【インタビュー】WANIMAの傑作? いや、ロックアルバムの大傑作になった4年ぶりのアルバム『Catch Up』。全20曲、生まれ変わったWANIMAの「今」をまるごと聴け!

誰に支えられて、なんのために音楽しよるかっていう。WANIMA・KENTAとしてのあるべき姿に気づけたのが、このアルバムを作るタイミングやったと思う

――馴染みのあるWANIMAサウンドの決定版ではまったくなくて、新しいんだけど、これがWANIMAですっていうアルバムができたなあっていう。それぞれアルバムの手応えを語ってもらえればと思うんですが。

FUJI(Dr・Cho)「今までのWANIMAも引き連れてブラッシュアップしたうえで、新しいWANIMAの形を表現できたフルアルバムだと思います。20曲っていうところも挑戦だったし。技術面でも、今まで自分が得意だと思っていたけど、もっと突き詰められるなあっていうところもあったし。コロナ禍以降で自分自身を見直しながら取り組めたんで、すごい手応えはあります」

KENTA(Vo・B)「ひと言で言うんやったら、今までとこれからを詰め込んだアルバム。WANIMAにとっても個人的にも、かなり分岐点になると思います。今までがなかったら絶対にたどり着いていないし。今までがあったからこそ、これから先を見据えて音を出せました。で、20曲。20曲ってかなり多いように感じるんですけど、そん中にはショートチューンが入っとったり。アルバムに入れたら埋もれるねっていう10数曲は、次出すために取っておいたり。なんかこう、自分の中では音楽しとるなっていう余裕さえ感じる一枚です」

KO-SHIN(G・Cho)「どんなときでも、どんな感情のときでも聴ける一枚に仕上がったと思います。コロナ禍でやりたくてもやれなかったことだったり、溜めたものをこの一枚に詰め込んだような。で、プラス、先も見えるような。今のWANIMAはこれだよって言える一枚になったと思います」

――これまでのWANIMAの歩みを踏まえているんだけど、それ以上に次に向かっている印象が強いアルバムだなと。誤解を恐れずに言うなら、違うバンドになったぐらいの、ものすごく大きな変化。そう言われると、違和感ある?

KENTA「いや、もうほんとにこのアルバムは、デビューアルバムぐらいの気持ちで。過去の自分が見ても、今の自分はダサいことしてないって思ってくれるんやないかな。この先、5年10年、15年後とかに振り返っても、あのときのKENTAは、35歳のKENTAは間違っとらんかったよって言ってほしかったから。自分で自分を認めるように、昨日でもないし、明日でもない、今日だけ全力で生きるっていうふうにテーマを決めてやってきました」

――すごいな。なんでこの時期にそういう、大変化が訪れたんだろう。

KENTA「たとえば過去あったこととか、人や世の中からもらってきた傷みたいなものを背負ってきて、それを振り切るのに時間がかかったんですけど。35になって、いろいろ折り合いをつけながら生きていく中で、少しずつ、人生1回っていう中で、どうしていきたいかっていうのが明確になってきたというか。誰に支えられて、なんのために音楽しよるかっていう。WANIMA・KENTAとしてのあるべき姿みたいなものに気づけたっていうか、俺はこうありたいなっていうふうに思うようになってきたのが、このアルバムを作るタイミングやったと思うんですよね」

――それは、もう人間としての大転換点というか、ほんと大きな節目だよね。

KENTA「はい。僕らより目上の方に聞くと、わりと30半ばとかで大事件とか転換期が来ている人が多かったので。そういう方から話を聞いていく中で、自分のことと照らし合わせながら考えることができたのも大きかったかなと」

――人生の転機を迎えたら、しばらく活動を休止するとか、すごいスランプに陥るとか、プラスもマイナスも含んでキャリアを築いていく人が多いんだけど。こんなにプラスの部分、聴いた人の糧になる部分だけを作品として出したWANIMAはすげえなって思いました。どんな感じで制作していったんですか?

KENTA「んー、今まで、何もない状態でスタジオに入って曲を作ることが多かったんですけど。このアルバムに関しては、一曲一曲テーマを持って、自分たちで期限を設けて作ろうっていうやり方をして、意識も変わって。過去の先人たちの音源を聴いたり、映像を観たりして、見た目とか色味とかより、日々努力しとる奴がいちばん尖っとるよな、それがいちばんかっこいいんじゃないかなって思い始めてきて。“バックミラー”とかでも歌っているんですけど。自分のためじゃなく、誰かのために生きる、みたいなことを思いながら。歌詞を見てもらったら、僕の大義とか正義とか、35歳のひとりの人間としての苦悩、葛藤みたいなのはわかってもらえるかなっていう」

――今回、めっちゃくちゃストレートに歌詞に出ているよ。ほぼ全曲。

KENTA「20代のときは、もうちょっと、ぼやっとしとったし。まあ、生まれ育ちとか、そういうのを言い訳にはしたくなかったから、世の中に対して抗っていたんですけど。30になって、自分の中で折り合いをつけられるようになってきて。今の俺やったらどういうふうに消化して音楽にして届けられるのかなとか。柔らかくなったんかもしれないですね、考え方が。今まではわりと、挑戦もせんと安パイ取ろうみたいなところがあったり。あと、人の目を気にするじゃないけど、自分が思った認知のされ方ではないとか考えているときもあったんですよ。でも、今のWANIMAがいちばんかっこいい、今ライブに来ているおまえたちがかっこいいんだよってライブでもよく言うんですけど、やっぱ、今を見てほしくて。今のWANIMA・KENTAはこうだって明確に伝えないと、もう時間はないなっていう。35やし。人間的にもそうですけど、音楽的にも、期限はないにしても、そんなダラダラやるつもりもなくって。伝えられるうちに伝えとかな、届かんくなるって思っていましたね」

――WANIMAって、傍から見ていると早く成功したじゃない。で、そのあと、スランプというか、セールスが落ちる時期もあって。KENTAは成功も満足できなかったし、落ちたことも納得できなかった。どうやったら前に進めるんだろうって突き詰めた結果、全力でやるしかないし、全力でやることに意味と大切さがあると。その結果、まさに「今」に価値があるっていうところに、必然的にたどり着いた感じがするな。

KENTA「初ワンマンもさいたまスーパーアリーナやったし。準備していた期間はすごく長かったんですけど、メディアに出るようになってからは、いろんなものをすっ飛ばしてきてしまったので、技術もなければ知識もなくって。ただ、あの頃の自分を振り返ったときに、何かを気にして自分を出せてないことが、すげえ許せなかったから。オリコン1位取ったって、『紅白(歌合戦)』出たって、すげえとこでワンマンやったって、どっか埋まらんところはあって。こっから先もその連続かなっていうのが、僕、WANIMAのKENTAという生き物だと思うんですけどね」


苦しんどる仲間たちにポッとLINEするぐらいの気持ちで、でも、想いは純度100で伝えたくって。そういうときに、今の俺やったら茶化しは使わんやろうなっていう

――このアルバムは本当に、すべての面で変わったと思うので、一つひとつについて聞きたくて。まず、サウンドが変わった。今まではいろんな音楽のバリエーションを盛り込んで活かしていくやり方だったけど、今回は、わりとロックに絞り込んでいるというか、幹が太くなっている感じがして。それによって、それぞれの曲の良さがすごく前面に出るようになった。そこには、どういう経緯があったんですか。

KENTA「いろんな制作をしていく中で、自分たちが育ったジャンルへのリスペクトを込めるっていうのがまず第一にあって。で、それぞれの得意、不得意なことを明確にして。以前は、ライブで歌をお客さんに任せていたところがあったけど、コロナ禍でお客さんが歌えなくなって、自分で責任を持とうってなって。歌も強化していった中で、自分が歌いやすいキーとか、本来の自分のキーに気づけたところがありましたね。そういうところでも、もともとこうやったよなWANIMAって、WANIMAの良さってここよなっていう……そこは、多少お客さんの認識と俺らの認識のズレみたいなものがあったのかもしれないですね。でも『Catch Up TOUR( -1 Time 1 Chance-)』で、過去の曲もキーを下げて、2023年バージョンで歌ったりして、うまーくグラデーションにしながらやれたから。ライブに来ている子たちは違和感なく、『いいわこの感じ!』って受け取ってくれると思う。WANIMA知らない人からしても、あ、こんなかっこいいロックサウンドで、日本語でやるんだって気づいてもらえるんじゃないかなって」

――中盤以降に何曲か出てくる、ミディアムな太いロックビートで、メロディもすごくロックスピリットのある感じが、このアルバムの中心になっているイメージはあるけど。こういうのは、今までなかったに等しいよね。

FUJI「作るときにKENTAから一曲一曲の色味をしっかり伝えてもらっていたので、制作スタイルはかなり変わったんですけど、そこへの戸惑いはなく、曲にしっかりビートを乗せられましたね。今山崎さんも言ってくれましたけど、骨太なロックなビートが多かったので、ビート感も大事にしつつ、いちばん気にしたところは鳴り方だったり。今までそこを、ないがしろにはしていないんですけど、突き詰めてはいなかったので。自分たちでできることが増えた分、気づきも多くて。こういう鳴らし方をしたらこういうノリ方をするんだっていうところ、一個一個を確かめながら作っていけました。間違いないゴールとしてちゃんと見えていたので。20曲できて、やっぱりいいアルバムになったなあと思いましたし、すごい骨太なものになったなと思います」

KO-SHIN「僕、WANIMAでやりたいのは、ギター、ベース、ドラムが鳴っている音楽で。それに満足できずに、いろんなバンドが、いろんな機械の音だったりを入れていくと思うんですけど、その中で僕らは、最低限の音でどれだけ表現できるか。いろんな機械の音が入っている音楽に対して、どう勝負を挑んでいくか。そこを踏まえてギターの音を作りました。自分で録る段階で、この曲はこのギターの音にしたら負けないっていうのを、すごくイメージできるようになったので。どのバンドもテーマにしていると思うんですけど、どれだけ曲がよく聴こえるか、歌詞がよく聴こえるか、メロディがよく聴こえるかっていうのを、よりいっそう意識して作れたかな」

――そして、歌詞も変わったと思っていて。これまではいろんなモチーフを使って、それこそエロからシリアスなメッセージまで歌ってきたんだけど。今回はストレートなメッセージ、生きるっていうテーマの真ん中にグッと寄っている感じが非常にしたんですね。

KENTA「誰の人生なんやろう、みたいなことを考え始めて。俺の人生やん、人生一度きりなんや、自分で決めな、自分でやらな、誰もやってくれん。アドバイスはくれるけど、自分がどうしたいか、自分が一歩踏み出さんことには、っていうことを考えとる時期が長かったので。長かった分、性格的に、人間的に、動き出したときには止まらんやろうなっていう。今まであったことへのリスペクトを忘れずに引き連れてこっから先進めたら、もう少し頭が柔らかくなって、未来ではもうちょっと、いい意味で自然に生きていけるんじゃないかなっていうふうに思い始めたタイミングかもしれないですね、このアルバムの歌詞作っとったとき」

――WANIMAって、エロの歌に限らず、普通のメッセージソングでも、AメロBメロでガーッと言いたいことを全部言ったあと、あえてサビでは意味不明な言葉で言う技というか、そういうのもあったじゃない。今回は、それもあまりない。ちゃんと、最初から最後まで伝えることを一曲で伝える、みたいな。

KENTA「そうですね。成長したんかな。ほんと昼夜問わず、ずっとやっていたので。ライブもしながらですけど。そういう日々を過ごしていた中で、俺らは吐き出す場所があるんですけど、聴いとる人は吐き出す場所が少ないと思うんですよ。やけん、声を持たん日々に声を与えるような瞬間を作りたいし、そこに余計なものはいらないんじゃないかなって。苦しんどる仲間たちにポッとLINEするぐらいの気持ちで、でも、想いは純度100で伝えたくって。そういうときに、今の俺やったら茶化しは使わんやろうなっていう。WANIMAの今の立ち位置では、WANIMAのKENTAとしては、薄めずに伝えたいなっていうのがあったので。キャッチしてくれたらいいんやけどな、ちょっと暑苦しいかな、いや、でもここは熱くいこうっていう感じでした」

自分たちで風を起こす。いろんな人たちを巻き込みながら、ちゃんと地に足つけて、血の通った活動ができれば、もっともっとWANIMAっていう存在の意味をみんなにわかってもらえるんじゃないかな


――ここまで歌詞だのサウンドだの分解してきたけど、そんなことよりも、曲がレベルアップしているっていうのがやっぱりいちばん大きいですよね。このレベルのロックソングを書く才能を今までどこに隠していたんだって言いたいぐらい。

KENTA「なかったんやと思いますよ。いや、わかんない。あったんかもしれないですけど、それを引き出す能力を、20代の俺は持ち合わせてなかったですね。ただ、支えてくれた人たちが諦めずに僕のことをフックアップし続けてくれて。30を越えてやっと、あのとき言っとった言葉の意味とか、もしかしたらこういうことを俺に伝えたかったんじゃないかとか、別れ際、こういうことを俺に伝えたかったんじゃないかなとか考えられるようになったからこそ、このアルバムはできたと思います」

――才能は種としてあっただけなのかもしれないね。いろんなものを吸収して、きっかけがあって発芽したっていう。活動自体は、今後、どうなんですか。このアルバムのようにスケールアップしていくつもりですか。

KENTA「ライブハウスで、僕らが育ったジャンルにリスペクトを忘れずやりながら、ホールでもやりながら、アリーナでもやりながら。あとは、熊本の『ワンチャンフェス(1CHANCE FESTIVAL 2023)』もやりながら、変わらずライブはしていきたいなって思うんですけど。今まで以上にベーシックなこともやりながら、ド派手なこともやれたらいいのかなって」

――デカくなるってイメージはあるんだ。

KENTA「はい。デカくなるっていうか、僕らの気持ちに賛同してくれる人たちが増えたらいいなっていう。自分たちで風を起こす。いろんな人たちを巻き込みながらやっていけたらいいかなって。ちゃんと地に足つけて、血の通った活動ができれば、もっともっとWANIMAっていう存在の意味をみんなにわかってもらえるんじゃないかな」

――今作は、WANIMAの傑作っていうだけじゃなく、ロックアルバムの傑作って言っていいアルバムだと思います。非常に嬉しいです。

KENTA「いや、嬉しいです。いろんな座組みみたいなんもあると思うんですけど、うん、ちゃんと、このアルバムを日本で推せないようじゃ終わってるなって思いますけどね、ははははは!」

――それは俺に言ってんの?(笑)。

KENTA「いえいえいえ! 山崎さんには言っていないですけど。まあ、そう聞こえるなら、そうなんじゃないですか? ははははは!」



このインタビュー&撮り下ろし写真の全貌は、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』11月号に掲載!
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“夏暁”MV


●リリース情報

3rd Full Album『Catch Up』

発売中

通常盤 (CD) ¥3,410(税込)
初回限定盤 (CD+Blu-ray) ¥5,940(税込)

1.Catch Up
2.名もなき日々
3.1988
4.Do you get it now?
5.遠くまで
6.夏暁
7.FLY & DIVE
8.Chasing The Rainbow
9.曖昧
10.Damn away
11.This That Shit
12.Oh⁉ lie! wrong‼
13.扉の向こう
14.眩光
15.あの日、あの場所
16.バックミラー
17.サシヨリ
18.遠ざかる声に
19.Midnight Highway
20.舞台の上で

Blu-ray(※初回限定盤のみ)
1. Hey Lady
2. Japanese Pride
3. つづくもの
4. リベンジ
5. オドルヨル
6. 愛彌々
7. 夏の面影
8. THANX
9. いいから
10. 雨あがり
11. Cheddar Flavor
12. HOPE
13. 眩光
14. エル
15. BIG UP
16. 1106
17. ともに
18. ここから
from WANIMA presents 1 CHANCE FESTIVAL 2022

初回限定盤仕様
・WANIMA presents 1CHANCE FESTIVAL 2022(Blu-ray)※WANIMAライブシーンのみ
・Catch Up TOUR -1 Time 1 Chance-フォトブックレット
・三方背BOX


●ツアー情報

「Catch Up TOUR -1 Time 1 Chance-」

追加公演
11月9日(木)新潟LOTS
11月16日(木)福井CHOP
11月18日(土)和歌山CLUB GATE
11月22日(水)徳島club GRINDHOUSE
11月23日(木・祝)愛媛WstudioRED
11月25日(土)高知CARAVAN SARY
12月8日(金)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
1月8日(月・祝)佐賀LIVE HOUSE GEILS
1月9日(火)長崎DRUM Be-7
1月12日(金)沖縄ミュージックタウン音市場
2月8日(木)大阪Zepp Osaka Bayside
2月9日(金)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
2月11日(日・祝)鳥取 米子laughs
2月12日(月)島根 出雲APPOLO
2月17日(土)石川 本多の森 北電ホール
2月23日(金・祝)静岡LIVE ROXY SHIZUOKA
2月24日(土)神奈川YOKOHAMA Bay Hall
2月27日(火)東京Zepp Haneda(TOKYO)

To be continued...


提供:株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部