「あ、俺って歌詞書けないのかも」っていう気持ちがすごい大事だった

――作品をリリースするごとに夢に近づいて、そしてまたその先へっていうことの繰り返しでDISH//はここまで来ていると思うけれど、2ndアルバム『召し上がれのガトリング』で初めて自作曲が収録されることになって、それがDISH//としてのターニングポイントとなったと思うんですよね。特に北村さんの自作曲“モノクロ”が印象的で。

「“モノクロ”は歌詞も何ヶ月もかけて書いたんです。でも作っている時間がほんとに愛おしくて。間違いなく僕の作詞・作曲の第一歩だし、ちょっと青くさいけど、今でもめちゃくちゃ好きな曲です」

――DISH//の音楽にしても、ご自身のことにしても、北村さんは色に喩えることが多いじゃないですか。その意味でもこの時、自身を“モノクロ”と喩えたというのは、今思えばすごく示唆的で。これは当時どういう気持ちで書いた曲でしたか?

「自分自身のことを歌いつつ、ストーリーとかも考えて書いていったんですけど、『自分はモノクロだ』って認めたくなかったんですよね。だから何度も書き直して。ただただ想いだけが先行して、どんどん筆だけが走ってガワだけを書いてる感じですよね。下書きを先行してうわーって書いてるような。でもそこには色がなくて、何色で塗ればいいかわかんないんですよ。そういう想いというか、願いというか。自分たちで色を塗っていかなきゃいけないんだ、カラフルにしていかなきゃいけないんだって思って書いた曲でしたね」

――最終的には、まだ色がない自分に対して、色を持つ人への憧れも表現されていて。作詞に費やした数ヶ月でどんなふうにしてここにたどり着いたんですか?

「そうですねえ。今も自分自身のテーマではあるんですけど、『できない』ということをちゃんと認めてあげるというのが大事だったんだなあという気がしています。『あ、俺って歌詞書けないのかも』っていう気持ちがすごい大事だったというか。映画の監督とかと話していても『自分にとって恥ずかしい作品を世に送り出すっていうのはとても大事なことだ』って言われるんですよ。もちろん失敗するつもりで作品は作らないけど、まわりに失敗だって言われる。これってとっても大事なことだって。やっぱりマイナスの経験がないと人はいつか迷うから。積み木遊びみたいに、もうこれ以上積めないってなった時にどうするかっていったら、その横にまた違う形のものを積み始めますよね。それでまたこれ以上は積めないってなったら次のものを作る。そしたらなんか街ができていくじゃないですか。エンタメってこの繰り返しっていうか。めちゃくちゃ高くそびえ立つ、雲の上まで行っちゃうような建物を建てられる人もいるけど、僕はそうじゃなかった。だから、すごくちっちゃな家なんだけど、それが“モノクロ”だったんだなあって」

――ああ、なるほど。

「もちろん“モノクロ”を失敗とは思わないけど。ただなんか恥ずかしさはあって。だから次はその家よりもうちょっと大きい家を僕ら自身で作っていったり――っていうことの繰り返しです。たぶん僕らはがちゃがちゃな、いろんな文化が混在する建物を建ててる気がします。それが合わさった時に、やっぱり面白いんですよ、DISH//は」

結論は出ました。それこそここ最近ずっと考えていたんです。やっぱり、僕ら虹色なんですよ。ただ、それを混ぜれば1色になる。その混ぜた色が何色になるのかって

――前に、北村さんはDISH//を虹色だと喩えていて、きっとこれからもいろんな色を見せてくれると思うんですが、「将来的に虹色を突き詰めていくという道もあるけど、自分たちの色を見つけたくなるかもしれなくて、それがどっちかはまだわからない」というようなことも言っていました。

「あ、それ、結論は出ました。それこそここ最近ずっと考えていたんです。で、やっぱり僕ら虹色なんですよ。ただ、それを混ぜれば1色になる。その混ぜた色が何色になるのかっていう探求が、結成10周年イヤーを経て11年目に突入する2022年12月26日から始まったのかなって思っています。僕ら、すごくたくさんの色を持ってやれるバンドだと思っているんですけど、たぶん今後は自分たちで色をチョイスしていけるようになると思うんです。今回は柊生(橘柊生/DJ・Key)の色を持ってこよう。ここは大智(泉大智/Dr)の色で行こう。こっちは昌暉(矢部昌暉/Cho・G)の色で、この曲は僕の色で、とか。もちろん4人の色を混ぜようとかもあるし。やっぱりメンバー自身の作る曲がすごく増えてきたし、より『虹色だ』って思えてきたんですよね」

――2020年のミニアルバム『CIRCLE』はすごくいいバランスで提供曲とバンドの自作曲とが混在する作品になっていて、あのアルバムから、よりバンドの多様性が色濃く出てきましたよね。

「そうですね。楽しかったですもん、レコーディング。『CIRCLE』とか次の『X』とか。で、ふと気づけば『CIRCLE』『X』っていう並びって、『○』『×』ってことでしょう? そしたら次は『△』じゃない?っていうことで今年2月に出るアルバムは『TRIANGLE』になったんです」

――おお! 言われてみれば! でもそうやって形が変化していく流れが最初から決まってたわけじゃないんですよね?

「そう。これ偶発的なんです。今回のタイトル会議の時に『そういえば○、×と続いてるね』ってなって。『じゃあ次は△じゃん?』って。これまた面白いのが、○って角がないから辺の接点はないですよね。円なので。×は1ヶ所だけ交わっていて、△は3点でつながっている。今回の『TRIANGLE』は、僕らが今出せる最強の曲たちだと思っているんですけど、たぶん次は四角になって、接点が4つに増えるのかな?(笑)。アルバムタイトルがそういうふうにバンドの進化の形にもシンクロしていって、これってすごくDISH//っぽいなと」

――その『TRIANGLE』、“No.1”とか“しわくちゃな雲を抱いて”とか、すでにリリースされている名曲も多いですが、それに加えてメンバー自身で作った新曲たちが非常に良曲揃いで。

「ありがとうございます。僕の曲は、また『色』ですけどね(笑)」

――そうなんですよね。“真っ白”という曲。さっき話してた“モノクロ”と、今回の“真っ白”って、テーマにした色は似てるけどまるで違うものになっているなと。

「そうなんですよ。当時は『色がほしい』という願いだったのが、“真っ白”は歌詞にもありますけど、今は『虹色に描いていけばいいんだ』っていう。もうね、確信なんですよ。『虹色描けるやん、俺ら』って。何色にでも塗れるんです。どうにでも塗っていける強さを、今、僕ら自身が信じられるようになっているというか」

――“ブラックコーヒー”はメンバー全員での作曲ですが、これはどういうふうに?

「これはスタジオに入ってひたすら弾きまくって、『そのリフいいね』『じゃあコード進行はこうしよう』とか、いろいろやりながら何曲かやっていった中でできた曲です」

――バンドサウンドの良さがすごく出ていて、DISH//の成熟も感じられる曲です。

「これはやっぱ楽しかったですね。自ら『THE FIRST TAKE』をやるみたいな(笑)」

――なるほど。リテイクなしの一発録り。そして“万々歳”という曲は新井弘毅さんとDISH//との共作なんですけど、ダンスロックバンドとしての矜持も感じさせつつ、ロックバンドとしての強さも打ち出されている。これはDISH//をよく知る新井さんとの共作だからこそできた楽曲だなと。

「メンバー4人と新井さんと一緒にスタジオに入って作った曲です。昌暉と新井さんがギターを持っていたから、僕はその時ベースを弾いて。この曲はもう僕らも踊る曲ですね。だから過去から現在をつなぐ曲だし、ついに僕らが僕らの手でダンスロック曲を作るようになったっていう」

――『TRIANGLE』がDISH//にとっての最高傑作になることは間違いないと思うんですけど、北村さんは、DISH//をこの先どんなバンドにしていきたいと思っていますか?

「今、どんどんどんどん、いろんなことが削ぎ落とされてシンプルになってきたっていうか。だからやっぱり、音楽をやるうえでは、ずっと楽しくやっていたいなって。もうそれだけになってきましたね」

――「楽しくやりたい」っていうのは前も言ってたけど、それがより強くなってきた?

「より強くなったというか、僕はたくさん稼ぎたいとかもないし、ただ音楽が好きで、あと芝居することや映画を作ることが好きで、これを、心から笑ってやり続ける、楽しんでやり続けることがテーマだなと思っています。そうして続けていった先に何が待っているのかが楽しみ。それがたとえば横アリ(横浜アリーナ)だったり、ハマスタ(横浜スタジアム)だったりしたなら、すごい景色が見られると思うし、その道筋には嘘がないようにっていうことをずっと思っています。僕らが精いっぱい楽しんで、精いっぱい汗をかいてやっていくことがすべて。そしてそれを聴いて、観てくれる//er(スラッシャー/ファンの呼称)がいないと僕らは成り立たないので、その感謝を忘れずに、でもちょっと自分勝手に歩んでみるっていうことのような気がしています」

――//erのためにという想いはずっと変わらずあって、でもそのためにやりたいことを諦めるっていうのは嘘をつくことになりますもんね。

「そうなんです。そもそも、みんながいいと思ってくれるものを作りたいという想いがあるのは当たり前なんですよ。そこに自分たちの嘘のない気持ちが、ちゃんと伴っているというのが理想です」

――楽器を触ったことのないメンバーが集まって、それで10周年でここまで来たっていうのはすごいことだと思います。

「いやほんと、すごいことです。自分をほめたい(笑)。でも当初からずっとブレないところはあって、自分でも不思議なバンドだなって思います。みんなすげえ仲良いし」

――仲良しだけど、みんな主張もするし喧嘩もできる。それぞれが自分の色を出せるバンドであり、真っ白にもなれる。すごくいい状態ですよね、今のDISH//。

「まあ、お互いに少し遠慮してた時期っていうのもあったんですよ。なんならつい最近まで、なんとなく遠慮して言えないこともあったりしました。でももう洗いざらい話すようになって、ほんとにね、遠慮のない関係性になりました(笑)。柊生と俺とか、よく会議や打ち合わせで完全に意見が分かれることもあるんですよ。それは柊生も俺も自覚してるんで、もう普通のことなんです。そこも面白いし、そうであるべきだし、いろんな意見があってこその虹色だし」

――『TRIANGLE』、リリース後のみんなの反応が楽しみですね。自ずとその次のテーマも見えてきたし。

「そうですね。また次もいろいろ話させてください」

――さらなる進化を楽しみにしています。



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