【インタビュー】シネマチックサウンドを彩るVTuber2人組ボーカルユニット、Nornis。最新作『salvia』について、響き合うボーカリゼーションがすごい戌亥とこ、町田ちまへインタビュー

「Nornisの良さ」は掛け合いにありますね。とこちゃんは低音域が得意で、町田は高音域が得意なので(町田)

――あ、緊張なさらずで大丈夫ですよ。まずは、結成のきっかけを教えてください。

戌亥とこ は、はい。えっと、ある日、急に運営さん側から「ユニットを組んでほしい」という話があって。

――スタッフさんの声がきっかけだったんですね。それぞれの第一印象はいかがでしたか?

戌亥 結成前は話したことがなかったんです。町田のほうがライバーとしては自分より先輩なので、配信で観てるだけだったんですけど、「歌がすごくうまい」っていうのが第一印象で。あと、配信のときは、「ちょっと変な人」というイメージで(笑)。

町田ちま おっ、なんだ?(笑)。

戌亥 ごめんなさいね(笑)。発言が奇抜だったり、分身して歌ったり、同じ曲を永遠に歌い続けてみたり……大多数の人はやらないことをやったりするんで、「不思議な人だな」と(笑)。

――なるほど(笑)。ちまさんは、とこさんのことをどう思ってました?

町田 一方的に歌はめっちゃ聴いてて。「ピッチ外さないな」「めちゃくちゃうまいな」と思っていました。あと、個人の配信でもコラボ配信でも、「頼れる姉御肌」的なものを感じていて、ユニットを組んで話すようになった今、間違いじゃなかったんだなと思っています。頼れる優しいケルベロスだなって(笑)。

戌亥 へえ、ははは(笑)。

町田 なんだ?(笑)。

――Nornisはシリアスでかっこいいロックサウンドや曲の中での掛け合いが見事だなと思うんですが、結成当初は「Nornisらしさ」をどう表現していこうと考えられていましたか?

戌亥 そこは、まだ模索しつつかもしれないです。結成して1年と少しが経ったばかりなので。「いろんな面を好きになってほしいな」と思う気持ちもあるので、今も「やったことがないジャンルを試してみたいね」っていう話もします。でもそんな中でも、ふたりの掛け合いはどの曲でも気に入っている部分ですね。掛け合いはいつからしてたっけ?

町田 最初からじゃない? “Abyssal Zone”(2022年6月23日リリース)のときからしていて。とこちゃんは低音域が得意で、町田は高音域が得意でハッキリ分かれているので、「Nornisの良さ」は掛け合いにありますね。

戌亥 掛け合いはふたりの音域の違いによるコントラストが目立つ部分でもあるので。あとは、映画の劇伴のようなダイナミックで迫力があるサウンドも皆さんの印象に残るんじゃないかなと思っています。

――今年6月には結成1周年を記念した3Dライブを実施されていましたが、Nornisにとってライブ活動はとても重要なものだと思っていて。ライブについてどう思っていますか?

戌亥 ライブは同じ空間で生の音と時間を共有できるところが大きいですね。もちろん距離だったり体力的な面だったりいろんな事情で会場まで来ていただくのが難しい方もいると思うので、手軽に観ていただける配信ライブも大事にしつつ。でもやっぱり生で体感する音は違うので、今後も生ライブがたくさんできるといいなと思ってます。

町田 私も!

戌亥 えっ、もっとなんか言ってよ!(笑)。

町田 あはは(笑)。リアルライブだと銀テープを降らせたりスモークを焚いたり、演出を凝ることもできるので。お客さんには現地でしか味わえないもの――音はもちろん、匂いだったり全部を楽しんでほしいですね。

『salvia』を聴いてくれた方が前向きな気持ちになってくれたらいいなと。4曲それぞれが、別の角度から皆さんに寄り添ったり支えたりできるシングルになってます(戌亥)

――続いて、2ndシングル『salvia』について、こだわりのポイントや楽曲それぞれの聴きどころを伺いたいです。まずは、シングル全体を通してどんな作品になりました?

町田 「Flowers of Hope」をコンセプトに、華やかさがありつつもダークな世界観を感じてもらえるシングルになりました。

戌亥 聴いてくれた方が前向きな気持ちになってくれたらいいなと思っています。前向きになる方法って人それぞれだと思うんです。優しく寄り添ってほしい方もいるだろうし、今の感情を思いきり発散したい方もいるだろうし。今回は4曲それぞれが、別の角度から皆さんに寄り添ったり支えたりできるシングルになっていると思いますね。

――1曲目“salvia”は、壮大なイントロから始まるロックチューンになっていて。PENGUIN RESEARCHのベーシストで、LiSAなどへの楽曲提供でも知られる堀江晶太さんが作詞を手掛けられています。

町田 アニメ『グッド・ナイト・ワールド』のエンディングテーマなので、歌詞も登場人物の心情が反映されたストレートなものになっていて。感情がストレートに伝わってくるので、それをもう目いっぱい詰め込みながら、レコーディングでは暴れながら歌いました(笑)。

――えっ、スタジオのブースの中で暴れたんですか?

町田 感情を込めるために暴れました(笑)。

戌亥 わたしも暴れました(笑)。Nornisはレコーディングのときに大体暴れるので、ブースのカーテンは閉めてもらっています(笑)。“salvia”は1曲の中で、内に秘めた感情を一気に放出する激動型の楽曲で。個人的には、町田が歌う《生きてきたんだ》の部分がすごく好きで、皆さんに聴いてほしいです。

町田 えへへ。

“Ray of Hope”は絶望から強さや希望へと歌の表情を変えていく曲。パンデミックで辛い状況が続いていた中で、「諦めないで希望を見出してほしい」という気持ちも入ってます(戌亥)

――2曲目“White Blossom - Duet ver.”は待望の音源化ですね。ふたりのハーモニーが絶妙に絡み合う、高難度曲で。

戌亥 “White Blossom - Duet ver.”は、Nornisの楽曲の掛け合いの中でも、高音と低音の差がいちばん激しい曲なので、迫力がありますね。デビュー曲“Abyssal Zone”を書いてくださった夢見クジラさんによる曲なので、初心に戻れる感じもありつつ、“Abyssal Zone”とは違ったドラマチックさもあり。真冬の景色が思い浮かぶ曲なので、真冬に聴いてほしい曲です。

町田 聴いていると、吹雪の中に立たされている気分になる曲で。出だしから緊張感がすごくて、最初は《しんしんと 降り積もった》って静かに始まるんですが、だんだん雪が強くなって、高音と低音の掛け合いが入り乱れていって。1stライブでお披露目して以来、リスナーさんから「早く音源化してほしい」と言われていた曲なので、やっとこの『salvia』で出せて嬉しいです。

――3曲目の“Fragment - Duet ver.”は、メロウに展開するドラマチックなナンバーで。春にリリースされた人気曲のデュエットバージョンですね。

戌亥 Nornisとしては少し珍しいタイプの楽曲で。ロックに感情を込めて暴れるのではなく、春のように包み込んでくれるあったかくて優しい曲になっています。

町田 レコーディングのときは、とにかく「優しく歌う」ということと、とこちゃんに合わせて一体感を生み出すことをこの曲では特に意識しましたね。

――4曲目“Ray of Hope”は、Nornisらしい世界観の大きなナンバーで、伸びやかなボーカルに胸を突き刺されました。

町田 2サビ後のCメロの掛け合いから、ずっとふたりのどちらかが歌ってるパートが続いて、緊張感を保ちながら最後に爆発するという(笑)。高揚感がある曲なので、ぜひ聴いてほしいです。

戌亥 この曲の掛け合いは、高音と低音の差があった“White Blossom - Duet ver.”と違ってふたりとも高音で、空気が張り詰めたような曲になっていて。全体を通して、絶望から強さや希望へと歌の表情を変えていくような曲になっていますね。この曲はパニックホラーマンガ『監禁区域レベルX』のタイアップ楽曲で、作品の世界観に合致したものになってるんですけど、パンデミックで辛い状況が何年も続いていたご時世において、「諦めないで希望を見出してほしい」という気持ちも入っていて。いろんな状況にいる皆さんに届くといいなと思っています。

アニメ『マクロスΔ』のライブでJUNNAさんを初めて知って、ひときわ輝いて見えて。「自分もこんなふうにいろんな人に感動を届けられるようになりたい」と思って、歌の活動を始めました(町田)

――この『salvia』を生み出すに至ったふたりそれぞれの音楽的背景、ルーツを伺いたくて。好きなアーティスト、影響を受けたシンガーを教えてください。

戌亥 いろんなアーティストを幅広く聴いているんですけど、その中でも継続して楽曲を聴き漁っていたのは阿部真央さんと三浦大知さんですね。感情むき出しで、しかもその感情がひとつだけではなく優しかったり激しかったり、見事に表現されていて。

――阿部真央さんはどのあたりの曲がお好きなんですか?

戌亥 ありすぎて悩みます(笑)。楽曲によってコンセプトや空気感がガラッと変わる方なので、「今日はこの曲の気分」みたいな感じで聴くので……あえて言うなら、『ポっぷ』というアルバムに収録された“未だ”という楽曲ですね。「聴こう」と思って聴く、というより、ふと思い出す曲なので、自分の根底にある好きな曲だと思います。

――ちまさんはどうですか?

町田 JUNNAさんが大好きです。アニメ『マクロスΔ』のライブで初めて知って、「なんて歌のうまい方なんだ」と思って。皆さん歌がお上手だったんですけど、ひときわ輝いて見える人がいて、それがJUNNAさんでした。まだお若いのにすごく大きなステージで堂々と歌っているのがかっこよくて。「自分もこんなふうにステージに立って、いろんな人に感動を届けられるようになりたい」と思って、歌の活動を始めたんです。あとは、手嶌葵さんもずっと好きですね。元々ジブリのアニメ作品や楽曲が大好きなので、手嶌葵さんのあの声質に惹かれて。コンサートも行ったんですけど、ずっとふわふわした天使のような声で、トークもあのままなんですよ。優しく歌う方法は、手嶌さんから学んでますね。

――ああ、なるほど。歌のやわらかなタッチ感は、ちまさんの歌声に通じるところがありますね。最後に、Nornisの今後の目標やユニットとしての具体的な夢を教えていただきたいです。

町田 地方の方とか学生の方とか、ライブに行きたくても遠くて行けないという方もたくさんいらっしゃると思うんですけど、そんな方にもぜひ生のライブを観ていただきたくて、全国各地でライブをしたいと思っています。

戌亥 Nornisの発足当初から言っていたことなんですけど、「VTuberを知らない音楽が好きな方にもNornisを知ってほしい」という思いをずっと持ちながら活動を続けていて。全国でライブがしたいですし、わたしたちVTuberには映像という強みがあるので、言語が異なる日本以外の方にも知ってほしいなと思っています。

“salvia” MV


“Ray of Hope” MV


●リリース情報

2nd Single『salvia』

発売中


提供:Altonic Records
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部