なぜ『18祭』は名曲を生むのか? ONE OK ROCKから[Alexandros]まで全曲解説

アーティストと1,000人の18歳世代(17~19歳)が一度限りの共演をするNHKの番組『18祭(フェス)』。『18祭』では、参加を希望する18歳世代が応募動画を送り、それを見たアーティストが、動画に込められた18歳世代の想いを踏まえて新曲を制作する。17~19歳といえば、学校に通っている人もいれば既に仕事に就いている人もいる世代。あの頃ほど無邪気ではいられないし、だからといって簡単に割り切れない気持ちだってある。これからの人生の進路に迷い悩んでいる人も多いことだろう。夢や希望、それらと表裏一体である不安や悩みを抱えた彼らの心情にアーティストが向き合うことにより、また、自分の内側の問題を打開し、新たな一歩を踏み出したいと願う18歳世代の熱量がそこに掛け合わさることにより、これまで様々な名曲が生まれてきた。この記事では歴代の『18祭』を通じて誕生した楽曲を順に紹介していきたい。(蜂須賀ちなみ)


2016年 ONE OK ROCK“We are”

2016年、記念すべき『18祭』第1回目に登場したのはONE OK ROCK。彼らはメンバーが18歳世代の時にメジャーデビューした。番組でのTaka(Vo)の「年を取ってもしょうもない大人はこの世の中に腐るほどいるし。たとえ未成年であっても、素晴らしい思考を持って、素晴らしい情熱を持って、この世の中で生きている人はたくさんいます」という発言は自身の経験から出た言葉だろう。“We are”で歌われる《自分を誤魔化し 生きることに意味はあるか》というメッセージは世界を舞台に戦うこのバンドが発信し続けてきたものであり、だからこそ、18歳世代とともに作り上げたステージには普段のONE OK ROCKのライブに通ずる雰囲気があったのだろう。18歳世代によるコーラスはサブメロディを歌ったり掛け合いをしたりせず、ボーカルと同じような譜割りで動くアレンジ。それぞれ単独の意思を持った声が集まって束になった時の力強さに圧倒された。

2017年 WANIMA“シグナル”

2017年にWANIMAが生み出した“シグナル”は、彼らの王道にあたるアッパーチューン。18歳世代によるコーラスと吹奏楽部隊による演奏は拙さも残っているが、そのカラフルさは《未完成でいい》と繰り返すこの曲にぴったりだ。終盤にある《好きにやって 駄目なら戻って来い》という言葉はかつてKENTA(Vo・B)が祖父から貰った言葉とのこと。そんなメッセージがこの曲ではWANIMAから18歳世代に手渡しされており、世代を超えた繋がりが読み取れる。FUJI(Dr・Cho)が前に出てきて指揮を振ったり、18歳世代の女の子が急遽バスケのフリースローをやることになったり……とライブ感満載のステージは楽しげな雰囲気。放送終了後もこの曲はライブで積極的に演奏され、バンドにとって大切なアンセムとして育っていった。

2018年 RADWIMPS“万歳千唱”/“正解”

2018年のRADWIMPSは、『18祭』史上初めて2つの新曲を制作した。“万歳千唱”は18歳世代による合唱だけでなく、打楽器+ボディパーカッションが地から湧き上がる莫大な歓喜を体現。《君の中のカナシミを喜ばせて 君の中のクルシミを勝ち誇らせて》とサビにあるように、先の見えない未来を不安に思う気持ちをいつか昇華してみせようという、前向きな意思が表れた曲だ。対して“正解”は、野田洋次郎(Vo・G・Piano)のピアノ弾き語りから始まるバラード。放送終了後にはこの曲を卒業式で歌った学校もあったようだ。歌詞には教室を思わせる描写が多く、一人称の「僕」は18歳世代と想像できるが、終盤では視点が移り、「僕」として描かれてきた人物が「あなた」に変わっている。そこにはRADWIMPSから18歳世代に対するメッセージが込められているように思う。

2019年 [Alexandros]“Philosophy”/“0.5”

2019年の[Alexandros]も2曲を制作。“0.5”は、18歳世代が動画で披露していたパフォーマンスからインスピレーションを得て制作されたインストトラック。そして18歳世代の合唱とともに演奏されたのが“Philosophy”だ。自信を持てずにいる自分に対する不甲斐なさ、周囲から無理だと言われた時に感じる悔しさなど、一般的にはネガティブとされる感情だって自分を駆り立てるエネルギーに変換することができる。この曲に込められたそんなメッセージには、[Alexandros]が元々、誰にどれだけ反対されようとも、夢を諦めずにやってきたバンドだということが強く影響している。《マイナスの感情は/マイナスでしかないの?》→《マイナスの感情は/マイナスで×ればいいよ》→《マイナスの感情は/マイナスだけじゃないよ》と変化するサビの歌詞には多くの18歳世代が共感していた。
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