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北欧神話とギリシャ語に由来を持つアーティスト名、思想家バックミンスター・フラーが提唱する概念による作品名――創作物すべてが思想的なNornisは、VTuber「戌亥とこ」「町田ちま」によるボーカルユニットだ。新作『Tensegrity』は、上質な弦とピアノの調べが映画の劇伴のように壮大な表題曲で幕を開け、Jポップ界の巨匠・亀田誠治による“Deep Forest”でポップに弾けたかと思えば、無機質なラップが中毒性抜群の“ジョハリ”、和楽器バンドの面々による疾走感溢れる“innocent flowers”など、多様な音楽性を行き来する。そのすべてを完璧に表現し尽くす、蝶々の震えのような町田ちまのハイトーンボイスと、水面に広がる波紋のように静かな美を湛える戌亥とこの低音ボイスが織り成す世界の奥深さたるや。自身初作詞曲“Min-night”でふたりは《Midnight is crossing with morning》と歌うが、その魔法的な二声が、2次元/3次元の壁も、あらゆる音楽ジャンルの境界線も淡く溶かしてゆきながら、次代の音楽シーンの夜明けを高らかに告げている。(畑雄介)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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